素足(未来山脈2023年5月号より抜粋)

日髙のり子プレミアムトークを聞き声優を夢見た若き日を思い出す
岡谷 花岡カヲル

神の田の稲穂の波は黄金の如神宮の森を明るく照らす
さいたま 清水哲

寒さも和らぎ一気に花々が開花とともに訪れる花粉症 目も花もむずむず
流山 佐倉玲奈

十年に一度の大寒波 明日の仕出し料理の心配をしている
鳥取 小田みく

まだ二月の庭は温かそう太陽が 部屋はストーブもっと暑いぞ
小浜 川嶋和雄

被爆した父を探して歩く道 血豆噴く足 渇ききる喉 四歳の夏
東京 相川千恵子

今日はつりでもしよう何がつれるかな? よ! つれた あれ? これは魚じゃなくて人魚だ
岡谷 渡辺昌太

四万十川の味知り尽くしたうなぎ通の漁師がわれに風味くださる
明石 池たけし

笑い声耳でころころ鳴っていて好きだったって光る残像
埼玉 須藤ゆかり

自由を求めるのなら両手を空に高く上げる瞬間が最高潮
仙台 狩野和紀

雪国にきてバイト仲間とスノボ楽しむ ここもう少しの間 春遠し
東京 下沢統馬

イタリアからイスラエルに入る「嘆きの壁」に向かい祈る人たち
横浜 大野みのり

また今日も「能登で地震」のニュース速報 すぐにでも行きたいのに…
京都 岸本和子

猫といて猫の毛ふわふわギュッと抱く 夫婦の透き間におだやかな夜
富田林 木村安夜子

雪原を列車の窓から眺めつつ友と語らい心は青春
原 桜井貴美代

雪の道キツネの足跡は迷路のごと目で追いながら心を読む
原 太田則子

あっ があぁんお茶を撒き散らす怒っているのは膝小僧
原 泉ののか

歌手クミコ聴講券を申込み友人四人で飯田線に乗って駒ヶ根へ
原 森樹ひかる

「巡礼者は前へ!」と司祭に促され祭壇前に並ぶ二十時
青森 木村美映

まさかの訃報 本当にヤバいやつだって志村さんが教えてくれた
神奈川 別府直之

リヤカーでランプを売るおじいさん シベリヤ還りの人と言う
甲府 岩下善啓

巷で噂のメンヘラ教祖 お前よりも私のおっぱいの方が奇麗だ
岡谷 今井菜々美

夫婦の旅の目的はこの目と足で確かめ触れて喜べることだった
諏訪 宮坂きみゑ

天地創造 白壁に飛び散った赤土 春泥が固まって来た
松本 金井宏素

桜散る土手の細道寄り添いて八十路の果ての影二つ
東京 木下海龍

呪いは血に呪いは家に受け継がれそのどちらをも私で絶やす
北海道 吉田匡希

ぽろんぽろん奏でる夢のつづきピアノの意思か手は添えるだけ坂本龍一逝く
下諏訪 光本恵子