いのち(未来山脈第380号より抜粋)

コロナで神経すり減らした一年 体重増加もコロナのせいにして
諏訪 大野良恵

人類の遠い先祖が海を離れてから四億年の長い歳月が経った
青谷 木村草弥

時雨来て重苦しい一日 巴布剤しんしん膝に染み入る
諏訪 河西巳恵子

筋肉痛 どこから来るのかわからぬが運動不足だけはわかったぞ
青森 木村美映

寒さ増し目もさめるような赤いもみじの下に楚々と社鵑草咲く
岡谷 花岡カヲル

近頃後ろを見る自分に気づく まずい まだ早いぞ前を見ろ
箕輪 市川光男

孫の秋華がピアノを習い始めた 先生は最近再会した友のお嬢さん
諏訪 宮坂夏枝

見るだけだった陶芸 思いがけなく一日体験する
岡谷 佐藤静枝

あっと言う間に旅立ち 冷たいほおは眠るように
鳥取 小田みく

糖尿病の定期検査に向かいながら過去二ヶ月の生活を思う私
米子 稲田寿子

姿が見えぬ夜中の動物すばしっこい私は重い足を引きずって捜す
茅野 名取千代子

出来ることなら誰のことも苦しめたくない でも苦しめてしまう人間の性
つくば 辻倶歓

今年はとうとう後期高齢者になってしまいました
米子 安田和子

持久力落ちしと思う 先日の激情さえも朝霧のよう
一関 貝沼正子

クワバラクワバラ 頬ふくらませ愛嬌顔の台風十号TVに登場
米子 大塚典子

帰る息子に ほらよ採りたてキャベツ放りこむ 車の窓から
福知山 東山えい子

桜町通り街路樹は銀杏落ち葉掃きができないと青い内に切り坊主だ
飯田 中田多勢子

作業中は顔を上げる事もなく黙々と検品に精を出し時を忘れる
仙台 狩野和紀

黄と赤花が咲いたか丸い山 もう秋ふるさと池河内は
小浜 川嶋和雄

ひゅうひゅう吹く風にさらわれて赤や黄色の枯れ葉と燥ぐ
岡谷 金森綾子

ふるさとはりんごの産地 赤く色づいて私を迎えてくれる
岡谷 片倉嘉子

真っ青な矢車の花一輪 凛と咲く秋の日に
岡谷 横内静子

色付き多彩に天に映える七色大カエデ 山あいの丘に人々の賑い
岡谷 三澤隆子

八重咲の白い山茶花ぽつねんと人待ち顔で料理屋の入口に
岡谷 柴宮みさ子

参加してたNHKのドラマ OA日もタイトルもホームレス役のぼく
東京 天野ロケ

ピアス口紅シルクのトップ 下半身は普段着のままZoomのクリパ
下諏訪 中西まさこ

あの人に言われたことが今ごろ分かって風の中にいる
下諏訪 笠原真由美

もうよそう いえこれから咲かねば 遅咲きに咲きはじめた私の朗読
下諏訪 須賀まさ子

小学校では日華事変中学は大東亜戦争大学一年で終戦戦争の青春だ
大田原 鈴木和雄

婚礼衣装をスマホで共に品定めしたケアマネも今は二児のママさん
大阪 高木邑子

ピラカンサス 青空映す薄氷 年の瀬の道 ふと立ち止まる
神戸 粟島遥