急行列車(未来山脈第350号より抜粋)

流れる星を期待して夜空を見上げる 近づいてきた寒冷前線
岡谷 三枝弓子

トッキョキョカキョク薄明の森に聞こえる朝一番はホトトギス
原 森樹ひかる

伊豆の旅へと娘からのプレゼント潮騒を聞き湯につかる
原 桜井貴美代

紫陽花の多彩な花形を 今年も鑑賞 亡祖母が愛でた古典花
大阪 與島利彦

雨のなか地面をつつく小鳥たち 滴を払い無心についばむ
原 太田則子

キョロキョロと草原にキジの顔が覗く今日も見回りごくろうさま
原 泉ののか

春分の日に雪ってぇー 身をかたくして春を待つ桜のつぼみ達
鳥取 小田みく

貴女はきっと一緒に居る そう想いネガティブを振り切って生きる
つくば 辻倶歓

若い時の生き方や価値観は過ぎた歴史 今を生きるだけ
諏訪 百瀬町子

橋本悦子様 はるのひもあきのひも自動車おひとりびじんおうふく
鹿沼 田村右品

頭上に響くかっこうの声 樹木の合間と空にその姿探す
辰野 里中紗衣

六月五日は環境の日 なぜか地球環境に興味持つ私の誕生日
下諏訪 児島啓一

真白いパラソルパッと広げるように満開の石楠花雨上がりの庭に
岡谷 柴宮みさ子

兄姉揃って出掛ける一番上の兄の七回忌 群馬までは遠くなった
岡谷 横内静子

満開の垂れ桜にライトアップ三日月の闇に菩提寺の風格くっきりと
岡谷 三澤隆子

さわやかな風に吹かれて山芍薬と白根アオイの白の際立つ山里
岡谷 武田幸子

さらさらと野を吹き渡る風の中にいて素直な自分になっている
岡谷 片倉嘉子

山吹の花が咲き鴬の鳴く墓地で磨き、草取り、心を洗う
岡谷 金森綾子

早朝山の会の十五名が大阪金剛山登山のため高速バスで出発する
米子 安田和子

からすのえんどうを知ったのはずっと後 かあさん山羊の土手に絡んでいた
千曲 中村征子

シヤロンストーンは中古の男の胸を鷲摑みして画面の奥で氷の微笑
横浜 上平正一

木漏れ日チラチラチラチラ和室に届いて風は障子に映っている
京都 毛利さち子

午後縁側の椅子でぼんやり 向かいの山を眺めている 空が高い
岡山 廣常ひでを

なんにもしたくない 怠け者になってしまったか 振りだしそうな梅雨
下諏訪 須賀まさ子

清志郎死去で始まる年表の一行後のマイケル・ジャクソン
東京 金澤和剛