太陽はいま(未来山脈 2021年10月号より抜粋)

一年が倍速となる古希からの約束の旅コロナが阻む
一関 貝沼正子

大きな顔にも皴が増えた 七夕の雨に遺恨は無い
松山 三好春冥

猛禽類のカイトくるりくるりと宙を舞う夏空は青くて稲田は緑
京都 毛利さち子

斜め下に傾けたまつ毛がコロンと落ちてく彼女の涙
諏訪 藤森あゆ美

季節の空は心を映す 母とのいさかいなんてちっちゃな事
横浜 福長英司

初夏の信州はまた良い残雪の仙丈に鯉幟まさに絵画だ
箕輪 市川光男

要支援二が要介護一になりデイが二か所にリハビリオレンジに行く
飯田 中田多勢子

おや手の消毒する人もしない人も デパ地下出入り口の自由という罪
愛知 川瀬すみ子

青田の中に鷺数羽のんびりと夏祭りの相談か
諏訪 増田ときえ

夏祭り中止節の大きいささくれた男の手が柏手を打つせめてものお参り
福岡 吉田桂子

ベランダに毛虫を咥えて来たシジュウカラ私と目が会い慌てふためく
原 桜井貴美代

朽ち果てる野菜前にして「ごめんね」と語りかける なすすべもなく
原 江崎恵子

すっきりしない五輪開催 世論を反映せず得るものは何か
原 太田則子

青空にくっりきり八ヶ岳 入道雲むくむく孫を待つ
原 泉ののか

人って簡単に死んでしまうもんだねと突然に夫を亡くした友
原 森樹ひかる

ブロック塀に張りつくノウゼンカズラ オリンピックアスリートのよう
下諏訪 藤森静代

窓辺の秘めたセントポーリアとめどなく過去をたぐり寄せている
札幌 西沢賢造

八卦見は言う 夫は生涯三回普請すると 誰も信じなかった
米子 大塚典子

ワクチンを打ったといえど侮るな先が見えない世の中である
諏訪 伊藤泰夫

私のあこがれのSさん人生の終い方も完璧私も近づく様に努めたい
米子 安田和子

伴侶求め泣き尽くす蝉の声束の間の君のロマンを知る人もなく
大阪 高樹邑子

ころんだまた転んだ その刹那脳裏に映し出されるカーペットの角
千曲 中村征子

亡女よ生まれ変わって現れて! この苦しみの生活には耐えられない
つくば 辻倶歓

やや風の強い朝 執筆の部屋に村治佳織のギターは流れ
青森 木村美映

貴女のサポートが私に挑戦する勇気を与えてくれる 前へ進もう
伊那 金丸恵美子