太陽はいま(未来山脈第367号より抜粋)

千羽鶴を贈ったのは半世紀前 折り方を忘れた指をあたためる
松山 三好春冥

冷めた湯船に熱湯を足す 日常は常に刺激を待っている
諏訪 藤森あゆ美

建設中の五階建てビルこの夏をグレーの幕が家の気塞ぐ
一関 貝沼正子

娯楽館おんこが目じるしみんな集まる炭鉱(やま)の楽しみ芝居に映画
札幌 石井としえ

わが国二度目の夏季五輪―世界平和記念祭典真近わくわくする
大阪 與島利彦

花水木が紅く染まり銀杏の黄色が鮮やか 山茶花が一杯に花弁を開く
伊那 金丸恵美子

伸びて来た水菜に屈んでものを言う生前に親父が春にしたこと
豊丘 毛涯潤

あれに良しこれに良しとCM踊る サプリメントは魔法使いか
坂城 宮下久恵

朝霧の中日輪が消える諏訪湖マラソンランナー出揃う
諏訪 宮坂きみゑ

秋宮境内の石灯籠 苔と枯葉を載せて秋のおしゃれする
下諏訪 藤森静代

文化の日にふさわしい朗吟の夕べ 夫も吟詠し盛り上げる
岡谷 佐藤靜枝

秋明菊の淡い紅色 吹き抜ける風は涼しくて散歩へと誘う秋の一日
辰野 里中沙衣

刻々と映し出されるテレビ画面に言葉を失う 何ということだ
坂城 宮原志津子

恐ろしげな雲動く 日の光にやわらかく包まれ見ている
岡谷 唯々野とみよ

遠目にもそれと知る百日紅 真赤な花ふさ二階も超えるいきおい
岡谷 三澤隆子

気がつけば毎朝庭を動かしている 根の張るものは選別される
岡谷 横内静子

「オメェなんて言わないの」 さらに連呼する三歳の孫娘
岡谷 片倉嘉子

歌集『言がたり』に重なる幾つか きっといいことあるよ貴女にも
岡谷 金森綾子

グラスに揺れる秋桜 歌会のいつもの席にかすかなけはい
岡谷 柴宮みさ子

瀬戸芸で賑わう瀬戸航路チケット待ち時間二時間三便をゲット
米子 角田次代

愛隣会館が取り壊される 変化に対応出来ない弱者を忘れないで
大阪 高木邑子

カーテンの襞を泳ぐ鳥の影夜になったら全部消えた
名古屋 早良龍平

さようならを言う覚悟はできている 当てのない風にちぎれた涙
諏訪 大野良恵

‶おとうさんの読みあたったよ〟吉野彰ノーベル賞の新聞供える
米子 大塚典子

十八の珊瑚の肌に紅をさし君を待てば ああ ああもう冬
北海道 吉田匡希

マニュアルがないとできないという あればあなたでなくてもいいのだよ
京都 岸本和子

ほうき草に触れながら夏から秋への日を浴びる ほしいな草ぼうきひとつ
千曲 中村征子

ユーモアで笑いを誘う講演を終わりまで聞いて帰途につく
下諏訪 小島啓一

シャガール展の異次元の世界を見て浮かれて求めた高額の本一冊
岡谷 土橋妙子

いつもの鉛筆で言葉をなぞる ひとりだけの海の波
富田林 木村安夜子