会員の作品

「未来山脈」の会員の作品です。

流域(未来山脈第346号より抜粋)

どこまで生きられるのか老残の命を口語自由律短歌でしめしたい
大阪 井口文子

寒椿寒気寒波の列島下我れに奮起を促してさいている
諏訪 伊藤泰夫

山が描けるか風や水が 宮崎信義の歌碑に花弁のような雪が舞う
岡谷 三枝弓子

生命線 頭脳線 お笑い線延びて なにがなんだか超高齢
諏訪 河西巳恵子

いま歌集を開く 生きぬいた生命がそこに有る古里がある
木曽 古田鏡三

セーリと歌いはじめてナズナにつなげ春の七草幼に教える長老は
米子 大塚典子

山稜の雪雲は去りベランダに積もった雪に屋根の水滴
札幌 西沢賢造

ほどほどであれば風情もある雪も雨もこうも続くと愚痴がでる
米子 角田次代

仙丈ケ岳に日が顔を出してきた草は刈ったし野菜も採ったさあ帰ろう
箕輪 市川光男

亡くなった義母の二十五回忌にお案内が菩提寺より届く
米子 笹鹿啓子

手のひらに雑煮椀のぬくもり 新しい気持ちで一年を始める
岡谷 片倉嘉子

鵟が狙いを定めて急降下 獲物を逃すやきまり悪気に飛び立つ
岡谷 柴宮みさ子

女三人大口でポップコーンをキャッチ きゃあきゃあ児らと弾ける
岡谷 金森綾子

木肌色の幹をみつめる静かな時間 小枝の先にヤマガラあそぶ
茅野 伊東里美子

送る身も行く身も寒さの堪える朝 定年過ぎての早い出勤
岡谷 佐藤静枝

合格はスタート位置に立てた所足元をしっかり固めてと言う
諏訪 浅野紀子

脚が弱くなった 部落を一周する 杖をついて一歩一歩
岡山 廣常ひでを

毎日が淡々と過ぎる 身体のどこかに潜む不安感
天理 坂井康子

安部龍太郎「おんなの城」を読む戦国時代に生きた女の面白さ堪能
琴浦 大谷陽子

土蔵の中 コンテナに並んだりんご「ふじ」氷みたいに冷たい
坂城 宮原志津子

光あふれて庵にて世相を語る菩薩とも思える寂聴の笑み
岡谷 土橋妙子

全てをさらけだすことは出来ない 人と自分を傷つけるから
東京 堀江美菜子

ハテハテ こんな道あったっけ雪の杖が迷い込む見知らぬ世界
千曲 中村征子

北北東寒冷前線通るらし ボタン雪かなすごく重そう
小浜 川嶋和雄

霧がかかったようで晴れない思い見放した一つ一つが重く蘇える
京都 毛利さち子

街へ行くのに「病院前」で降りそうになる パブロフの犬だ
愛知 川瀬すみ子

幸せになるための嘘は罪ですか 生き抜くための嘘は罪ですか 晩鐘が鳴る
小平 真篠未成

「おばあちゃん食事」と姑を呼んだが今は夫を「お爺さん」という
諏訪 松澤久子

心病んでないかよく眠れるか 話す相手はわたしでいいのか
富田林 木村安夜子

未来山脈特集の「夏雲」を読む 中間の遺骨を持ち帰る惨い歌
茨城 赤木恵

四月は旅立ちの月である どこかで桜がさいている
青谷 木村草弥

雪雲が覆う南の街に安閑と聞く天気予報 風が強くなった
松山 三好春冥

 

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急行列車(未来山脈第345号より抜粋)

白熱電球に手をかざしては鉛筆を削った 炭のこたつしか無いころ
松山 三好春冥

あなたこなたの差し入れ豊かな年の始め 陽射し穏やか
諏訪 河西巳恵子

一緒にいることが意味 印空寺の歌碑に立ちしろい吐息吐くわたしたち
富田林 木村安夜子

日にあそぶ小雪まとえばたちあまち少女 姫にだって
岡谷 唯々野とみよ

午前零時の時報を聞いて餅つきが始まる 今年は年の暮れ二十八日
伊那 金丸恵美子

元旦は庭に出て川に向かった大階段の上から只一人ご来光を拝む
大田原 鈴木和雄

うつむいて古雑誌を束ねる 残像のようにかすれていく手
下諏訪 笠原真由美

二歳若い六十代の友が施設へ 聞いて驚きともかく会いに
木曽 古田鑑三

ウインウィルの正月演奏をボリューム上げ一人堪能
さいたま 山岸花江

わずかに白くなった初雪 天気予報は人を不安にさせている
諏訪 浅野紀子

いつも人気のない長屋 雀が寄るので気になった
奈良 庄司雅昭

手作りを持ち寄っての集い 煮物揚げ物酢の物味おこわなど
米子 角田次代

満州に派遣され駐屯した関東軍が画策して開戦した満州事変だった
藤沢 篠原哲郎

明けてやっと賀状に取りかかる いつ届くかここは飛脚の宿
千曲 中村征子

癌の友 余命半年の宣告に夫婦で分かれの旅を続けて二年経ち
大阪 山崎輝夫

ピピ! スマホのように答えぬ君の名刺は特別な処にしまったらしい
愛知 川瀬すみ子

注射器で血液を採る看護師は 口元可愛いく紅塗っている
小浜 川嶋和雄

南天の赤い実の乏しさが寒を増す空 行けど行けど青・青
岡谷 土橋妙子

八十路峠の下り坂はあと何年坂麓の燈火ちらちら見えるが
豊丘 毛涯潤

初雪が根雪になって大慌て雪掘り返している雪囲い
札幌 石井としえ

今朝早く湯潅を終えて看護師の運ぶ給食に箸が進まず
岩手 千葉英雄

市庁舎展望室より発展する秋色の北九州にエールを送る
北九州 大内美智子

下伊那農業高校の生徒が作った黒豆と長葱を売りに来た
飯田 中田多勢子

凩が胸ふきぬける夜は重ねぎよりもあなたがほしい
横浜 上平正一

赤土の畑がひろがる風景に癒された人もありこころ旅に映る
天理 坂井康子

誉め言葉を真に受けていた自分の朗読 TV放映に見ると中途半端な表現だ
下諏訪 須賀まさ子

霜にあいながらも陽があたると早生の福寿草ふたつみっつと咲く
茅野 伊東里美子

寺に猫が来ました くるみと名づけてかわいがっています
長野 岩下元啓

正月を一緒にという甥家族 嬉しさと心配が交差する
岡谷 佐藤静枝

バス会社の一泊旅行 車中は酒や話で大盛り上がり地域のつながり
米子 稲田寿子

凍てつく道は宝石を散りばめたような煌めき 除夜の鐘が聞こえる
岡谷 三枝弓子

今年こそ会いたいね! と書く年賀状 縁なき相手と永遠に
諏訪 藤森あゆ美

繰り返すこの感情はもしかして屈辱という名か 上等だ
東京 金澤和剛

しんしんと揺らいでいるこの夢のような爽やかを生とするか
札幌 西沢賢造

絣モンペに籠を背負い寒風のなか伯州ネギを育てた古のひと
鳥取 永井悦子

想いの半分もできず 総決算のような風邪をひき持越す
諏訪 関アツ子

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急行列車(未来山脈第344号より抜粋)

年賀状手書きにて一〇〇枚それぞれの宛名をゆっくり書いてゆく
諏訪 藤森あゆ美

袋にどっさり詰めたお徳用 一人で食べ切れないものは買えない
松山 三好春冥

「幸せなのでうたを詠まなくなりました」と手紙にある オレンジにそっと口づけする
小平 真篠未成

夜半の月まるければ豊かさを星多ければ幸せと思ういち日の終わり
岡谷 三枝弓子

寒いっ 来ない電気屋 ロボットもいずれ寒いの暑いのと言うだろう
千曲 中村征子

秋を引き寄せた雨一気に冬の人口に一日一日が小走りにゆく
諏訪 百瀬町子

まるで鳩に餌をやっているような感じ七匹の狸が私に集まる
箕輪 市川光男

教会の庭に実る石榴の赤に懐旧の温もり抱く私の秋
大阪 高木邑子

一枚のセーターに思案する女 真赤なコートのマヌカンが笑う
岡谷 土橋妙子

西駒へとヘリコプターが飛ぶ 避難救助に向かうのか 風花が舞う
伊那 金丸恵美子

長引く秋雨霧の中旅に出る 錦の樹々もうなだれて
原 桜井貴美代

「晴れてても蜆の好きそうな色だよね」娘がぽそっと宍道湖通過
愛知 川瀬すみ子

不意にくる電話アンケートよどみなく五つのことに応えを強いる
一関 貝沼正子

これ知ってる! できる! できた! 経験があなたを作る
流山 佐倉玲奈

曼珠沙華 咲く野の道の野仏に童が供えたかあめ玉一つ
京都 岸本和子

紫陽花は反省しない 責める人の胸にあるのは自分の痛み
下諏訪 笠原真由美

一陣の風が吹きすさび空から一斉に葉っぱたちが降ってきた
原 森樹ひかる

スプーンに入りきらない薬 制約ある夫に食べるたのしみあれこれ創作
米子 大塚典子

遠慮しながら生きて来た男やねんと身勝手な人生をトツトツと語る
藤井寺 近山紘

「お城学者加藤理文さんとめぐる米子城」に参加する
米子 安田和子

だれしもが求めてやまぬ青い鳥ジングルベルを厳かに聞く
諏訪 伊藤泰夫

朝から肌寒い 薄れた痛みも季節を知っているのか痛さが残る
さいたま 山岸花江

玄関前の花みずき春は花を愛で夏繁った葉も散って明るくなったが淋しい
東京 保坂妙子

ちぎれ雲が太陽を覆うて急に寒くなる雲よ行け早く行け
岡山 廣常ひでを

火鉢で暖とり女工さんの来店待つ父 我が家は田舎の小さな百貨店
下諏訪 藤森静代

すりきれるほど自由に遊べよ 息子を亡くして妻を介護しつくした君
奈良 木下忠彦

地にはなすと育つミニバラ 冬の庭に可憐な小花咲かせて
茅野 伊東里美子

八十年生かされて来て気付きたり 鍵穴が古墳の形前方後円墳
長野豊丘 毛涯潤

この一年朗読に心血を注いだ年だった ちょっぴり大袈裟に思ってみる
下諏訪 須賀まさ子

腰痛で車いすの人になった母 大豆の莢放置したまま入院
群馬 剣持政幸

目を瞑ったら古い体が消えて透明になった きれいだ
岡谷 唯々野とみよ

ぐっすりと good sleep 傷ついた日の夜ほどなお深く深く
東京 金澤和剛

豆腐屋のオヤジが酒で死んだとういう今宵は湯豆腐で献杯か
青森 木村美映

寒桜に添われて遠まわり凩がホレホレと笑って吹き荒れる
諏訪 関アツ子

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二月の火(未来山脈第343号より抜粋)

もう胸シクシクすることはなかろう ラジオが失恋話ししてる
岡谷 唯々野とみよ

緑を残した紅葉美しく競う全山すべての視線が集まる新幹線の車窓
さいたま 山岸花江

玄関を通るたびにポストを覗く あった! 友からの便り一通
米子 角田次代

手入れを失った庭はたちまち伸びやかに自然にもどる
諏訪 関アツ子

リセットして新しい年の始まり七五年前に死んだ祖父の年齢となる
群馬 剣持政幸

しもささぎが豊作だった台風二十二号が通過し棚が倒れた被害にあった
飯田 中田多勢子

年を経て娘からのカーネーション出窓に遠く亡失した夢
札幌 西沢賢造

七月はどんな月だか忘れてないよ! 君の姿が思い浮かぶ
仙台 田草川利晃

木々や花を美しく染め上げ紅葉は落葉して道いっぱい
諏訪 上條富子

乳房をなくした松虫 まさにがんばった私です
成田 松虫

矛盾だらけの大人の世界この歯痒さを学校にぶつける俺無駄は承知
伊那 藤本光男

心が伝わるロボットに介護お願いする時代 中古のロボット待ち遠しい
岡谷 伊藤久恵

中秋の名月さん笑ってください明日を思いわずらうわたしがいることを
岡谷 林朝子

雨天続きの秋彫刻ぽっかり一日好天に訪ねた辰野美術館 郷愁にかられて
岡谷 堀内昭子

大型台風の警報わが家には近くに山もなく海も川もない都市の中だが
東京 保坂妙子

いちほまれ買う白米の旨さかな 淡い塩味ぱくり食べたり
小浜 川嶋和雄

何十年振りか古里のJR駅 ふと目につく看板は”レトロな街”と
岡谷 三澤隆子

黄金色に輝いたひまわりの種が実る山雀が家族で食事大賑やか
岡谷 武田幸子

犬嫌いだった私が犬に好かれるなんて尾をふりふり近寄る柳の木の下
岡谷 横内静子

めったに笑わない人も頬がゆるむ 赤ちゃんパンダ香香を見れば
岡谷 片倉嘉子

香香と命名される赤子のパンダ すくすく育てその輝きの如く
岡谷 金森綾子

クリーム色の薔薇一輪三週間咲いているひとひら散らしまあ健気
岡谷 柴宮みさ子

斎藤佑紀様 みなみ局ないおつとめとってもびじんやさしくゆうが
鹿沼 田村右品

H30年新たな年が始まった今年も一年頑張ろうね
茨木 綱尾守

ともすれば隠れてしまう優しさ 時によって隠れる太陽のように
つくば 辻倶歓

囲いに覆われし別世界のお伽噺の終幕の日
仙台 狩野和紀

大きな時雨虹を茜色に輝く飛行機がくぐりぬける
長野 岩下元啓

新年を想って書く一首 ただそれだけで何故だか幸せになる
滋賀 児嶋文憲

午前六時十五分に起床 朝食はパン テレビを見ていると便気もようす
琴浦 大谷陽子

昭和十六年十二月八日 今までこの日を忘れたことがない真珠湾奇襲
諏訪 宮坂きみゑ

昨日は温州蜜柑を採って息子に運んでもらいござ一杯に拡げる
岡山 廣常ひでを

少年の頃の我が胸に突き刺さる稲妻は機銃掃射さながら
岩手 千葉英雄

深呼吸すると冬の匂いが体中に染み込んでゆく 今日は十一月九日
坂城 宮原志津子

広い舞台 大きなグランドピアノに向かい初演奏の娘 てらいなく堂々と
流山 佐倉玲奈

おじさんは雛の鶏を買い一日中暖めて大きくして産みたての卵
下諏訪 光本恵子

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流域(未来山脈第342号より抜粋)

麻痺の右足を引きずりながらも私は草を刈っている空が青い
箕輪 市川光男

濾すという語を漉すとする赤字あり ピュアを追い求める果てしなさ
東京 金澤和剛

障害の九歳の児が右ほおにチューしてくれる 子供みたいに楽しい
富田林 木村安夜子

この夏の最高気温と熱中症のニュースが飛び込んでくる午後
藤井寺 近山紘

泣く子をむりに乗せ自転車走らせる 周りの視線に泣きたいのは私
流山 佐倉玲奈

コツコツとヒールの音を響かせて夜のアスファルトに地割れを起こす
諏訪 藤森あゆ美

沙羅さんが彼岸花のような睫毛をつけだした 娘心はわかるけど
米子 大塚典子

蔵に晒し木綿が一反あった 学校の運針を思い布巾を縫う
諏訪 松澤久子

いつも俺の話をしてくれたと聞く友の心が伝わってくる
仙台 田草川利晃

谷崎潤一郎の小説「痴人の愛」どことなく身につまされ懐かしい
下諏訪 須賀まさ子

僕血圧一三〇ですと訴える生徒 ご両親に話したの 父はいません
奈良 木下忠彦

こんな夢を見たという書き出しの漱石の夢十夜を読み疲れた
米子 笹鹿啓子

到着便のロビー、モデルのごと脚なびかせ中二の孫現る
愛知 川瀬すみ子

対バンの音源を聴くのが好きでして、メジャーの音には興味がないです
青森 木村美映

老猫を抱き息をたしかめる 頑張れ ギネスにのろう 今二十一歳
東京 上村茗

足が痛い腰が痛い 老は待ってくれない散歩に出よう
岡山 廣常ひでを

ありがとう! なんって気持ちのいい言葉 生きる力となることば
米子 角田次代

花が潰えた蓮池 大阪城を遠景に釣り人一人糸垂れている
大阪 山崎輝男

国立劇場で筝を演奏する 自分が観客でないのが不思議だった
諏訪 宮坂夏枝

もう絶滅種 インテリ文学青年も 山の手のお嬢様も
下諏訪 中西まさこ

未熟児大人の隷従思考では困りますよねお国の政治が
藤沢 篠原哲郎

自家栽培のナイヤガラ甘く香り彼岸の仏前に供える
諏訪 宮坂きみゑ

光点を見つめ数分手術は終わり説明受けてホテルに一泊
下諏訪 小島啓一

疎遠になって十五年 突然届いた友の便りにびっくりする
岡谷 佐藤静枝

彼岸も過ぎてすっかり秋めいて来て風も冷たく
諏訪 上條富子

等級名を木箱にしるした果実を貨車に積み込んだ駅 遠い若い日
豊丘 毛涯潤

楽しみは見つけだすもの創るもの夢を掲げて笹の葉が鳴る
一関 貝沼正子

草刈り機の君のあとをブロアで追う ホタルブクロがひとつ苅り残されている
長野 岩下元啓

浅草で歌会が開かれる 思い出と現実がない交ぜて上京を誘う
大阪 鈴木養子

新品種福井が生んだいちほまれ だれもが認める高級米だ
小浜 川嶋和雄

秋に成った 人生も秋 妻はショートステイ はぜの葉が赤い
大田原 鈴木和雄

 

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急行列車(未来山脈第341号より抜粋)

急行列車

顔を見るなりもっこり起きて満面の笑み 九十歳の姉
福知山 東山えい子

農政局と役場から何故田に稲を作らない 金になるなら作ります
木曽 古田鏡三

今年はじめての揚げ羽蝶 誰の化身か懐かしくあれこれ語る
諏訪 関アツ子

運動会のプログラムが雨雲と共に進む てるてる坊主に願を掛ける
伊那 金丸恵美子

砂時計さらさらという音もなく 滑り落ちてゆく時間のかけら
諏訪 大野良恵

汗落ちて扇風機では役たたず クーラーに代えて涼しさを呼ぶ
小浜 川嶋和雄

夏の終わりを告げるごとく蟋蟀が草むらで夜どうし鳴く
諏訪 宮坂きみゑ

赤トンボを見た 秋が来ている 何もしないうちに反省の秋を迎える
東京 上村茗

未熟児大人の隷従思考では困りますよねお国の政治が
藤沢 篠原哲郎

一つ二つあとはメニーで足りていたむかし 人の貌はシンメトリー
笠間 赤木恵

朝ドラ「ひょっこ」と同じ時代を過ごし懐かしく見ている
米子 笹鹿啓子

このあいだ生まれたばかりと思ってたもう三歳が声かけてきて
札幌 石井としえ

暫暇をとって旅に出るとはりきる君は輝く二十六歳
長野 岩下元啓

戻り梅雨に頭垂れていた額紫陽花待ち侘びた雨に濡れ活きいき
諏訪 百瀬町子

ペースメーカーにたよる友連絡先をいつもしのばせている
奈良 木下忠彦

義兄が突然旅立った 処置室に入るまでは義姉や娘と言葉をかわしていたのに
米子 稲田寿子

一度でなく何度か使うも供養かと割り箸捨てずソーメンすする
豊丘 毛涯潤

断捨離を始める七十八年分の取捨選択には男気要り
北九州 大内美智子

自家製の種から育てた黄色い花オクラが日をあびて咲き出した
飯田 中田多勢子

掬い取られたノートの余白の中に潜んでいる遥かな記憶は
札幌 西沢賢造

足の怪我が治ると信じていたのに完治せぬまま登山ツアーに参加する
米子 安田和子

歩くあるく歩いた三時間歩く 一匹の猫に会うニャーオ
千曲 中村征子

作業場で毎日聞く鶯の声と年に何度か聞くトッキョキョカキョク
東京 鷹倉健

旅の思い出一個鉢から芽吹き眩し名はとりあえず「小笠原君」
愛知 川瀬すみ子

北川京子様 北川家のおじょうさまとしてめでたくごたんじょうを
鹿沼 田村右品

Jアラートの騒ぎ余所に蝉は宙を仰ぎ長い口吻胸に虫の息
諏訪 河西巳恵子

こんなにも疲れた夕辺は三日月さまに腰を掛けて一服させてください
横浜 上平正一

半日の上陸に胸ふくらます客船クルー 円札にぎってどこに遊びに
大阪 山崎輝男

「夏がすぎ風あざみ」以下六小節 合唱コンサートでソロ担当
大阪 加藤邦昭

水戸「風の会」歌友の便り「二〇一七年六月二日で終わりました」と
東京 及川かずえ

言った事が振られて戻って来た 伝える事のむずかしさ噛み締める
茅野 伊東里美子

こんばんは四十七歳独身です 売れないもの書きをしています
青森 木村美映

うす紅色に朝顔の花ひらく恋する人の耳たぶに似て
富田林 木村安夜子

コンバインで刈り終わる田んぼを横目に湿気た藁が宙にぶら下がる
群馬 剣持政幸

タンスの中に褐色した成績表の束 母は十代の私をのこす
天理 坂井康子

朝八時時報のごとくに雷鳴 いのちいっぱい生きるぞ
岡谷 唯々野とみよ

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急行列車(未来山脈第340号より抜粋)

貨物船に憧れを積む水色のクレーン 私も吊り上げてくれないか
松山 三好春冥

森山直太朗はこの街をうたったか「どこもかしこも駐車場」
岡谷 唯々野とみよ

稗田神社のお堀のアカミミガメ 厚い水苔を背負って歴史を誇る
奈良 庄司雅昭

燃える炎に包まれるエアコンの外 ジョギングの台風がまた休んでる
千曲 中村征子

ガンは気力で克服するが口ぐせ 急転してお別れのとき
奈良 木下忠彦

元上司叙勲祝賀会前夜はてんやわんや 娘に借りた洋服スポッとはまって決まり
米子 大塚典子

とりとめのない夢のはずなのに朝の光にいとおしむような
札幌 西沢賢造

犬黄楊のはびこるままの君の墓ひとに頼んで丸坊主にする夏
愛知 川瀬すみ子

植え替える花菖蒲 手入れされなかった根が絡んでいる
飯田 中田多勢子

関空からアムステルダム経由で十六時間 エディンバラ空港につく
大阪 加藤邦昭

国連で核兵器禁止条約 被爆国なのに参加しないとは
諏訪 伊藤泰夫

遠くの街で戦い続け HP消耗 ルーラ!
下諏訪 中西まさこ

朝顔の前で羽ばたく紋白蝶 花蜜ほしいか動作はやまず
小浜 川嶋和雄

ブロッコリーは点描に最高の素材三本の細筆でリズミカルに
岡谷 土橋妙子

母が亡くなってから四十九日荒御魂新盆と喪中の法要数々おこなう
岡谷 武井美紀子

パーキンソン六輔と書かれた手紙も宝となったあの高笑いが懐かしい
箕輪 市川光男

小学1年生と六年生の孫二人 初めての二人旅姿を見るまでドキドキ
坂城 宮原志津子

前夜のオケ合わせ癒える間もなく 目覚めても緊張が有り余る
諏訪 大野良恵

野菜待つ客の声顔浮かべつつ山畑で一人畑耕す
福知山 東山えい子

日照不足の田んぼの稲穂 稲熱病の言葉重くのしかかる
群馬 剣持政幸

おいしくなれおいしくなれと待っている 完熟前に破裂してしまうスイカ
米子 稲田寿子

高山明様 ランドセルせなかにいえをでて国谷の分校にかけあしで
鹿沼 田村右品

まあるくなった机の角をなでながら歌に行き詰まった夜を思っている
横浜 上平正一

吹き抜ける風は梅雨の風ではない紫陽花はうなだれ雨を乞う
諏訪 百瀬町子

蝉しぐれ 七十二回目の原爆忌 広島・長崎への投下時刻に黙祷新たに
大阪 與島利彦

蝉の声植物園より朝の五時いよいよ夏本番裏の家より何度もくしゃみ
東京 及川かずえ

花咲けば花と語りて雨の夜は雨音数えひとり楽しむ
京都 岸本和子

鎧戸を漏れる光の水底で心静かにパソコンを打つ
大田原 鈴木和雄

体の中の海は満ちて引いて繰り返される永遠の波立ち
諏訪 藤森あゆ美

たくさんの茂みにたくさんの営みがあって髪切虫の羽のいろ鮮やか
京都 毛利さち子

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流域(未来山脈第339号より抜粋)

指先すべらせてストッキングぬぐ すべて開放されたような
岡谷 三枝弓子

朝起きるとすぐに明後日歯医者へ持って行く菓子を包む忘れない様に
大田原 鈴木和雄

有松の絞りの浴衣を身に纏い包まれている綿の優しさ
諏訪 藤森あゆ美

半べそかいて両膝にすり傷負った次女 自分で洗ってガーゼを貼る
諏訪 浅野紀子

兵庫県加古川に住む娘の児ふみの宮参り七月一日梅雨の合間
岡谷 武井美紀子

五千人の街の巨大客船が平和の絆結びに世界各地へ
大阪 山崎輝男

ふるさとに居るだけの人間にも古里はある 今年も咲いた二輪草
木曽 古田鏡三

朝早くさえずる鳥たちその賑やかさが心地良く眠気をさます
諏訪 宮坂夏枝

雨上がりの青空に残雪の山が映える ああもう鳥になりたい
箕輪 市川光男

梅雨の合間に夫と山で水を汲む 鎮まる今年の御柱古道
下諏訪 藤森静代

祖父母の参観日の案内たより届く いそいそとフェリーに揺られて壱岐へ
米子 笹鹿啓子

捏ねて包んで蒸す みんなで作ったおやき暑い時でもおいしい
茅野 伊東里美子

伸びる草のはやさ 朝から草刈りの音がひびく
諏訪 上条富子

六月9日夜半外にでる 中天に小さな満月ストロベリームーン
岡谷 花岡カヲル

小学校調理クラブのお手伝い古希を過ぎて思いがけない出会い
岡谷 佐藤静枝

下諏訪は母の実家のある町だ 正午になると流れるオルゴールの音色
松本 下沢統馬

ブランコがとても上手になった一歳六ヶ月の息子
流山 佐倉玲奈

おいしい鮭の昼食 何でも食べて短歌を詠んで新聞読む日々
琴浦 大谷陽子

人づてに伝わってくるツイートに「いいね」を打たずやり過ごしている
青森 木村美映

窓下に小さなお部屋六角形 一緒に住めないごめん蜂さん
原 太田則子

目覚めるとゴーゴーざわざわ風の音 不安かかえて病院へ
原 桜井貴美代

野薔薇が咲いた 小さな花ほわりとつけて初夏を飾る
原 泉ののか

詩人歌人の資料飾り 電光板などなく富士見駅 趣があります
原 森樹ひかる

紫のちどり草と真っ白のオルレア心なごめる畑仕事のあとの一時
原 柏原とし

野原洋一君 鹿沼市高等学校と宇大をりっぱにごそつぎょうなさる
鹿沼 田村右品

今日は父の日男性の後姿ばかり六頁も載る今朝の新聞 頑張る姿
岡谷 堀内昭子

くりくり頭の高校生 休暇も登校「おはよう」爽やかな風通りすぎる
岡谷 林朝子

梅雨の晴れ間に地面を埋める 数えられない枇杷の実一つひとつ
千曲 中村征子

国会や国政に係わる枢要な場での不誠実な逃げ口上の政府筋
藤沢 篠原哲郎

つい主婦の本性が出る 水屋に流れる気を汚す
下諏訪 中西まさこ

五十回忌で初めて父の遺言を口にした長兄 人生一番重い荷おろす
米子 大塚典子

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急行列車(未来山脈第338号より抜粋)

春を待たず久女はよみ路へ無常の風に鉄線花濃紫の露をこぼす
大阪 井口文子

ポップコーンを胸に砂浜を歩く 手紙の入った瓶を探しながら
松山 三好春冥

すべきこと明日にまわして読み耽る村上春樹の新作二巻
一関 貝沼正子

今ガラケーの充電中ガラケーのような私が添い寝する
箕輪 市川光男

死ぬってかんたんそう 冷めん作るとなりにどきんと立つ漂白剤
富田林 木村安夜子

山陰線に深緑色の車体 贅を尽くした豪華寝台列車現る
境港 永井悦子

教会の聖歌隊に入隊を許可される 六十六歳の新たなチャレンジ
大阪 加藤邦明

バス停の平均台めく車止めの上 危うさと至難の業の乗降は
諏訪 河西巳恵子

「飢えて死んでく人がいる」俺はいま何をしているのだ
木曽 古田鏡三

朝を夕べを夜もまた来る苗代田に何するとなく来れば安らぐ
富丘 毛涯潤

男の孫が夫婦ご飯茶碗 夫婦箸が入っている箱を持って来た
飯田 中田多勢子

青葉のころ大阪発の新幹線「さくら」で 九州福岡へ家族旅行
大阪 與島俊彦

庭で越冬した大根に花 凍みを耐えてはればれと
岡谷 唯々野とみよ

目を閉じそこはかとなく何でも行われていて終わりそうもない
千住 中村千

大地を鷲づかみせよ この両足揺れて真中がないんだから
千曲 中村征子

信濃より届いた歌人の姉の歌集 思いあたること多く涙にじむ
鳥取 小田みく

築十年の壁面メンテナンス見た目変わっていない 損した気分
米子 角田次代

メタンガスが燃えていたゴミの島 今は無数のユリの香 船影を追う
大阪 山崎輝男

石礫を上手く躱せるようになったその子の演技を誇らしく見る
下諏訪 中西まさこ

明通寺若狭一だよ国宝が 杉葉の香り五月の晴れ間
小浜 川嶋和雄

声が出ない「まさかの出来事」鼻からカメラを入れられる
天理 坂井康子

真夏日のメセタに佇てば残像は狂女ファナの貌をしている
青森 木村美映

母の日に貰った向日葵の黄色いその丸に病む夫の顔を重ねる哀しみ
大阪 高木邑子

猫を飼ったらくるみ。犬だったらスウとつけましょうねと君と笑う
長野 岩下元啓

壊れた体重計を放置したまま 二年の長い現実逃避
諏訪 大野良恵

今日はどうなるのだろう 目の前の緑茶は答えてくれない
つくば 辻倶歓

家の中に入り込んでいる蟻はきっと死ぬまで歩きつづけるだろう
茨城 赤木恵

ゆうぐれに滲んだ紅のふくらみが風に吹かれて夜の訪問者になれ
横浜 上平正一

戦争前の空気がただようこの道は何時か来た道怖い道
東京 保坂妙子

語り続けて三十年「星は見ている」原爆忌コンサート練習中
米子 笹鹿啓子

娘題二子の出産を控え東京から兵庫へ行ってしまった夫の転勤で
岡谷 武井美紀子

いつか逢ったら話したいこと溜めたまま 湖面の残照にひとり
諏訪 関アツ子

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急行列車(未来山脈第337号より抜粋)

宮崎師から貰った仙人掌真っ赤に一つ 一に口語で自由律でな と咲く
大阪 井口文子

玄関にすらりと立ったお嬢さん ワクワクしながら招き入れる
下諏訪 笠原真由美

いつもぎりぎりの綱渡り人生 幸運だけは寄り添ってくれた
諏訪 関アツ子

あと何年この空気を吸えるか 目覚めた一人の自分にきく午前三時
さいたま 山岸花江

九十で老師は逝った 意気地のない… 宮崎信義は九十六歳十ヶ月まで生きたというのに
長野 岩下元啓

残雪の八ヶ岳は遠く川辺を染める黄の花 春の水面は凪ぎ
岡谷 土橋妙子

一緒に鹿島槍に登ろうよあなたなら大丈夫 登りたい でも
奈良 木下忠彦

こんなにも痩せっぽちだったのか十代半ばフランス衿のセーラー服
諏訪 河西巳恵子

長い廊下を杖をついて娘について行くのがやっと 妻の病室へ
岡山 廣常ひでを

田圃七枚にソーラーパネル 家の前のながめは一変するだろうな
茅野 伊東里美子

爆笑しながら沢山話す この輪を大切にしたい
東京 堀江美菜子

作業もんぺ地下足袋を履きお茶菓子を持てば畑への支度が整った
飯田 中田多勢子

来賓の祝辞に間に合うようにして桜は満開に 新入生諸君おめでとう
茨城 赤木恵

自転車で慣れない知らない道をゆく 新しいスタート切った高一の息子
諏訪 大野良恵

四月五月は私にとって血沸き肉躍る季節の到来 ワラビ採りの始まり
米子 稲田寿子

夕日を着飾り春のさざなみがおしよせてくる鎌倉の浜辺
横浜 上平正一

待っても待っても天候不順 春行きの列車は遅れています
諏訪 百瀬町子

店のない集落残した閉山後 集落さえない原発事故後
札幌 石井としえ

楽しい電話かけ合った染の旧友ことわりもなく 二週間後に永遠の別れ
水戸 及川かずえ

ピンピンコロリを目指した月一回の男性の集いが始まる
米子 角田次代

トランポリン楽しそう天理駅前広場にはじける子供らの声
天理 坂井康子

底冷えの京の寒気を切り裂いて禅寺の木々 空を突き刺す
京都 岸本和子

白い小花と緑濃いつややかな葉 安曇野の清流にわさび田ゆれる
岡谷 三澤隆子

時間の使い方は自分の命の使い方 つまらなく使わないと尼僧説く
岡谷 武田幸子

色とりどりのビオラを掘り起こし持ち帰る我家に春を呼び込む花
岡谷 横内静子

五時に流れる「家路」のメロディ 仕事の区切りをつけて夕餉の支度へ
岡谷 片倉嘉子

ジャンケンゲームで脳の活性化 勝っても負けても笑い声が立つ
岡谷 金森綾子

桜の樹の下で準備体操 身を反らす度に初花一輪と見つめ合う
岡谷 柴宮みさ子

大山を望み潮の香りも五月晴れ 戸板の上で境港サーモンが跳ねる
境港 永井悦子

一年中回覧をくばり集め 神社の奉仕は朝から朝まで短歌と云えば笑われて
木曽 古田鏡三

藻の餌を撒けば食いつくあと鴨の一羽が次の餌を待つ
青森 工藤ちよ

滞在を一日のばしてアメ横のカプセルホテルのバイキングに並ぶ
青森 木村美映

大層なことほど心が震えてパーティ果てた後の膝の震えが止まらない
京都 毛利さち子

小さな緑の二葉が春を待ちかねて土を押し上げ顔を見せている少し
藤井寺 近山紘

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