太陽はいま(未来山脈2022年4月号より抜粋).txt

冬衣を纏う八ヶ岳の峰々を桜色に染める冬至の夕日
岡谷 三枝弓子

あんなにもあんなにもこだわってたのに 共通テスト古文漢文むずかし
京都 岸本和子

既婚者になって間もなく私の名は蝕まれそして砂漠の砂
諏訪 藤森あゆ美

揺るぎない一日の心の澱を吐き捨て思いを積み重ねる
札幌 西沢賢造

戸を叩く声!! 何?と外へ出ると山小屋から炎が
福知山 東山えい子

いつまでと分からぬものに戦きて大寒の日本赤くふるえる
一関 貝沼正子

寒入りし御神渡り見守る宮司らのたゆまぬ努力を讃えたい
下諏訪 藤森静代

寂聴尼が呼ぶように慎太郎が逝くチャーミングな笑みに善悪を精算
群馬 剣持政幸

毅然と咲く水仙にオミクロン株位でうろたえるなと諭される
北九州 大内美智子

大股で急ぎ足がいつの間にか小股でゆっくり気合を入れる
米子 角田次代

風の皴しっそり揺れる朝 小鳥が三羽 窓の向こう
富田林 木村安夜子

TV“サンドのお風呂…”ゲストの歌舞伎役者にチャンネル合わす
米子 大塚典子

感染四億死者六百万のコロナ世界大戦終戦はいつ
大阪 山崎輝男

陽射しが我が家の床暖房 コロナ禍二度目の新しい年
諏訪 増田ときえ

夫の友の賀状に断捨離を始めたとあり私達も始めることにする
米子 安田和子

イチゴのキャンディー口移しする都会の吐息に身をよじらせて
岡谷 今井菜々美

三十年剪定作業で着てきたジャンパーは穴だらけ でも今年も着た
箕輪 市川光男

リースを外して寒々とした壁に丸い日焼けの跡が残る
諏訪 大野良恵

節分が近くなれば恵方巻 新聞チラシは食欲そそる
小浜 川嶋和雄

お~ぉ寒いさぶ~い 大寒小寒この冬は大入道がやって来た
千曲 中村征子

妻の入院で日常が崩れるひんやりとした夜のいつもと違う空間
藤井寺 近山紘

実家から届く可愛い一人前の御節料理 大晦日 朝杯はリキュール
諏訪 河西巳恵子

初詣くだる階段うしろから我につきくるわれの足音
横浜 川平正一

コロナ終息どころかますます猛威を奮ってついに三年目に突入
東京 赤穂正広

歌に出せない苦しみ 歌にかけない悲しみもある ファジーに書くのは否か
東京 上村茗

寒風に舞い上がる枯葉たち着地を互いにためらうように風と遊ぶ
岡谷 土橋妙子

二十キロ肥料なんとか積んだ 三十キロの米車に乗せてさる娘
木曽 吉田鏡三