太陽はいま(未来山脈第355号より抜粋)

透き間だらけのこころ少し満たして今夜の空 月と土星が近づく
岡谷 三枝弓子

こころ鎮めて詩を書きつづけた何かが言うから仕方がないから
木曽 古田鏡三

出身の違いは一目でわかる 明るいシンプルな挨拶が一日のはじまり
奈良 木下忠彦

文化の日 大阪名所の御堂筋を散策 異常気象で銀杏黄葉大みだれ
大阪 與島利彦

突然義姉から 兄が死んで葬儀も終えたお詣り無用と
福知山 東山えい子

空は青く櫨の葉も赤いのになにか淋しい心これが秋なのか
太田原 鈴木和雄

ポルシェ ベンツが並ぶ一角 ながめながら通る私はママチャリです
東京 上村茗

沈む陽は部屋の奥まで照らしてる もみじ葉映る影は大きい
小浜 川嶋和雄

喜んでもらえる伝わる朗読がいちばん 単独朗読会を勧められる今
下諏訪 須賀まさ子

扇風機が欲しい フェーン現象でむし暑い台風の去ったあと(十月七日)
諏訪 宮坂夏枝

妹に似たのか甥の娘は手紙が好き 大中小の文字 点と丸しっかりつけて
岡谷 佐藤静枝

ウインド越し シルバー過ぎの暮らしをちらりと見て査定する
千住 中村千

「流れる星」を行く 満州の地に沈む真赤な太陽を記憶の底に
千曲 中村征子

父がいて母がいてまりついて遊んだ遠い日の心の暖かさ正月に思う
埼玉 山岸花江

クォークから原子へ 原子から分子へ 分子からDNAへ
青谷 木村草弥

誰もいない教室の机に向かい思いもつかない独白
札幌 西沢賢造

NYの知人から新年のメール 時差を考慮し半日待って返信する
大阪 加藤邦昭

ステージ4と宣告されて二ヵ月クリアした夫と庭のツワブキ並んで愛でる
米子 大塚典子

大草原の中の一本の白装束の人の列が続く私は今順番を待っている
箕輪 市川光男

去年落ちた山茶花の実小さな芽を出したコイツ生きている
藤井寺 近山紘

食用菊が花盛り花弁だけを酢水で茹で甘酢に漬ける赤色に染まる
飯田 中田多勢子

ぞうりがぬげて社の境内を上手に歩けない 髪結って七五三の幼子
茅野 伊東里美子

農高生の手作り蜂蜜と皮付き林檎入りアイス一押し ぴぴっと愛知
愛知 川瀬すみ子

紅葉散る照る陽の中に紅葉散る友の逝きし日二月を刻む
神戸 粟島遥

山陰から山陽を結ぶ伯備線中国山地を越えた途端に太陽がいっぱい
米子 安田和子

夜ふかしがくせになりました サッカー テニス 貴方へのメール
鳥取 小田みく

ひとことで言えば何もない町榛名山北麓の小さな山村
群馬 剣持政幸