二月の火(未来山脈第343号より抜粋)

もう胸シクシクすることはなかろう ラジオが失恋話ししてる
岡谷 唯々野とみよ

緑を残した紅葉美しく競う全山すべての視線が集まる新幹線の車窓
さいたま 山岸花江

玄関を通るたびにポストを覗く あった! 友からの便り一通
米子 角田次代

手入れを失った庭はたちまち伸びやかに自然にもどる
諏訪 関アツ子

リセットして新しい年の始まり七五年前に死んだ祖父の年齢となる
群馬 剣持政幸

しもささぎが豊作だった台風二十二号が通過し棚が倒れた被害にあった
飯田 中田多勢子

年を経て娘からのカーネーション出窓に遠く亡失した夢
札幌 西沢賢造

七月はどんな月だか忘れてないよ! 君の姿が思い浮かぶ
仙台 田草川利晃

木々や花を美しく染め上げ紅葉は落葉して道いっぱい
諏訪 上條富子

乳房をなくした松虫 まさにがんばった私です
成田 松虫

矛盾だらけの大人の世界この歯痒さを学校にぶつける俺無駄は承知
伊那 藤本光男

心が伝わるロボットに介護お願いする時代 中古のロボット待ち遠しい
岡谷 伊藤久恵

中秋の名月さん笑ってください明日を思いわずらうわたしがいることを
岡谷 林朝子

雨天続きの秋彫刻ぽっかり一日好天に訪ねた辰野美術館 郷愁にかられて
岡谷 堀内昭子

大型台風の警報わが家には近くに山もなく海も川もない都市の中だが
東京 保坂妙子

いちほまれ買う白米の旨さかな 淡い塩味ぱくり食べたり
小浜 川嶋和雄

何十年振りか古里のJR駅 ふと目につく看板は”レトロな街”と
岡谷 三澤隆子

黄金色に輝いたひまわりの種が実る山雀が家族で食事大賑やか
岡谷 武田幸子

犬嫌いだった私が犬に好かれるなんて尾をふりふり近寄る柳の木の下
岡谷 横内静子

めったに笑わない人も頬がゆるむ 赤ちゃんパンダ香香を見れば
岡谷 片倉嘉子

香香と命名される赤子のパンダ すくすく育てその輝きの如く
岡谷 金森綾子

クリーム色の薔薇一輪三週間咲いているひとひら散らしまあ健気
岡谷 柴宮みさ子

斎藤佑紀様 みなみ局ないおつとめとってもびじんやさしくゆうが
鹿沼 田村右品

H30年新たな年が始まった今年も一年頑張ろうね
茨木 綱尾守

ともすれば隠れてしまう優しさ 時によって隠れる太陽のように
つくば 辻倶歓

囲いに覆われし別世界のお伽噺の終幕の日
仙台 狩野和紀

大きな時雨虹を茜色に輝く飛行機がくぐりぬける
長野 岩下元啓

新年を想って書く一首 ただそれだけで何故だか幸せになる
滋賀 児嶋文憲

午前六時十五分に起床 朝食はパン テレビを見ていると便気もようす
琴浦 大谷陽子

昭和十六年十二月八日 今までこの日を忘れたことがない真珠湾奇襲
諏訪 宮坂きみゑ

昨日は温州蜜柑を採って息子に運んでもらいござ一杯に拡げる
岡山 廣常ひでを

少年の頃の我が胸に突き刺さる稲妻は機銃掃射さながら
岩手 千葉英雄

深呼吸すると冬の匂いが体中に染み込んでゆく 今日は十一月九日
坂城 宮原志津子

広い舞台 大きなグランドピアノに向かい初演奏の娘 てらいなく堂々と
流山 佐倉玲奈

おじさんは雛の鶏を買い一日中暖めて大きくして産みたての卵
下諏訪 光本恵子