太陽は今(未来山脈第382号より抜粋)

まだ見ぬ人を思い少しの緊張と少しの期待と小さな落胆もあったか
藤井寺 近山紘

ダイエットは食べる順序という息子まず山盛りのコールスロー食む
一関 貝沼正子

寒冷地に冬は近づき鉢植えの三十数個を屋内に運ぶ
下諏訪 笠原真由美

あの人の賀状届かず寒の入り何があったと安否気遣う
横浜 福長英司

まるッとちぢんで安堵する イメージの中の私今日はダンゴ虫
京都 毛利さち子

集まればどうしても一緒に食べるからキャンセルしてね今度の法事
下諏訪 中西まさこ

台風で倒れたブナの老木 日が差しこみいま若芽をスクッと伸ばす
岡谷 横内静子

白鳥V字乱れぬ隊列飛行 北アルプスの大空に主となり
岡谷 三澤隆子

願い事三回唱える時間ある人工流れ星 二年後の打ち上げ待ち遠しい
岡谷 柴宮みさ子

感染者が減ったと油断できぬ 変異とやらで攻めてくる敵は手ごわいぞ
大阪 高木邑子

年始めのサプライズ“鬼滅の刃”二十三冊贈られる
岡谷 金森綾子

湯上りに皮をむく孫の指先からみかんの香りが部屋に広がる
岡谷 片倉嘉子

ゆっくりと朝食 新聞見てもてあます時間 コロナ禍の生活
鳥取 小田みく

鳥インフルエンザ ざくざくっと養鶏場の殺処分続くこのころ
愛知 川瀬すみ子

腰曲がりのおぼつかなくなった母八十五歳の今を生ききる
群馬 剣持政幸

にきびのあるおでこを真剣に洗う 息子の無防備な幼顔
諏訪 大野良恵

拾い集めた柿の葉をキレイきれいと笑い合う姉の晩年私の晩年
岡谷 土橋妙子

大寒の夜 満月のウルフムーン見上げてさまざまな思いを巡らす
下諏訪 藤森静代

元旦に郵便局のアルバイト我が子の経験今に輝く
諏訪 伊藤泰夫

年末で夫が家の風呂に入る 宅老所かけはしで入浴してくるけれど
飯田 中田多勢子

今日一日を健やかにすごすほどの小さな願い 老いの現身
奈良 木下忠彦

温故知新が座右の銘 ギリギリのところで折り合いつける我が家の伝統
米子 大塚典子

年末のスカイブルーの空コロナ禍を忘れさせるほどの新鮮な広がり
岡谷 三枝弓子

正月三日おみくじは吉 大吉と大凶の仲を取り持つ
松山 三好春冥

どしんと焼き鯖が送られて来た北陸の小浜から 新短歌の人って凄い
大田原 鈴木和雄