素足(未来山脈第383号より抜粋)

きみが最後のひとりだった星の光が今宵わたしの街にとどく
下諏訪 笠原真由美

来し方を悔い行く末を憂い鬱々 日はいつもどおりに暮れていく
京都 岸本和子

ウイルスも生物なんだ生きる先人に求めてコロナ感染
諏訪 伊藤泰夫

青空を見ながら駆け巡る妄想 絡まりあった糸は解けてゆく
原 泉ののか

二月の雨ザーザーボトボト地を叩く枯れ葉の中から春の扉
原 桜井貴美代

けさはくもり空 向かい側のカラマツの先が白く見える 霧氷だ
原 森樹ひかる

根付きの大きな切り株 育ての土と別れゴツゴツした姿を表す
原 太田則子

信州に移住して登山が好きは本当だったのか 山はいつもそこにあるのに
原 北中一美

一九九五年一月十七日阪神淡路大震災 二か月後私は上海駐在員
大阪 加藤邦昭

孫からの一言だけのメールくるステップするようにさあ散歩
岡谷 白鳥真砂子

二十一世紀の黒いハムレット 美しい苦悩の表情は演技か若さか
熱海 石川とみ

退院から3カ月経ったから肺のCTを撮ってみようと誘われる
仙台 狩野和紀

ユンボでなぎ倒される農林研究団地の並木 何の樹に対する愛情も無く
つくば 辻倶歓

腰痛で通院長き我なれど老人の持病いくつまで続くや
下諏訪 小島啓一

湖面を渡り来る群青の波が立春の風を運んでくる
諏訪 増田ときえ

春先の雪はうれしい直ぐ消える 短歌詠めます梅咲く便りも
小浜 川嶋和雄

挨拶をして互いに小首をかしげる 誰だったけ
福岡 吉田桂子

世間さま承知之介の非常識奇想天外わが放れ技
京都 石田天祐

ハンガーに我の服を吊り今日免業の三畳の部屋
熊本 星満天

コロナからのがれる知恵は三密か外出自粛の世界は孤愁か
明石 池たけし

人生あっと言うまに晩年期 あと何年が生きられる道か
東京 上村茗

賛美して心の重荷振り落としポツポツピアノでも主に聞かれてる
牛久 南村かおり

孫三人玄関に立つ新学期 三様三色生かして学べ
東京 木下海龍

チェロの音色 たまにはいいね癒されて眠りにつく
下諏訪 光本恵子