素足(未来山脈第360号より抜粋)

紫木蓮青空バックに膨らんであした咲きそな幸せの予感
北九州 大内美智子

はいその話は二度目と娘 おかげで老化少しコントロール
諏訪 関アツ子

芝居はもう無理 人が深く描かれた作品の読み語りに 心震わす
下諏訪町 須賀まさ子

深と静まりかえった高遠湖雪をまとった仙丈ケ岳が私を見る
箕輪 市川光男

悔やむならもうやってはいけないと子供だって知っていること
諏訪 藤森あゆ美

メールがただのメッセージだけとは 心を送りたいのに
鳥取 小田みく

催花雨のこの現象を待つサクラコートもとれた春の足音
諏訪 伊藤泰夫

元号は令和 世界中が穏やかでなければ一人ひとりの花は咲かない
坂城 宮原志津子

木がたおれあれたままの山 人のけはいに鹿たかく鳴く
奈良 木下忠彦

一人花見 花びら一枚に来し方を想う 花道を去るのはまもなくか
東京 上村茗

原始 地上は森に覆われ 海には生命の胎動があった
青谷 木村草弥

近道では見つけられなかった宝物はこの身にこそ宿る
仙台 狩野和紀

一夜にして開花のラッパ水仙 道ゆく人にやさしく頭下げている
下諏訪町 藤森静代

小さい草花が咲き出す春を告げる梅もふくらみ柳も芽ぶき桜を待つ
諏訪 宮坂きみゑ

優柔不断が招いたストレス 春の嵐が内に外に吹き荒れる
米子 角田次代

観梅コースあちこちの花木「与謝野晶子」の名歌栞に老若にぎわう
大阪 與島利彦

平成三十一年四月一日新元号で沸き立つ日本列島「令和」で決まる

東京 鷹倉健

仮住まいでは気にならなかった汚れ 新築の自宅は掃除が気になる
流山 佐倉玲奈

休暇から目覚め ぞくぞくと葉をもたげたチューリップ今朝はなごり雪
岡谷 堀内昭子

枯葉の下から蕗の薹が顔を出す ふきみそでいただく春の恵み
岡谷 林朝子

入試日の母の手作り弁当 甘く苦く心にじわり特別の味
岡谷 伊藤久恵

紅葉が鮮やかに山の里を彩り囲む ひかりに映えてひらり舞う
茅野 平澤元子

人の事ばかり干渉している者は己がなにもみえていない
東京 田草川利晃

木は春が来る事を知って枝を伸ばす 春が来るのか人は知らない
つくば 辻俱歓

よく晴れた空を見ながら 昼食の大学芋がおいしい
鳥取 大谷陽子

少しずつでも成長したい精神と肉体と スパイクの力も
松本 下沢統馬
金を稼ぐ苦労が身に染みて でも楽しい初アルバイト
横浜 大野みのり

海土町からバスケットボール遠征試合の孫たち 俊敏な動きにただ涙
米子 笹鹿啓子

朋の愛 師の深き愛 両親の愛はレンズの焦点に光を集めてわが人生に感謝
埼玉 横田哲治

新短歌一筋が私の人生百迄に一首で良いから良い歌を詠みたい
太田原 鈴木和雄

富士の山がじゃぶじゃぶ歩いて湖まで来た 大きく見える朝
下諏訪町 光本恵子