いのち(未来山脈第371号より抜粋)

朝の通勤電車 座る確率が上がる 喜ぶ自分がいる
京都 岸本和子

おやすみキテイー おやすみ 願えば叶うってどこかでまだ信じている自分
北海道 吉田匡希

友より届いた野菜の宅急便菜の花の蕾が早春(はる)をつれて
北九州 木内美智子

杖つく人も多い 何の因果で下船できぬか苦悩に満ちたコロナ船
大阪 山﨑輝男

コロナ騒動 何もかも息苦しい ウィルスと菌のちがいを娘より学ぶ
東京 上村茗

そろそろか六つ数えて深呼吸 われの怒りを拳に潰す
一関 貝沼正子

夜明けの西空に低くオリオンを労り抱くシリウスの姿への望郷
岡谷 土橋妙子

節約の限界越え背中を這う 黒髪染めて若作り
諏訪 大野良恵

秀峰大山の道ぞいに落葉や雪の下から春を待ち芽を出すふきのとう
米子 稲田寿子

さようならお元気でね 十年間の物語を胸に抱き締めて旅立ちます
伊那 金丸恵美子

また私の心臓がウトウト眠る身体の熱がなくなって大騒ぎとか
箕輪 市川光男

新型肺炎患者が来るのは覚悟の上と病院受付の娘は気丈に振る舞う
大阪 高木邑子

下諏訪は温泉施設が多く有り日々利用して長寿の助けに
下諏訪 小島啓一

図書館で親に巣から落とされたコサギを小学生の娘がひろってきた
諏訪 宮坂夏枝

そばに佇んでいるノボロギク 貴女がそばにいるような気がして
つくば 辻俱歓

凍りつく湖面に石を投げてみる音も立てずに転がって消える
原 桜井貴美代

買い物もマスク無しでは怪しまれ人込み避けて静かに暮らす
原 太田則子

青空にキラキラと舞う風の花 妖精たちの声きこえくる
原 泉ののか

揺れたり休んだり 葉をつけない木々たちの裸のおつき合い
原 森樹ひかる

若者の三学期春はそこ迄来てるのに思いもよらぬコロナウイルス
諏訪 宮坂きみゑ

児らの声がはねる赤いボールが跳ねるスニーカー跳ねる
岡谷 唯々野とみよ

こんな事態になる前に注文していた専門書「ハイデガーとラカン」
下諏訪 中西まさこ

花瓶に注ぐきれいな水道水 スターチスの紫が華やぐ
富田林 木村安夜子

赤い花びら机と畳に散らばる 鮮やかなさまの真冬日
札幌 西沢賢造

ウィルスが在庫セールのごとく砂漠にした東京・銀座
さいたま 清水哲

うっすらと地上に雪が残る朝二羽の白鳥はひっそりと北帰行する
岡谷 三枝弓子