会員の作品

「未来山脈」の会員の作品です。

素足(未来山脈第390号より抜粋)

どうだどうだと迫り来る連峰 八ヶ岳ブルーの空を背負って
岡谷 三枝弓子

人気のない駐車場に秋茜の群れが飛ぶ東の方向に応仁天皇陵の森
藤井寺 近山紘

情け容赦なく降り続く大雨 災害級とテレビが叫ぶ
諏訪 大野良恵

亡命を望む選手と知りもせず試合を観ていたその前日の
下諏訪 笠原真由美

九月の風に鳴く蝉は命を削り声をからして叫んでいる
横浜 上平正一

真っ直ぐに歩もうにも曲がりくねった臍が待ったをかける
仙台 狩野和紀

変わりゆく秋雲に思い巡らし生かされたいちにちに喜びが
下諏訪 藤森静代

未来への夢ある人は不動心かつ希望に満ちて心は広い
明石 池たかし

もうたくさんこれ以上いらない 時空と同一歩調の新しきもの
千曲 中村征子

「サンタなんていないんだよ」魔女は私に真実を教えた
山梨 岩下善啓

ひとりぼっちに耐えて一日一日を生きる 苦しみの中耐えている
つくば 辻倶歓

空を翔ぶ夢をまた見てしまったらおいでそのまま空を歩いて
東京 金澤和剛

水饅頭も美味だけれど水羊羹がいいね 夏を頂いた気がするよ
伊那 金丸恵美子

敬老を祝ってくれる六歳の孫胡蝶庵で抹茶のシュークリーム
諏訪 伊藤泰夫

閉ざしたシャッター ガタガタと台風と共にソッと秋が忍びよる
福岡 吉田桂子

街がネオンの雲海に滲む 近場でオーロラ 魚沼丘陵
群馬 堀口茂樹

ナルキソス水面に恋をしたように汝 汝の文体を愛せよ
北海道 吉田匡希

孫がくれた黒い小さい粒 昨年学校で咲かせた花の種だ
米子 永井悦子

九十四歳の母の手を取り墓まいり あぜのむこうに曼殊沙華
鳥取 小田みく

マニキュアの乾く三分を惜しみ五指を広げて盆器を下げる
岡谷 土橋妙子

空腹で倒れそうだよ枯れ葉たちがみんなおいしいちょうちょに見える
愛知 早良龍平

オーナーチェンジをしようかと妻が話しかける「?」私には意味不明
大阪 加藤邦昭

八つ縄文織は自由に柄をデザインできる 諏訪プレミアム
葉山 別府直之

重篤の友を見舞いて帰る道 蝉の声聞き自分に戻る
東京 木下海龍

濡れた烏が柿を食べに来た黒髪のたとえが懐かしい
埼玉 木村浩

良い季節 でも私はうつ状態 あらぬ疑いをかけられ心がなえている
東京 上村茗

ナナカマドのオレンジは赤に変わりいよいよ寒くなる
下諏訪 光本恵子

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いのち(未来山脈第389号より抜粋)

いのち

炎帝の逆光に信号が見えない かすかに揺れるアドバルーンは赤だ
松山 三好春冥

写真館のあった場所も更地になり子ども時代の風景次次に消える
京都 毛利さち子

さらさらと今朝の空気を吸いながら朝顔のうすむらさき
富田林 木村安夜子

点在する岩の魅力に引かれこの町で黙々と生きることを喜ぼう
群馬 剣持政幸

面会は一切禁止コロナ禍で手術をすると思い決断
諏訪 藤森あゆ美

犠牲にしたすべてを笑顔に閉じ込め華やかに舞う新体操選手
諏訪 大野良恵

わが国の祝祭休日 年間十六日制定 日数の満足度は国民要望次第か
大阪 與島利彦

線状降水帯の渦中に住む令和三年の夏あの恐怖を記録に残さねば
米子 大塚典子

なんとかなると思っている東京五輪 しかし神風は吹かない
箕輪 市川光男

極暑に耐えたすすきの穂先を湖からの秋風がそっと撫でていく
諏訪 増田ときえ

気がつかなかった体の悲鳴 圧迫骨折してきしむ背骨
岡谷 佐藤静枝

自然豊かで住み慣れた我が家は盆正月には子達の別荘になる
下諏訪 小島啓一

フレイル予防体操DVD 健康づくりサロンのルーチンコース
米子 角田次代

伏魔殿を追われた君がゼンマスターに拾われて励んでいる
山梨 岩下善啓

真夏の夕方子供たちの声と蝉の声 音で感じる生きる力
牛久 南村かおり

金メダル目指せどバトン繋がらず 四百リレーの日本男子は
小浜 川嶋和雄

かけつけた隣のインターホンは応答 家だけが雷に狙撃される
千曲 中村征子

コロナ禍で二年が空いたステージはツーマン お客の入りも上々
青森 木村美映

全世界の人々に期待され全てを飲み込んだ君は何も知りたくなかったと叫んだ
岡谷 今井菜々美

七年もの間地中のセミたち 去りゆく夏を惜しむか鳴声の競演
坂城 宮原志津子

幸せになりたい 顕在する幸せも存在する筈
つくば 辻倶歓

百日紅が夏の日差しを受けそよ風にゆれて赤く咲いて居る
諏訪 宮坂きみゑ

近所から一時間後位に月下美人が咲きそうと連絡がくる
米子 安田和子

自立して数年経つ愛息子 休日に度々来ては寝溜めしていく
小平 桐野千夏

終わるはずだった夏休みはちゃんと終わらず 続くはずだった夏は突然終わった
流山 佐倉玲奈

掘って刈りとり尚生きる草 今を捨てさろう明日のために
木曽 古田鏡三

主なき空家こわされのびのび育った草たち刈り取られ土だけになった
東京 上村茗

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太陽はいま(未来山脈第388号より抜粋)

一年が倍速となる古希からの約束の旅コロナが阻む
一関 貝沼正子

大きな顔にも皴が増えた 七夕の雨に遺恨は無い
松山 三好春冥

猛禽類のカイトくるりくるりと宙を舞う夏空は青くて稲田は緑
京都 毛利さち子

斜め下に傾けたまつ毛がコロンと落ちてく彼女の涙
諏訪 藤森あゆ美

季節の空は心を映す 母とのいさかいなんてちっちゃな事
横浜 福長英司

初夏の信州はまた良い残雪の仙丈に鯉幟まさに絵画だ
箕輪 市川光男

要支援二が要介護一になりデイが二か所にリハビリオレンジに行く
飯田 中田多勢子

おや手の消毒する人もしない人も デパ地下出入り口の自由という罪
愛知 川瀬すみ子

青田の中に鷺数羽のんびりと夏祭りの相談か
諏訪 増田ときえ

夏祭り中止節の大きいささくれた男の手が柏手を打つせめてものお参り
福岡 吉田桂子

ベランダに毛虫を咥えて来たシジュウカラ私と目が会い慌てふためく
原 桜井貴美代

朽ち果てる野菜前にして「ごめんね」と語りかける なすすべもなく
原 江崎恵子

すっきりしない五輪開催 世論を反映せず得るものは何か
原 太田則子

青空にくっりきり八ヶ岳 入道雲むくむく孫を待つ
原 泉ののか

人って簡単に死んでしまうもんだねと突然に夫を亡くした友
原 森樹ひかる

ブロック塀に張りつくノウゼンカズラ オリンピックアスリートのよう
下諏訪 藤森静代

窓辺の秘めたセントポーリアとめどなく過去をたぐり寄せている
札幌 西沢賢造

八卦見は言う 夫は生涯三回普請すると 誰も信じなかった
米子 大塚典子

ワクチンを打ったといえど侮るな先が見えない世の中である
諏訪 伊藤泰夫

私のあこがれのSさん人生の終い方も完璧私も近づく様に努めたい
米子 安田和子

伴侶求め泣き尽くす蝉の声束の間の君のロマンを知る人もなく
大阪 高樹邑子

ころんだまた転んだ その刹那脳裏に映し出されるカーペットの角
千曲 中村征子

亡女よ生まれ変わって現れて! この苦しみの生活には耐えられない
つくば 辻倶歓

やや風の強い朝 執筆の部屋に村治佳織のギターは流れ
青森 木村美映

貴女のサポートが私に挑戦する勇気を与えてくれる 前へ進もう
伊那 金丸恵美子

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素足(未来山脈第387号より抜粋)

薄もも色の夏のワンピースは刺繍入り ベンチに座る私は十歳
下諏訪 中西まさこ

風呂に入り新品のシャツに着替えたり 明日はコロナワクチン接種日
小浜 川嶋和雄

歌友に押し上げてもらって上りきる米子城跡 七十五歳のデビュー
米子 永井悦子

ウイルスめ ワクチン接種に殺到する群衆を見てせせら笑うか
さいたま 清水哲

一枚の葉っぱを切り抜いた動物たちの世界 それが葉っぱ切り絵
福山 杉原真理子

見学者一人限りの運動会 ネット観戦してくれとの味気無さ
大阪 山崎輝男

爽やかなカッコウの泣き声を聞き晴れ晴れ見上げる電線の上
岡谷 金森綾子

白き壁のごと咲き誇った梅花うつぎ 今年は花は無く
岡谷 三澤隆子

五月雨の最中当選のアルストロメリア 光差すように届く
岡谷 柴宮みさ子

山の畑の杏たち遅霜で全滅! 「一目百万本」で有名な産地へ買い出しに
坂城 宮原志津子

郭公よ どうして朝から晩まで泣き続ける 疲れないか
岡谷 横内静子

青梅がトタン屋根にコツンと落ちて梅仕事の始まりを告げる
岡谷 片倉嘉子

風にのり電車が音を運びくるスーパーあずさの旅すら夢の夢
下諏訪 藤森静代

坂道を妻のせ軋む車椅子やっとついたら「本日休診」
横浜 上平正一

仁と義を謳う戦国小説に没頭すれば我は旅人
仙台 狩野和紀

幸せを遠くに求め過ぎていたのかも 案外近くに在るのかもしれない幸せ
つくば 辻倶歓

日本で開催中のオリンピックは私もテレビで視聴するだけに
下諏訪 小島啓一

おそるべしコロナ菌 百年続いたわが店と料亭におそいかかる
鳥取 小田みく

打ち合わせ 商談だってオンライン 用件済めばすぐに退出
神奈川 別府直之

北朝鮮将官の上着全面べったりの勲章 理解に苦しむ彼らの美意識
大田原 鈴木和雄

血糖値の検査で始まり検査で終わる病床日記 笑顔で書きたい
米子 稲田寿子

血に染めてしまいましたね 気を取り戻して 元のようにします
東京 久保田万作

永遠に来ない電車 何者にもなれなかった者の街 私は駅長をしています
岡谷 今井菜々美

魔物が支配する妖怪地の伏魔殿 幼稚で変てこな暴力帝国 魔物は誰からも忘れられたが
山梨 岩下善啓

日々増えていく感染者 ワクチン接種をと言うけれど予約は止まったまま
流山 佐倉玲奈

リヤカー引いて緩やかな坂道を上るのが人生 休むのにも力が要る
群馬 堀口茂樹

夏草茂る丘いくさに潰えた画学生達の夢の欠片
熱海 石川とみ

気温が三十度を超えた日の十一階までの階段も迷うことなく登り始める
大阪 加藤邦昭

神風の子として生まれた俺たちは生まれた時から罪の子だった
北海道 吉田匡希

グラス落ち砕ける言葉拾い上げパズル合わせに日暮れも知らず
東京 木下海龍

耐えられぬ暑さの予感させる あと一週間で夏休み
横浜 大野みのり

家付き娘の私 養子に入ってくれた夫も亡くなりいま独り
茅野 平澤元子

三十年あっというまの三十年 振りかえる今 思う後悔
東京 上村茗

この暑さとオリンピックが終わるまでは静かに自粛生活の僕です
東京 天野敏光

親鳥は厳しく時に子鳶を突き放し 電柱のてっぺん ぴーひょうろろ
下諏訪 光本恵子

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いのち(未来山脈第386号より抜粋)

月初めの手帳に記す締切日四月のリズムまた動き出す
一関 貝沼正子

何もかも黒装束に身を包み夜の闇を駆け抜ける謎の集団
群馬 剣持政幸

藍色の八ヶ岳を望む高原 特大の木苺のソフトクリームは今日の幸せ
岡谷 三枝弓子

母の日にサンパチェンスをプレゼント苗木育てる妻の喜び
諏訪 伊藤泰夫

高砂百合は長雨の日々を咲き次いで香り少なき花の矜持
下諏訪 笠原真由美

夢まくら大阪文学校時代 田辺聖子講師の学徒動員体験談 悲涙
大阪 與島俊彦

いつも寝ころがっていた爺が春! ピョンと起き田の準備始めた
福知山 東山えい子

加茂川散歩 来たに行こうか南へ行こうか 今日は南に行く気分
京都 岸本和子

今年も山友からバラが咲いたので観に来てと案内があった
米子 安田和子

歌友たちの短歌から爽やかで意志的な生活ぶり 何をしているのか私
下諏訪 須賀まさ子

生きている意味が分からない 分からずとも良い 生きている
つくば 辻倶歓

春に晒された清々しい朝の風封じられた扉を開く
札幌 西沢賢造

宅老所かけはし レクリエーションは諺かるたを字でなく絵で拾う
飯田 中田多勢子

五月までの連休までに茄子トマト胡瓜の植え付けは一応終わる
岡谷 花岡カヲル

一段上の君に追いつかないエスカレーター
埼玉 木村浩

母の日のお花が全て売り切れ いただけたのは猫の置物
牛久 南村かおり

笠松からの二十年ぶりの便りには溢れんばかりの情愛の波
仙台 狩野和紀

自らの重みに敢えなくぽきり拳大の真っ赤な八重のチューリップ
岡谷 柴宮みさ子

手が入れられず減らしている植物なれどコロナ禍では世話も楽しむ
岡谷 横内静子

耕す畑によみがえる土の温もり仰ぐ空に陽の暖かさ
岡谷 三澤隆子

真白な紫陽花の名はコットンキャンディー 優しく包み込まれる
岡谷 片倉嘉子

桟橋の釣り人並び楽しげな声そこが居場所ですか男の人の
岡谷 金森綾子

腰癒えて新しい靴を買いに行き未来へ一歩踏み出していく
福山 杉原真理子

雨上がり緩やかなカーブを描き群生の葉蘭つややか
米子 笹鹿啓子

バラよ並んで誰まつの逢いに来た二度目のバラ園ここは安曇野
木曽 古田鏡三

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太陽はいま(未来山脈第385号より抜粋)

花冷えの街路を突風が疾る花吹雪が後を追ってゆく
京都 毛利さち子

潔癖が日常となるコロナ禍に人間不信の川が渦巻く
一関 貝沼正子

憑かれたように戦争に向かうドラマ ふと終戦後を思いだす
奈良 木下忠彦

ちょっと疲れたって言っていいかな 仲間は高齢 ひとり直販
福知山 東山えい子

コロナで延び延びにして来た入院・手術 日が決まれば緊急事態宣言
大阪 加藤邦昭

また逢えた歓びに街の灯がうるむ 待ちわびるパンデミック終りの宣言
富田林 木村安夜子

どちらと言えば「不要不急」の手術 後押ししたのは個室です
愛知 川瀬すみ子

むかし 私には「いい人」がいた 私が「いいコ」だったのかな 彼の
下諏訪 中西まさこ

町内も世代交代新築増えて古い家には古い人住む
北九州 大内美智子

畔を塗り田植えの準備 里山は春から夏の模様替え
群馬 剣持政幸

今日も来たアゲハのつがい羽ばたいて撒き水の植木に渡り飛ぶ
大阪 山崎輝男

隣の奥さんも朝からはりついているのにダメだとラインの着信
米子 安田和子

やまゆり園で採火式ってなんの事弔うための場所だったでしょ
横浜 福長英司

山の土運んだ我が家の庭山は 山ゆり芽生え蕗の葉揺れる
小浜 川嶋和雄

妹が短歌を始めた 日々のラインで送られてくるたくさんのうた
諏訪 宮坂夏枝

一時間ごとに伸びるほど成長の早い藤の花をかけはしの窓から見る
飯田 中田多勢子

呼んでも呼んでも 待っても待っても何処にも居ない ハウルは旅に出た
長野 岩下善啓

節句と重なる夫の月命日 花のご馳走と仏壇のお供で和室は凛と
米子 大塚典子

上京してまだ一週間の息子にもう張り切って仕送りする私
諏訪 大野良恵

さぁできた 印刷実行するもガタガタと空回りの音やまず
米子 笹鹿啓子

白鳥が黒鳥と華麗に舞うロイヤルバレー「尼寺にお行きやれ」
大田原 鈴木和雄

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いのち(未来山脈第384号より抜粋)

露見してもいいしどうでも構わない 鱈ときのこ二種のチーズ焼き
東京 金澤和剛

古い同窓会名簿を開くと校歌が聞こえる モノクロの時空を超えて
松山 三好春冥

大震災忘れぬように来る余震夜半の震度5身構える耳
一関 貝沼正子

震災十年経たドキュメント多くの死と生のままならぬ風景
札幌 西沢賢造

沈む月に火星が寄り添い大接近 この朝地球から使者が火星におりた
岡谷 三枝弓子

言った人忘れ言われし我覚えている 花はひとりで咲いて散る
木曽 古田鏡三

中村光夫のパリからエアメール モスクワからの絵葉書 今ここに
下諏訪 中西まさこ

カーテンの閉ざされた家にも背伸びの水仙が咲く 眺めるはわたし
下諏訪 藤森静代

忘れることが下手だから春の景色を引っ繰り返して見ただけさ
横浜 上平正一

諏訪の殿様は水城高島城を築き敵からの守りを固めた
岡谷 花岡カヲル

青空が見つめている 僕も青空を見つめている
つくば 辻倶歓

十年前の震災の日 電車は止まり娘は徒歩で深夜に帰る(東京)
原 泉ののか

ウグイスの啼く声を聞き目が覚める高原にもかけ足の春
原 桜井貴美代

雨後の霜柱逞しく成長 背伸びをしたり腕太になったり
原 太田則子

春が口の中にふんわりと入ったよ 今年も一番のりはふきのとう
原 森樹ひかる

気が付けば我も我もと一斉に場所取りをする雑草たち
原 北中ひとみ

マンネリの歌を戒しめ背もたれの椅子ゆすぶって見る八ヶ岳の峰々
岡谷 土橋妙子

飲むか呑まないか文字も決まらない 自分の背にせつかれ服す薬
千曲 中村征子

香り満ちて沈丁花 星のつぼみが私を見つめる雨の中
鳥取 小田みく

生きたいのか死にたいのかどっちかはっきりして長生きでいい
東京 久保田万作

颯爽と走る若人金の汗髪なびかせてハラリと飛ばす
仙台 狩野和紀

大きな蕗の薹摘み二人で旬を味わう幸せ
諏訪 宮坂きみゑ

ママは仕事を始めたのかと問う息子 僕は預かり保育は行きたくない
流山 佐倉玲奈

今日から「初めて」の連続が始まる 東京へ引っ越す息子の出発点
諏訪 大野良恵

土手のすみれにたんぽぽからすのえんどう 風に吹かれて居眠りしてる
京都 岸本和子

山陰随一の名城と称された米子城 切込接の石垣が歴史を語る
米子 角田次代

ひ孫の息子が二十歳の成人式を迎えた 目の前に現れたすらりとした身長
東京 保坂妙子

赤ムラサキ黄色と春の花の道を歩む 歌いながらルンルンと
米子 笹鹿啓子

眠る三男の手を握りしめるぷっくりと包み込めないほどの大きさ
諏訪 藤森あゆ美

 

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素足(未来山脈第383号より抜粋)

きみが最後のひとりだった星の光が今宵わたしの街にとどく
下諏訪 笠原真由美

来し方を悔い行く末を憂い鬱々 日はいつもどおりに暮れていく
京都 岸本和子

ウイルスも生物なんだ生きる先人に求めてコロナ感染
諏訪 伊藤泰夫

青空を見ながら駆け巡る妄想 絡まりあった糸は解けてゆく
原 泉ののか

二月の雨ザーザーボトボト地を叩く枯れ葉の中から春の扉
原 桜井貴美代

けさはくもり空 向かい側のカラマツの先が白く見える 霧氷だ
原 森樹ひかる

根付きの大きな切り株 育ての土と別れゴツゴツした姿を表す
原 太田則子

信州に移住して登山が好きは本当だったのか 山はいつもそこにあるのに
原 北中一美

一九九五年一月十七日阪神淡路大震災 二か月後私は上海駐在員
大阪 加藤邦昭

孫からの一言だけのメールくるステップするようにさあ散歩
岡谷 白鳥真砂子

二十一世紀の黒いハムレット 美しい苦悩の表情は演技か若さか
熱海 石川とみ

退院から3カ月経ったから肺のCTを撮ってみようと誘われる
仙台 狩野和紀

ユンボでなぎ倒される農林研究団地の並木 何の樹に対する愛情も無く
つくば 辻倶歓

腰痛で通院長き我なれど老人の持病いくつまで続くや
下諏訪 小島啓一

湖面を渡り来る群青の波が立春の風を運んでくる
諏訪 増田ときえ

春先の雪はうれしい直ぐ消える 短歌詠めます梅咲く便りも
小浜 川嶋和雄

挨拶をして互いに小首をかしげる 誰だったけ
福岡 吉田桂子

世間さま承知之介の非常識奇想天外わが放れ技
京都 石田天祐

ハンガーに我の服を吊り今日免業の三畳の部屋
熊本 星満天

コロナからのがれる知恵は三密か外出自粛の世界は孤愁か
明石 池たけし

人生あっと言うまに晩年期 あと何年が生きられる道か
東京 上村茗

賛美して心の重荷振り落としポツポツピアノでも主に聞かれてる
牛久 南村かおり

孫三人玄関に立つ新学期 三様三色生かして学べ
東京 木下海龍

チェロの音色 たまにはいいね癒されて眠りにつく
下諏訪 光本恵子

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太陽は今(未来山脈第382号より抜粋)

まだ見ぬ人を思い少しの緊張と少しの期待と小さな落胆もあったか
藤井寺 近山紘

ダイエットは食べる順序という息子まず山盛りのコールスロー食む
一関 貝沼正子

寒冷地に冬は近づき鉢植えの三十数個を屋内に運ぶ
下諏訪 笠原真由美

あの人の賀状届かず寒の入り何があったと安否気遣う
横浜 福長英司

まるッとちぢんで安堵する イメージの中の私今日はダンゴ虫
京都 毛利さち子

集まればどうしても一緒に食べるからキャンセルしてね今度の法事
下諏訪 中西まさこ

台風で倒れたブナの老木 日が差しこみいま若芽をスクッと伸ばす
岡谷 横内静子

白鳥V字乱れぬ隊列飛行 北アルプスの大空に主となり
岡谷 三澤隆子

願い事三回唱える時間ある人工流れ星 二年後の打ち上げ待ち遠しい
岡谷 柴宮みさ子

感染者が減ったと油断できぬ 変異とやらで攻めてくる敵は手ごわいぞ
大阪 高木邑子

年始めのサプライズ“鬼滅の刃”二十三冊贈られる
岡谷 金森綾子

湯上りに皮をむく孫の指先からみかんの香りが部屋に広がる
岡谷 片倉嘉子

ゆっくりと朝食 新聞見てもてあます時間 コロナ禍の生活
鳥取 小田みく

鳥インフルエンザ ざくざくっと養鶏場の殺処分続くこのころ
愛知 川瀬すみ子

腰曲がりのおぼつかなくなった母八十五歳の今を生ききる
群馬 剣持政幸

にきびのあるおでこを真剣に洗う 息子の無防備な幼顔
諏訪 大野良恵

拾い集めた柿の葉をキレイきれいと笑い合う姉の晩年私の晩年
岡谷 土橋妙子

大寒の夜 満月のウルフムーン見上げてさまざまな思いを巡らす
下諏訪 藤森静代

元旦に郵便局のアルバイト我が子の経験今に輝く
諏訪 伊藤泰夫

年末で夫が家の風呂に入る 宅老所かけはしで入浴してくるけれど
飯田 中田多勢子

今日一日を健やかにすごすほどの小さな願い 老いの現身
奈良 木下忠彦

温故知新が座右の銘 ギリギリのところで折り合いつける我が家の伝統
米子 大塚典子

年末のスカイブルーの空コロナ禍を忘れさせるほどの新鮮な広がり
岡谷 三枝弓子

正月三日おみくじは吉 大吉と大凶の仲を取り持つ
松山 三好春冥

どしんと焼き鯖が送られて来た北陸の小浜から 新短歌の人って凄い
大田原 鈴木和雄

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素足(未来山脈第381号より抜粋)

雷鳴とどろきあられの音して雪の予報の朝に目を覚ます
札幌 西沢賢造

今まで通りでいい オンオフで足りるのにやかましい進化
千曲 中村征子

ゴーッと地が鳴りキノコ雲が立ち上がる「撤退しろ!」と無線の叫び
下諏訪 笠原真由美

寒風を背に千曲川のせせらぎを聞く 年明けの初歩き五千八百歩
坂城 宮原志津子

八十路の我はワープロで作歌 昔の文明の機器は老人の杖だよ
下諏訪 小島啓一

ひみことはやまたいこくか日本の創造主は女帝なのか
神戸 池たけし

空も湖も澄んだ青 八ヶ岳は雪化粧して見下ろしている
岡谷 花岡カヲル

川中美幸や細川たかしは素朴私なんかでも話しかけてくれる
箕輪 市川光男

拭くたびに私を映す鏡は口角上げて老をつくろう女の見栄
岡谷 土橋妙子

二人からプロポーズ受けし走る馬のたてがみのように心が揺れる
埼玉 清水哲

結婚して夫が作ってくれという朝鮮漬け 食べたことがない
岡谷 武井美紀子

Yarukiを持ち合わせてるかそれで決まる尽くせぬYaruki希望します
東京 久保田万作

精一杯生きて潰れた人を非難できない 頑張れとはもう言えない
つくば 辻倶歓

ホカホカの炬燵に屈託なく笑う夫婦 あたしも支えるよ
富田林 木村安夜子

助けを呼ぶこともなく塩をなめ水を飲みつつ餓死する二人あり
神戸 粟島遥

我が君とハウルが同じキンナンバーとは 声が出るほど驚いた
山梨 岩下義啓

時間がたっぷりあった学生時代 貧乏旅行のお供はいつでも青春18きっぷ
流山 佐倉玲奈

壇上で一列に並んで万歳と手を上げる 誓いを新たに真剣な目
熱海 石川とみ

頬がやさしい目が優しい白髪の箒職人確かな手元へのこれは恋か
岡谷 唯々野とみよ

叔母が逝き生家の家系で年長となり自覚と寂しさ
北九州 大内美智子

節分は二月二日 福は内コロナ外 笑いあって二人だけの豆まき
松本 金井宏素

コロナにかかり長い入院 退院したけれど本当に回復するのか
埼玉 赤坂友

日曜日ラジオの音楽聞きながら 仏画に向かうお気に入りの時間
下諏訪 今井恵子

長い階段はS字形に登る 大袈裟だがこれが私の生きる哲学
大阪 加藤邦昭

君とのお話は秘密心の奥に仕舞うよ 柔らかなボールが飛んで来た
伊那 金丸恵美子

去年今年コロナ禍の世に光あれ逝きしも遺るも魂魄(ブシューケー)違わず
東京 木下海龍

「明るい心」そのように過ごそうと孫の書初めを部屋に貼る
米子 笹鹿啓子

なんと優雅な小鳥の舞か ダンシングの指揮者はどなた
下諏訪 光本恵子

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