会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
素足(未来山脈2025年11月号より抜粋)
- 2025年11月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 日本の地下のマグマも吹き出すか猛暑日予報の赤い天気図
- アスファルトの熱気に負けずオニノゲシ猛暑の歩道へギザギザ伸ばす
箕輪 市川光男
- 太陽さんやっとお目覚めかい私はもう草刈りを終えたよと手を合わす
- 七月の太陽は朝からギラギラ畑の仕事は草々に終えてさあビールだ
岡谷 花岡カヲル
- 背高のっぽの赤いバラ湖風にふかれて坪庭を賑わす
- 血圧の薬を飲んでいる私 奈良漬を漬けると娘は嘆く
青森 木村美映
- 二十代は脱色・染色を繰り返し気づいたら髪がなくなっていた
- 還暦間近・未婚独身いまさらにウイッグなんてかぶる気もな
愛知 稲垣嘉子
- 義父さんあなたの息子も車椅子ですハンサムだった遺影に告える
- もっと力出してよ夫よベッドより車椅子の移動大変だあ
近江八幡 芦田文代
- 塗り重なった文字の看板が話しかける その商のむかし昔
- ホーローの看板は錆びてる ぼんやりした灯は残る八百屋
東京 桃谷具久夫
- 蝉一匹平和の森で歌ってる心に響く初のテノール
- 油蝉夜明け前から気張り鳴く帰る行く人ともかくファック
札幌 西沢賢造
- 鼻の酸素チューブはずれ覚めて知らずに逝ってしまうのか「ハレルヤ」
- 「悟ったようなことなど言わないで」と五十インチのテレビが届いた
飯田 中田多勢子
- 大宮諏訪神社秋季祭典を二十三日神社や大宮通り桜並木一帯で繰り広げ
- 同神社は東野全域橋北・橋南一部三十ヵ町一五〇〇世帯を氏子とする
千曲 中村征子
- 降りる沸く 天から地から 雨の一滴と入れかわる虫の演奏家たち
- 胡瓜から涙がポタポタ 大事にしすぎたせっかくのいただき物
仙台 狩野和紀
- 手の届きそうにない事を適えようとする願いが若さの秘訣
- 人の物ほど良く見えても鏡と睨めっこして諦めるのが一番
さいたま 清水哲
- 医大の教授は「血圧は?」測定リストを見せ「薬は出しません」
- 心臓に二つのポンプあり 一日に一〇八〇〇〇回打つ働きにただ深く感謝
横浜 上平正一
- どこかで夜汽車がくしゃみしながら走ってるね ウンウン
- 夜汽車が何か食べ物を探してるみたいだね ウン ウン
東京 木下海龍
- なんとかあと二年は生きて居ようと思って励んでおります
- 九十一歳になるといろいろと身体の限界も感じている日々
群馬 剣持政幸
- 昔梓志乃が歌ったカラオケが脳裏を掠めるラブホの空間
- 既婚男性は年上の部下ハーレムな寝言の前に聞いておけ
松本 金井宏素
- 山稜を赤く染めて日が昇る 視界から生物の気配が消えた神無月
- 物心ついたころから時計はこの柱に掛かっていた 思えば長い道程だった
流山 佐倉玲奈
- 十月にもなるのに今日も暑い それでも朝晩は涼風
- 昨年は出られなかった体育祭に今年は百mを全力で駆け抜ける
山梨 岩下善啓
- 増穂登り窯で零時から六時 ひとり窯焚き当番
- 久しぶりの徹夜 六時間ひとりで登り窯に薪を焚べる
下諏訪 光本恵子
- 木の実がいっぱい落ちている公園 人と熊の共存はありえないというが
- 熊のやさしい目が気にかかる熊と人間の共存など 雲が笑っている
太陽はいま(未来山脈2025年10月号より抜粋)
- 2025年10月1日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- 心地よき水の温度に染付の器十客すすげば至福
- 白いスニーカーで歩くモール キャンディのような夏菊の束を買う
米子 角田次代
- 朝からうきうき今日は友の家で四人のお茶会 お久しぶり
- お手本のような友のおもてなしはいつもながらに学びの時
藤井寺 近山紘
- 激しい雨溢れる水滝の様に流れる大川の橋桁の危うさ
- 東の空の雲が切れて真っ青な空が顔を出す初めての蝉の声届く
岡谷 三枝弓子
- 辞書でというとスマホが早いと云う人時代にとり残されている
- 亡夫が遺した物は消えて百合も絶えたことし私が咲かせる
京都 岸本和子
- 夏至の日の「天声人語」高校語資料集大人の間で異例の売れ行きと
- 高校で芳しくなければ視点を変える知恵と勇気が必要だったのだ
岡谷 片倉嘉子
- 一本のねじ花の茎が伸びてもうすぐ咲くのを心待ちにする
- 五センチの茎が三倍も伸びピンクの小花をらせん状につける
岡谷 横内静子
- 朝日を浴びてクオーキング 電柱の上が定位置の鳶に今日も“おはよう”
- 気持ちよりずっと歳をとっている身体に 次々とメスが入って
岡谷 三澤隆子
- 合宿の力士の朝稽古を見る湖畔 光る汗に満面もキラキラ
- 互いにゆずらぬ力士のぶつかりあい 紅さした姫りんご傍らに
下諏訪 長田惠子
- キムチにマヨネーズは邪道ですか おいしいから許してください
- 誇るものがない人は口を閉ざし静かに生きよとあなたは思っている
大阪 花菜菜菜
- 息吸うための理由は きょう今を生きるため 雨よ降って来い
- 小一時間歩く+ラジオ体操 朝のルーティンおはようから
平塚 今井和裕
- 丘白く見上げたものよ下界から今度は逆に眼を下し眠る
- この街に情けをかけて叙情なり街を助けて風呂敷広げ
諏訪 宮坂夏枝
- 娘一家とUSJ万博行きの強行軍ただただ後についていこう
- 小学生ふたり園児ふたりの孫 万博には大人四人の手が要るね
愛知 川瀬すみ子
- イチローのスピーチを中卒と言うならトランプの中卒英語は何ぞや
- キトラ古墳ツアーに出かけた朝に咲いた君 キトラのバラと名付け
諏訪 河西巳恵子
- 南側窓に古びた大きな製材所 モネのサン・ラザール駅に似る
- 郭公 杜鵑の声とうに聞かない 川畑も山際も家 家 家
坂城 宮原志津子
- 傷口ふさがらず外来受診続く夫退院してから三ヶ月もの日々
- シャワーで傷口洗い手当する私 夫から「ありがとう」のシャワー浴びる
横浜 上平正一
- 朝大ゲンカしなが知らぬふりしてパンを齧っている おかしな夫婦
- コンクリートの坂道の角にいちりん咲いているど根性すみれ
伊那 金丸恵美子
- 子供達が一斉に下校 元気な声が一際響き渡る 今日は一学期終業式
- 子供の心にふる里をと始めた読み聞かせ活動 未来を信じて続ける
大阪 山崎輝男
- 歴代最高四十一・八度を記録 酷暑日続出日本は熱帯化
- 四十度超えのスペイン 酷暑による死者千三百地球沸騰
神奈川 別府直之
- 朝霧高原を埋め尽くすボーイスカウトのテント自然と向き合う
- 薪を拾い火を熾すボーイのお兄ちゃんたちがたまらなくたくましい
下諏訪 藤森あゆ美
- 近づくほど涙あふれる 泣き腫らした目のまま家には帰れず
- 初めて家を通過する あふれ出る涙を止めるまでの時間
静岡 鈴木那智
- 厚みあるそら豆の大きな莢が天に向かって育つ直立をし
- 大粒の強い甘味のそら豆だが青臭さが苦手な人も
埼玉 須藤ゆかり
- 愛していれば 性善説のきらめきはガラスのこころに乱反射する
- 煮え切らないわたしはせんを飼っているセミロング セミダブル うつせみ
岡谷 花岡カヲル
- 築五十五年私の部屋 蛍光灯ピカピカLEDライトに変わる
- 電気屋さん八畳間だが天井が高いから十二要間用のLEDだと言う
下諏訪 中西まさこ
- 群青の海峡の底に沈めたいYへの恋慕とTへの憎悪
- 波しぶき上げ揺れる船の甲板の手摺りにもたれ血の色の酒
北海道 吉田匡希
- 歯並びの正しさだけが真実で皮膚果てしなく偽証のすべて
- たましい と言葉にするとき唇と唇触れるのはただ一度
いのち(未来山脈2025年9月号より抜粋)
- 2025年9月1日
- 会員の作品
京都 岸本和子
- ブラタモリ宮古島 魅惑のブルーに囲まれた遠い遠い夢の島
- 「ちょっとみやこじままで」先生の余裕のひとこと 私も言ってみたいです
一関 貝沼正子
- 首あおく鳩歩み来る駅前に人を待つ間の思いあれこれ
- こんなにも今満開の山桜訪う人もなく楸邨の句碑
大阪 花菜菜菜
- 夜ふけてドアノブの音 夫かと驚く お隣さんご帰宅の音
- 徘徊も困ったものよ 知らせをくれた「梅田曽根崎警察署」
茨城 南村かおり
- 北海道富良野 何年も憧れ写真集で見た地に立っている
- 家族で行けるこの恵み 最終プランは夫が決めた
岡谷 花岡カヲル
- 四季咲きのピンクの大輪のバラ卒寿を祝ってくれるか庭に咲きこぼれる
- 地元の大きな梅とやっと出会い我家の常備食さっぱり漬けを作る
平塚 今井和裕
- 雪道に一歩ずつ進め雪止んでそのくり返しに時間感じる
- そんなにも固執するのか止めてみな気分転換風に吹かれて
岡谷 佐藤靜枝
- 早朝に尾瀬へ向かう六月十日空模様気になるツアー旅
- 亡夫の写真に手を振り久々の旅に出る歩く不安を封じ込め
彦根 久保仁
- 赤と青交じれば高貴な色 古代から続くチリアンパープル
- 乳首紙める赤子のようにキスする君はパープルの葡萄咥え
岡谷 征矢雅子
- 黒くたたずむホテル群のまばらな灯り和倉温泉に雨けむる
- しょっぱい和倉の温泉なめてみる貸し切りの湯のようわれ一人
小浜 川嶋和雄
- わが里は福井県小浜市池河内 仕事は炭焼きおれ山奥育ち
- 我家は茅葺屋根だ三角の 七十坪ほど二階は焚き木が
下諏訪 笠原真由美
- ソープ皿きれいに洗ってシトラスの香の石鹸をのせれば夏来ぬ
- 南口を出て下連雀の道を歩くリアルな夢に笑ってしまう
岡谷 三澤隆子
- 小さきわが畑の予定巡らせて今年も実家の苗場へ向かう
- 兄のくれた助言を今は甥から教えられ植える苗の品定め
岡谷 片倉嘉子
- 帰りぎわ師から手渡された自慢焼き手のひらにぬくもりいつまでも
- バスのなかではテンション高めの会話とびかう 仲間とのバスハイク
岡谷 長田惠子
- 早苗の田と麦秋の畑がパッチワーク模様に広がる松本平 夏はもうすぐ
- 生きているのではなく生かされている 人生を全うするとは
岡谷 横内静子
- 道すがら知らない者同士の他愛もない会話 互いの帽子を褒め合う
- 『ホケキヨ」と鳴く鴬が電線に止まって 何度聞いても。ホーホケキヨ。
湯河原 別府直之
- お店に入ると店員の皆さんの笑顔 なめろうの前でこちらも笑顔
- きょうのオススメがインスタで届いた! 刺身もフライもどれもうまそう
近江八幡 岸田文代
- 問うたら良いけど東京は小走りで目印さえ探せない
- アナログの旅はもっぱらしゃべり 人間ですやん
埼玉 木村浩
- 春日差しが誘うか散歩しても誰とも手も握れず一人行く
- 春日差し帽子をかぶりなおす影は日差しを止めているんだ
諏訪 藤森あゆ美
- 何人も重なるようにたむろしてその集団は私だけを待つ
- 傘連判状に並ばれて私は円の中心となる
静岡 鈴木那智
- 描きたる絵の中のキャラクターや動物が飛び動く3Dの世界
- 人工の知能を使い下水道管の水漏れを探すAIロボットに熱い視線
東京 桃谷具久夫
- フランシスコ教皇悼む世界善導を発する宗教家どれだけありや
- 死んだ人のCDもらう同じ歌を歌った世代その人紹介されたよう
米子 大塚典子
- わたしたちどうだったろう 燕の子育て本気度に若き日想う
- 夜明けから巣づくりに余念ない燕 パートナーみつかって良かったね
諏訪 河西巳恵子
- 猫の額ほどの公園 桜蕊積もり古いカセットから力なくラジオ体操第一
- 唐突に俳句好き短歌嫌いはどっちでも 町内針槐の花粉まみれ
素足(未来山脈2025年8月号より抜粋)
- 2025年7月30日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
- ひと雨ごとに枝葉をのばす緑の山々 大きく深呼吸している
- 何処から来たの我が家に着地蒲公英の綿毛 風に吹かれ空気に遊ばれ
神奈川 別府直之
- 村にひとつの一貫校 児童 生徒も 先生 保護者もみな輝いている
- 緊張した面持ちで防災訓練に臨む ひとりだけ迎えがまだ来ない
伊那 金丸恵美子
- 童謡唱歌の杜へようこそと始まる唱歌教室 初夏の歌が懐かしく沁みる
- 「夏は来ぬ」和歌からの言葉が美しい 歳を重ねて理解する日本の風景
岡谷 花岡カヲル
- 玄関に彩なすクンシラン 日毎に色を染めて咲きほこる
- 大の里二十三年初土俵から十三場所で七十五代横綱となる
愛知 川瀬すみ子
- メンズシャツSで体型カバーいざハツラツと自由に動く胸のあたり
- 「今ときの中だよ」返信有り車窓の動画付き 知らんけどグー
東京 桃谷具久夫
- コンクリート狭隘に咲くすみれ花背景の惨めに幸せ映える
- 赤トンボ国のため死んでくれ 革まり鉄アメリカに攻め入る
横浜 上平正一
- さくらの花に蝶がしがみついて流れてゆく・・・春の夕ぐれ
- さみしいなぁ・・・夢の中でも荒野を彷徨っているわたし
諏訪 宮坂夏枝
- 自分を労う計画「古稀の誕生日は好きな宿で過ごす」を敢行
- 行ってみたかった松本十帖自分にだけ相談してネット予約
平塚 今井和裕
- 日本人旅行といえば温泉と相場は決まり宿の料理
- 暖かき人の心を無にするな歌じゃないが人を信じて
箕輪 市川光男
- 誰も居ない朝一番の畑に立って深呼吸さあ仕事だ仙丈の日の出も近い
- アルプスの雪解け水を集めて天竜川はゴウゴウと流れる真に龍の姿だ
山梨 岩下善啓
- 戦後八十年 昭和も遠くなりにけり
- 明治も遠くなりにけり 小沢昭一がよく言っていたな
さいたま 清水哲
- 鶏インフル アメリカで牛に感染し死亡者も発生
- 十七年前に警鐘した鶏ウイルスはアメリカで牛から人へ既に感染
仙台 狩野和紀
- 四十年前の写真が不意に出てきた今日を知らずに笑顔満開の貴女
- 長屋育ちでマンションに憧れた訳じゃない本当は息苦しかった
下諏訪 光本恵子
- 車の運転は夫 十四歳の文子と六歳の玲奈と鳥取へ里帰りの夏だった
- 笑顔を遺してあの星になった坂本九 日本航空一二三便墜落事故で亡くなる
太陽はいま(未来山脈2025年7月号より抜粋)
- 2025年6月30日
- 会員の作品
千曲 中村征子
- 言いたい言えない「遊びにおいで」近くに若い親子が越してきた
- 散歩は土手の道 ピンクの残る山に鯉のぼりを数えようっと
小浜 川嶋和雄
- 遠くよりさくら公園めれば 天辺紅いか近づけば蕾が
- 俺の見る遠敷の里のさくら皆 山も野もです白で満開だ
一関 貝沼正子
- 相槌の様子でわかるこの話二度目と分かりさらりと流す
- 右側に傾く古稀の後ろ手に左、左と気合を入れる
藤井寺 近山紘
- スーパーの出口で知らない女が最近夫を亡してネと寂しさを語る
- 日常の生活リズムが突然崩れて行き場のない時が流れるという
米子 角田次代
- 暖かくて気持ちいい布団の中で背伸びする今日の予報は晴れ
- 花吹雪の中速度を落して走るこころの憂さも花びらとともに
埼玉 木村浩
- もつなのに高級もつ鍋分かるような分からないような
- 洋風もつ鍋おもしろそうだけど食わず嫌いをおしとおす
札幌 石井としえ
- 母親のみやげに手にしたエンゴサク春の遠足どの子もきまって
- 思い出はそこに行き着く春の日に野原で食べた子等とのおにぎり
青森 木村美映
- このところ禁酒がうまく続いていてドヤ顔しつつ定期採血
- 肩こりの薬を処方してもらうおそらく眼鏡があわないせいだ
原 桜井貴美代
- 出発だハンドル握る夫イキイキ春の訪れ心華やぐ
- みちのくの三春滝桜 生きて千年 紅の花びら滝の流れ
原 太田則子
- ほっ眩しい朝日をさけるか恥じらうかクリスマスローズの花ゆかし
- 杏の花 蕾も花びらも丸っこいそれを見る目もまるい
原 森樹ひかる
- またたく間に輝く緑の森に 感激の一瞬
- 柔らかな緑 優しい色つける小さな野の花に春の陽ざし
原 泉ののか
- 春休み雪がみたいとやってきた孫 大手ひろげて迎える
- 標高差四六六メートルを一気に上がるロープウェイ 鳥になる
大阪 加藤邦昭
- ゴールデンウィークの息子の帰省に合わせ関西万博を見学する
- 煩雑な予約手続きだけを息子に任せたが彼は入場料も負担する
茨城 南村かおり
- 十年ぶりに姪の家訪れる 子供たちの成長ぶりに目を見張る
- 訪れたマンションの高層階が姪の家 最高の景色と広い空間
山梨 岩下善啓
- 黄昏の伏魔殿 老師念願の障壁画が完成する
- 大画伯に色紙を所望すると障壁画の小下図を載く
岡谷 花岡カヲル
- 黄砂くる対岸の美しい景色ぼやけしだいに全て見えなくなった(三月二十五日)
- 洗濯物は室内干とする 近くの西山もうっすらと黄砂
埼玉 街川二級
- 躑躅枯れゆく 今こんなにも暇という現実もまた私にはやさしさか
- 読み終えて久しい本を処分する前にもう一度読む烈しさが欲しいが
福山 杉原真理子
- ICUで面会以来五年ぶりに兄に会う 積る話を次々に
- 施設に暮らし一年不自由な体で頑張る兄 手の温もりに涙 涙
東京 須藤ゆかり
- 腹のいたいひとが隣りで寝つづけて電車はいっそう各停になる
- ゆらゆらと水草めいて泣き出しそう 泣き出しそう 膝頭をあやす
坂城 宮原志津子
- 病棟スタッフの見送り受けピリオド打つ夫 入院生活一〇五日間
- 小雪舞う一月緊急手術そして桜舞う今 経過観察になり家路へ
富田林 木村安代子
- 各駅停車の窓の向こう 土を耕す人の背中が丸い
- まあるい地球のてっぺんに立つ気分 春の星天あおぐ
松山 三好春冥
- 後期高齢者になり不都合なことが増えた カフェインレスにしよう
- コーヒーも紅茶もカフェインレス 人生我慢できないことばかり
米子 大塚典子
- 幼より小さなよろこび見つけるを得意とし一寸先を生きる
- ブクリブクリと浮かんでくる過去をプクリプクリと春の川に流す
いのち(未来山脈2025年6月号より抜粋)
- 2025年5月29日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- この再会をわたしが引き寄せた 一周巡って理想の友だち
- だから感覚がすべてなんだよ触ってごらんスワロフスキーの髪飾り
湯河原 別府直之
- 新橋で久方ぶりの歌会が開催されることの嬉しさ
- 参加した歌人六人 諏訪からは日帰り参加の光本先生
諏訪 河西巳恵子
- 飴三個掌に「これ舐めて待っていてね」多美子さん吹雪の中買い物に
- こんなに食べられないと言った昼食を完食 職員さん皆腕利きのシェフ
米子 安田和子
- 家を建てて五十年近く私の身体と一緒であちこちガタがきだした
- 板壁の張り替えに始まり里帰りした娘に廊下がブワブワと指摘される
原 太田則子
- 小川の水音が増すころ岸辺にはハート型のすみれの葉
- 踏まれても踏まれても起き上がる草 形状記憶で生きている
原 桜井貴美代
- 夢うつつ一首出来たにんまり目覚めてメモを記憶はどこへ
- 曇り空みぞれが降る空 春が来るぞと暗くヒバリ
原 泉ののか
- 案内たよりに階段をのぼる 迎えてくれた沈丁花の香
- ヒールの音ひびく道をランドセルの子ら駆けおりてゆく
原 森樹ひかる
- 重い扉を開けてみる 次々いろんな扉が現われてきた
- こんどは思い切ってこちらの扉にしよう 未知の世界へ
青森 木村美映
- ずんだもんです漆黒のめたんですねえねえめたんなあにずんだもん?
- 眼鏡にはハズキルーベを重ね掛け尻に敷かれたい訳ではないが
松本 金井宏素
- 落葉松に春雪 梢に僅かな薄紅がさして祭の始まる儀式
- 苦手な冬がもったいないほど早く過ぎて 気づけば春の景色に満ちる
飯田 中田多勢子
- 昔住んでいた遠い平岡から近くの牛牧霊園に墓を移した二妹金田家
- 新幕地へ二妹夫婦三妹夫婦と私五人で揃って彼岸の入りにお参りに
仙台 狩野和紀
- 還暦となり募る淋しさは自業自得か芽吹き陽が差さないだけ
- 心なき一言のダメージの重さはキロで計って間に合うのか
岡谷 花岡カヲル
- 春一番庭先にスノードロップ小さな白い鈴をだいて外界をのぞく
- 木戸先の福寿草 寒のもどり雪の中でふるえている
岡谷 佐藤靜枝
- 春に亡くなった夫と妹福寿草は土の中で出番を待っている
- 今生きていたらと年を数える三歳違いの妹の祥月命日
大阪 山崎輝男
- 港(はま)を生きて半世紀 想い出話はつきず霧笛鳴る中夜が深ける
- タンカーの着桟速度は秒速八センチ「匠の技」語るパイロット
千曲 中村征子
- 行く度品は薄くなり厚くなる金額 千円札が百円に見える
- 「ヤショ旨かった」と釈迦 切り分けられたヤショウマのその後が気になる
埼玉 須藤ゆかり
- 冬のままの平原に吹く風の向き おでんの好み 変わったんだね
- 雪がまだ雲のかたちを保つから思いは思いのまま重くなる
奈良 木下忠彦
- 人生の終わりを考えよと脳梗塞の鉄槌 何をどう考えようか
- 頭は小賢しく考える 命が納得するのは人やこの世に何を残したか
一関 貝沼正子
- たっぷりと水をあげれば立ち上がる鉢のカラーはまだまだ元気
- プランターを退けての声は水仙か黄色の葉群わっとあふれる
京都 岸本和子
- たった一キロ南の地なれど鴨川デルタ 世間への出入り口
- 東に京大西に同志社青春の交差点 川風も弾んでいる
札幌 西沢賢造
- 小さき人を継ぐアレクシェーヴィチ「過去が未来か」と福島に立つ
- 避難指示の報に百二歳の男故郷喪失に自死する
近江八幡 芦田文代
- 目の前に新聞読む男がいる さい先良いな今日の電車
- スマホする娘の爪短くてほっとほっとの朝の電車
富田林 木村安夜子
- 文字忘れ言葉を忘れる日の近未来 ふと想う
- あの人はもう亡くなったよ ずっとあとから聞く訃報 ぽつんと一軒家
坂城 宮原志津子
- 雪も溶け池端にふきのとうの新芽が あれから二ヶ月も過ぎた
- マイコバクテリウム初めて知る感染症 傷口から侵入長びく治療
京都 毛利さち子
- 方向性のない会話繰り返してる 目の前の抹茶パフェほろ苦い
- みんなみんな過去になるのだ素敵な場面にはフラッシュを焚こう
素足(未来山脈2025年5月号より抜粋)
- 2025年4月29日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
・厳寒の如月にあっても青空と太陽が明るいから背を伸ばして歩く
・手編みのマフラーは九十七歳嫗から届く ありし日の母の後姿
千曲 中村征子
・「米がカラッポ」ヘルパーが戻る 米騒動の発端になるやも
・米がなくも駐車場満杯 二カ月先の供出に固唾を呑む
松山 三好春冥
・動けるうちに庭木を切り詰めた 半透明の袋の中で骨になる
・庭の手入れが辛くなる 切り捨てた木の跡を覆う草の影
埼玉 街川二級
・頭のいい人たちの気持ちはわからなくてうじうじと珈琲に溺れた
・孤独感のせいだけじゃないつめたさに自分で自分を抱くこともせず
鳥取 小田みく
・雪の中十三回忌無事に終え葬儀の折の悲しみ再び
・墓石までの雪の足跡続く中 一時の日の光に雪が止み
岡谷 花岡カヲル
・もうすぐ九十歳になる私 行く先々を思い年賀欠礼のハガキを出す
・車の運転免許更新の通知くるもう一度トライしてみようか
坂城 宮原志津子
・静かなブラットホームひとり電車待つ 落し物カギ一つ朝日に光る
・ぼんやり見上げる青空ふんわり白雲どこまで流れゆく 時待つ間
仙台 狩野和紀
・夕方の蔵王からの風は日替わりで優しくも厳しく頬を撫でる
・誰にも止められない自然の摂理に魂を吹いとられ寿命となる
飯田 中田多勢子
・玄関にいけたロウバイが満開に入ってくる人が皆「わあいい匂い」
・二妹が育てたヒヤシンスが台所のテーブルで芳香を放つ春そこまで
愛知 川瀬すみ子
・「味噌ラーメン」の隣りに「苺」の旗がパタパタ 二月のコンビニ
・窓ぎわの席が空いてたら寄って行こ ドーナツ食べよう珈琲飲もう
下諏訪 藤森静代
・雪が解けて風の落ち葉を踏む家の湧き水の流れさわやかに
・落ちの中 水仙にチューリップが背くらべ始めた我が屋の庭
諏訪 宮坂夏枝
・三十数年ぶりだろうか東京ディズニーランド娘一家と共に
・この娘と来るのは初めてのディズニーランド今日は孫たちも一緒
大阪 與島利彦
・令和七年三月十一日 東日本大震災から十四周年の追悼 災害続く
・令和七年三月二十日 春分の日 天仰ぎ御日様に 畏敬の合掌
福山 杉原真理子
・田畑を耕し家事 子育て 村務めをしながら詩作は深夜に
・心に希望と喜びが満ちる「松」温かな村の暮らしが目に浮かぶ
諏訪 宮坂きみか
・三毛猫が家族といっしょに十五年言葉も覚え眠るように亡くなった
・猫は魔物可愛がれば家に幸運がやって来るという言い伝えがある
東京 木下海龍
・古希まちか神学修めこの日こそ按手を受けて歓喜聖堂に
・古希まぢか按手を受けて顔明れて授与のストール深紅に映える
山梨 岩下善啓
・二年に一度の公園掃除 桜が見ごろ鶯も鳴く
・桜の花咲く町の公園 ブランコもシーソーも雨に濡れている
下諏訪 中西まさこ
・天の声 ダマスカスへと向かう道 ベニヤミン族の革職人に
・サウロ サウロよ お前はなぜ わたしを迫害する
伊那 金丸恵美子
・あることばが心にささる 画学生の絵を見詰めると涙が頬を伝う
・山の頂に建つ無言館閑か 生きたかっただろう画学生の叫びが響
愛知 稲垣嘉子
・桜梅水仙満開だねおとうさん生きてるってスバラシイよね
・車椅子の夫と庭を散歩する今日は娘が休みで嬉しいよ
流山 佐倉玲奈
・もうすぐ新学期 桜も菜の花も満開なのに外は冷たい雨
・観葉植物パキラの枝がどんどん伸びる 白い部屋にみどり
大阪 山崎輝男
・人々は忘れかけていた大切なものを取り戻した震災後
・震災のあと阪神間の鉄道は途絶した状況が数ヵ月も続く
近江八幡 芦田文代
・お離子に時々混じる錫杖の音 宿老二人が引きずってゆく
・十二人の離子方乗せ山車が動く 鉄車輪が残す白い轍
札幌 石井としえ
・おーい雲呼びかけてみる今日わたし話せる友の一人も居なくて
・散歩道燃える夕日に魅せられて無人の駅の跨線橋わたる
下諏訪 光本恵子
・戦争から平和への切り替え時に誕生して八十年
・戦禍の終わりは平和の始まり ゆるゆると苦渋のまなざしは笑顔に
太陽はいま(未来山脈2025年4月号より抜粋)
- 2025年3月31日
- 会員の作品
北九州 大内美智子
二人逝き住む人の居ない屋敷にて 山茶花の花留守宅を守る
少し膨らんだ梅の蕾に思わず歓迎の笑みを送る
愛知 川瀬すみ子
世の中は仕事始めか この我は通院始め 一年スタート
花無ければ散ることも無いからいいね 病院の庭に常緑樹一本
大阪 加藤邦昭
寒波と寒波の挟間 出かけるのであれば今日しかない 妻に弁当を頼む
今日は未来山脈の作品を作る予定だったが寒の緩みが外出を誘惑する
京都 岸本和子
自由自在にとはいえ短歌だから 定型にはまった時の心地良さ
森見登美彦氏の「恋文の技術」 能登半島の根っこの町が舞台
横浜 酒本国武
女房からのメール 見るとネギも買って帰れと追加命令
「我々は微力だが無力では無い」良い言葉だと手帳に記す
岡谷 三枝弓子
夕暮れのオルゴールの音は愛の鐘 子どもの無事を母の祈り
オルゴールの音が街中に響き時を知らせる帰宅をうながす愛の鐘
米子 角田次代
月日は流れ寄る年波が物語る体力 今年は八十歳になる
粟島神社百八十七段の初詣 思いのほか心臓は荒れ狂う
埼玉 木村浩
屠蘇呑んで散歩すれば新年の風でも風は風
松の内朝から屠蘇だ竹でも梅でももっと長く続け
福知山 東山えい子
まっさらに生きようと決めた 十五からの日記束ねて処分
十五からの心を束ねて捨てる 八十二歳! 新しい一歩
諏訪 宮坂夏枝
八歳の孫秋華が我が家に泊まる特別な夜を愛しむ
宿題の催促のない祖父宅好きなテレビを見てゆっくりすごす孫
諏訪 河西已恵子
背負子負い山の畑へ 足元踏みしめ諏訪湖に気付かなかった子供の頃
山畑への道から湖水が見える驚き とうに五十を過ぎていた いい遠景
諏訪 小坂泰夫
ウラ声をうまく使ってミセスグリーンアップルみたいに歌いたい
思うように歌うにはオモテ声からウラ声を行ったり来たり
埼玉 須藤ゆかり
大根を一本分下茹でをする米ぱらぱらと願いのように
味がよく馴染むようにといくつもの隠し包丁入れてゆく
諏訪 宮坂きみゑ
中立国守ったスイスやポルトガル町が痛んで居なかった 街が健康
スイスには国連事務所がありいつも旗がひらめいて居た
平塚 今井和裕
まだ暗いまだかかるかな明けるまで情念込めて夢を包んで
この時代嫌だ嫌だでどうするの心明かして病んでしまうか
岡谷 三澤隆子
床の間の大きな鏡餅と片目のダルマ わが家を託す年の初め
快晴の諏訪湖畔に迎えた初日の出 まぶしき七時十分
下諏訪 長田惠子
偶然聞こえた一フレーズにどきっ シンディーローバーにまた会えた
あなたの色は美しいと力強く歌う 彼女の東日本大震災支援と重なる
岡谷 横内静子
新聞のパスワードで頭ひねって達成感 さっそく応募する
雪の八ヶ岳がキリッと光 家族の新年会に向かう車中
岡谷 片倉嘉子
灯油タンクは満タン 安心して暖かい正月を迎えられる
細川宗英の彫刻のわきにひいらぎ咲いて湖畔の風を受ける
奈良 木下忠彦一
肺心臓に加えて脳までも病む 天は何を見よ考えよというのか
三つの病が重なる からだの奥で終活を急かす声が大きくなる
福山 杉原真理子
ふくやま文学館木下夕爾生誕百十年詩と俳句企画展を訪れる
木下夕爾は郷土の詩人 生涯故郷に留まり詩集を六冊刊行した
松山 三好春冥
黒と金茶の防水靴二足を新調 昭和スタイルのお出かけ用に
お出かけには軽くて弾む靴がいい また五年は履けるだろう
下諏訪 笠原真由美
LINEありがとう私は元気・・・と打ちかけた指がとまって枝に残る雪
雪から晴れに変わる天気予報が「わたしは間違えた」を終わらせる
茨城 南村かおり
久しぶりのチラシ作り 前回は夫 今回はほぼ娘の作品
写真選びが難しい アルバムをスクロールして見つけていく
いのち(未来山脈2025年3月号より抜粋)
- 2025年2月27日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
隠しごと何もなけれど東京の人の流れに俯きてゆく
偶然を装う時の気まずさよたぶん相手も間の悪い顔
横浜 上平正一
ベランダの赤い薔薇が数ミリずつ延びて来る小さなしあわせ
沈みきったわたしのこころに薔薇の蕾が微かに広がってくるしあわせ
米子 角田次代
「元気だった?」ひと言が互いを思いやり会話が始まる貴女と私
人から人へと繋ぐ人の輪 人生を楽しくする輪 大切な輪
横浜 酒本国武
片道四○○米の道を二往復が飼い犬の世界 他へは頑として行かない
蝉の声がぱったり途絶え代わりに虫が鳴きはじめた
札幌 西沢賢造
宮滝古い入館者名簿時に背を向く青年の名をみる
吉野の夏の山道たどり西行庵いつの日かの青空
茨城 南村かおり
数年ぶり姉が我が家に尋ねて来る心浮き立つ冬休み
まずは牛久シャトーを見てもらう わずかばかりの地域観光
東京 桃谷具久夫
夏ガレージブールの児羨ましく初詣でまた一回り逞しく羨ましさ増す
蜜柑何でこんなに甘くなる口を窄めて食べて笑いたい
諏訪 宮坂夏枝
二○二五年がスタート ぎゅっと詰まった三年間を振り返る
年頭の検診 三年前の発病と治療 人生のタイムリミットを意識する
飯田 中田多勢子
デイのレク魚偏の字を問われる岐で「かわはぎ」「あじ」難しい
職員で元調理師のHさんが習った字の解説をしてくれわかりやすい
坂城 宮原志津子
後頭部強打する一瞬とぶ記憶 厳しい寒さ十二月あけきらぬ朝
脳神経外科CT検査「硬膜下血腫みられます」即入院 ドクターの声
松山 三好春冥
年の瀬にゼンマイ仕掛けの亀が猛ダッシュ 兎も鬼も笑い転げる
猛ダッシュするゼンマイ仕掛けの親亀子亀 年の瀬に笑う門あり
大阪 山崎輝男
食べる物も着る物もない瓦礫の街ガザ地区に寒波追い打ち
底冷えのガレキの中で息絶えた愛児抱きしめ立ちすくむガザの母
富田林 木村安夜子
津軽の方言が漬け物みたいでついつい笑うけど「どうすベー」おわりのない雪かき
今年もとどく ドカンと根雪 悲鳴をあげる津軽のま白い冬
甲賀 中村宣之
きみは差し入れを受け取っていない ずっと作業を続けていた
そっと缶コーヒーくらい渡してやればよかったと今さらおもう
小浜 川嶋和雄
庭の木木青のままだ変わらない どうだんつつじ一寸赤いか
自動車で若狭街道突っ走る 広がる稲株ひつじ田一つ
四条畷 高木邑子
雑煮餅思い切り長く伸ばして口に入れ私の今年の事始め
おやつを食べるのが私の仕事ズボンの繕いは私の手慰め
下諏訪 笠原真由美
かなしみが雨ふらす街 給油所で夫はつぶやく「レギュラー満タン」
喪の服と真珠に体温を吸われつつ助手席に見る雨の斎場誰からも離れて読経の声をきく扉をあければそこは水庭
原 桜井貴美代
千波湖の湖畔に咲く四季ざくら行き交う人々みんな笑顔
イカだタコだ客を呼ぶ声 活気あふれ賑わう那珂港
原 太田則子
花豆の夢を曲げてリース作り 松ぼっくりに野ばらの赤い実添えて
巳年にて「み」の形に草蔓曲げる 目は松の実飾りは赤い実
原 森樹ひかる
困難を極める場面でも笑顔で話しひょうひょうと健郎さん
こんな人と一緒ならいいな 私は心の底から憧れていた健郎さん
原 泉ののか
柏の樹いっぽん くしゃくしゃの葉ぎゅっと纏って此処にたつ
バチバチ背中をたたくのだあれ 昨日カラマツ今朝あられ
素足(未来山脈2025年2月号より抜粋)
- 2025年1月31日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
何かをつぶして通り過ぎた私の車 烏の策略にはまったらしい
あとを頼むと亡父と宮崎信義師 カレンダーは一枚となる今年も
一関 貝沼正子
あと二日残るカレンダー剥ぎ取って可燃ゴミ日に捨てる十月
カレンダーに丸印つける月初め まずは受診日、今月は三科
諏訪 大野良恵
社長と専務とパート二人の零細で回す三社の仕事
親会社の無理な要求に決してNOと言わない下請けの意地
さいたま 清水哲
コロナ感染五年目でマスク外せぬこの姿 院長先生答えを下さい
「ウイルスが変異しています」「わからないことばかり」本日も死亡者二人
飯田 中田多勢子
宅老所「かけはし」十人前後の利用者一年前とメンバーが変わった
毎日通っていた八十八のIさん元気だったけど息子に引きとられた
大阪 與島利彦
令和六年師走 京都清水寺の貫主 世相一字漢字 金と和紙に大書
閏年 国外パリ五輪金メダル 国内は政官財等々 裏金の記録更
仙台 狩野和紀
いくつになろうとわからない解決への近道は右か左かそのままか
最近息が続かないけどゴールが見えてきたとは認めません
諏訪 藤森あゆ美
人はみな一糸まとわず生まれ出る 存在こそが色の重なり
最初から伸びてた幹の太さより後から伸びた幹の太さよ
東京 桃谷具久夫
熙巳さんの頑固 恵子さんの頑固どちらも大好き壁に並べて貼る
政治も宗教も律のない国 自由のなかに律を求める
愛知 川瀬すみ子
そおっとスマホで「花の名」検索 白玉の実は富貴草か 城の裏道
故郷の山に登る 信長が四年居た小牧山城 懐かしさブラス何か
大阪 山崎輝男
雄ひよこ卵生産の邪魔者か 孵化器から出るとすぐさま殺処分
コンベアに載ったひよこを雌雄分け 雄は粉砕機かガス処分
流山 佐倉玲奈
久しぶりに顔を合わせ温泉宿へ 食べて卓球して盛り上がる
足腰の弱り気味の母 それでも孫子と卓球に汗流す
東京 木下海龍
二人して常の席にて初礼拝 長くて短い半世紀
年惜しむ卒寿の宴に孫五人 道半ばにして老いを演ずる
福山 杉原真理子
新型やくもカレンダー二〇二五 新年への夢と希望が膨らむ
スーパーやくもで行った米子 母の膝で横揺れに耐えた思い出
山梨 岩下善啓
年末年始の僧堂荷担 雲水のインフルエンザで延期になる
大晦日に僧堂荷担に赴く 餅つきが大変だったと雲水が言う
札幌 石井としえ
ゆく雲の流れをじっと見ていた日整形外科の病室の窓
リハビリの膝の屈伸に行く廊下静かな病室いくつも過ごして
諏訪 小坂泰夫
初詣のあと電柱電線揺れに揺れ新年早々こころも動揺
四月退社し八月出戻り 居心地のよさ同僚のおかげ
下諏訪 光本恵子
過去を未来の重しにはしない じっと見つめている青鷺
ゆっくりでいい 自分らしくいまのままの歩調で