太陽はいま(未来山脈 2022年1月号より抜粋)

氾濫する疑問符に応える感嘆符は幾つありますか やっと秋です
松山 三好春冥

荒物屋の店頭の鎌におう日よ何事もなく暮れるこの街
一関 貝沼正子

斎場に供える花を胸に嫁は泣きながら前を歩く
下諏訪 笠原真由美

バドミントン奥原のポスターに向かってガンバレ 今度は金メダル
箕輪 市川光男

コンバインの埋もれた跡を均す 備中鍬スコップこの老体
木曽 古田鏡三

枕元の明かりに浮かぶ文字たちは表情豊かに語り始める
諏訪 大野良恵

錦秋の十月三十日 慈母の命日十回巡る 享年百三歳の人生行路
大阪 與島利彦

青空の下 自転車をこぐ 地元で棟方志功展 久しぶりの幸せよ
東京 上村茗

八十代のスタートライン 願うことは世界中が平和であるようにと
坂城 宮原志津子

思い思いの表情で信号を渡る解除後の赤提灯を求めて動く人人人
藤井寺 近山紘

りんとした朝の空気にふれたくて卵を買いに走るコンビニ
諏訪 宮坂夏枝

一点の黒い烏に朱点の柿の加筆たくさん我一人で見る
埼玉 木村浩

朝もやの中から浮きでる色 文字の刻まれゆく無・タブララサ
岡谷 白鳥真砂子

暮れ行く秋の山合に爽風に煽られながら飛び交う赤トンボ
東京 赤穂正広

小さいムラサキシキブは実を付けて 紅葉待つかなそれとも雪を
小浜 川嶋和雄

善光寺が草津温泉より下に見られることはないか紅葉が迫る
群馬 剣持政幸

通り過ぎていたキウイフルーツの葉に触れる 大きい大きい
千曲 中村征子

里山で竜胆を手折ってみたいそれだけの夢も無謀と嗤うか車イス
大阪 高木邑子

生理前の女の子みたいなこと言うんだねってアナタ 華は明日咲くはず
岡谷 今井菜々美

しばらく静かだった氏子たち七年目となれば血がさわぐ御柱祭
諏訪 宮坂きみゑ

県内歌壇の役職引退で降ってきたカルチャー講師というお仕事
青森 木村美映

数年に一度の皆既月食 必ず思い出すのは娘を生んだ日のこと
流山 佐倉玲奈

母親・花子は飛び越えられぬ存在 私は小さな魂を精一杯膨らませて生きてきた
福岡 吉田桂子

雨音で寝入り雨音で目覚める どこかに虹が出るのだろう
札幌 西沢賢造

殺したいくらいの恋がしたいねえ身に余るほどの色滾らせて
北海道 吉田匡希

人と人 物理的距離 こころの距離 コロナ禍を機に見つめ直してみる
神奈川 別府直之

連山は冠雪居間にハイビスカスが咲いた 葉も淡い紅葉に
松本 金井宏素