ご挨拶

わたしたち「未来山脈」社の仲間は短歌の革新を目指して歌作りに励んでおります。

日本民族の歴史と同じ程の長い伝統が短歌にもある。短歌が脈々と読み継がれてきた背景には、人は自己主張と表現したい願望を時代に即応しながら、持ち続けてきたといえよう。時には、短歌に留まらず派生的に子供を産み落とすように他のジャンルさえ編み出す源となった。例えば、連歌、俳諧、俳句、川柳、狂歌、俚謡なども。
伝統と革新、衰退と復興を繰り返しながら、この一行の詩ー短詩形文学は日本の心のありようを歌に託してきたのである。
文明開化の明治期に、初めて外国の広さと人間尊重の合理的な世界に驚いた。花鳥風月の歌もさることながら、もっと人間の本質に目を向け、本音を主張した歌もいいのだと与謝野晶子、石川啄木らの出現があった。その流れの最先端に口語自由律短歌があったといっても良い。
しかし、短歌文化に根を下ろすには時間が必要であった。特に、文化不毛の戦争は人間らしさを粉々にする。定型にとらわれぬ自由律の名は当局を刺激したことだろう。そういう理由からだろうか?口語自由律短歌は、「第二次世界大戦で破壊的な打撃を受けた。それは短歌界全体にとって試練の時でもあったと思う。
戦後も落ち着き、世界における日本の立場が問われる時代がやってきた。一国のエゴが通らない、いよいよ地球的な視野に経って物事を判断し、思考し、感動する時代が来た。日本の民族詩として読み継がれてきた求心性と主体性を基盤にした短歌。あくまで短歌性とは主語は「私」でありたい。さらに現代語のあるいは英語の韻律なども踏まえ、カタカナ、横文字も交えた短歌が現れてくるだろうと、短歌の将来を予測する。
時代と言葉は切っても切れぬ関係にあり、言葉は時代とともに変化する。何を切り捨て何を残すか?これも歌人に与えられた使命であろう。
短歌が生命の証である限り、歌い継がれていくに違いない。今の自分を大切にすることは、自分の普段、使い慣れている口語で短歌を作ることが現時点での自分を正しく見つめることにつながると思う。既に多くの口語発想短歌も増えている。口語はもっと増えるに違いない。それに伴い破調の歌も増えるであろう。現代語には、現代に備わったリズムがあるのだから。
しかし、あくまでも、短歌であるのだから三十字前後の定量は基調として存続するだろう。もはや文語定型とか口語自由律短歌という分類そのものが無意味で古めかしくなっているのではなかろうか?自分のテリトリーばかり守ろうとしたり、伝統に固執し過ぎると短歌そのものの衰退につながる。
短歌は万人の文学でありたい。どんな生き方であれ、歩いてきた道に無駄というものはない。生ある限り日常のふとした心の動きを、辺りの菜の花や石ころのような自然の言葉で、自分を短歌に文学に託していきたい。

代表 光本恵子の紹介

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星に包まれた山に抱かれ宇宙の呼吸(いき)するひとつの命

湖の街 諏訪よ  (光本恵子歌集「おんなを染めていく」より)

経歴 鳥取県生まれ赤碕中学から米子西高等学校
京都女子大学文学部国文学科卒。
鳥取県で教師。
結婚して信州へ
現在、諏訪湖畔に住む。
短歌歴 小学生時代、叔母の影響で文語定型の短歌に出会う。
大学入学と共に、「女子大短歌」に入部。
宮崎信義「新短歌」に入会。
京都の学生短歌会「幻想派」に入会。
以来、口語自由律短歌を作りつづけて40年余り。
1989年(平成元年) 現代口語短歌誌「未来山脈」を創刊。
信越放送「新短歌入門」(SBC)講義。
中日カルチャセンター「口語短歌」講義。
出版物
  • 光本恵子第一歌集 薄氷
  • 光本恵子第三歌集 おんなを染めていく
  • 光本恵子第四歌集 朝の出発
  • 光本恵子編集 未来山脈  など
受賞
  • 第13回新短歌賞
  • 第20回新短歌人連盟賞
  • 第12回日本文芸大賞新短歌賞(おんなを染めてゆく)
  • 第20回日本文芸大賞短歌評釈賞
  • 下諏訪町功労賞
活動 看護学校、古典文学の会(枕草子、平家物語、武士道)。など