会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
太陽はいま(未来山脈2025年4月号より抜粋)
- 2025年3月31日
- 会員の作品
北九州 大内美智子
二人逝き住む人の居ない屋敷にて 山茶花の花留守宅を守る
少し膨らんだ梅の蕾に思わず歓迎の笑みを送る
愛知 川瀬すみ子
世の中は仕事始めか この我は通院始め 一年スタート
花無ければ散ることも無いからいいね 病院の庭に常緑樹一本
大阪 加藤邦昭
寒波と寒波の挟間 出かけるのであれば今日しかない 妻に弁当を頼む
今日は未来山脈の作品を作る予定だったが寒の緩みが外出を誘惑する
京都 岸本和子
自由自在にとはいえ短歌だから 定型にはまった時の心地良さ
森見登美彦氏の「恋文の技術」 能登半島の根っこの町が舞台
横浜 酒本国武
女房からのメール 見るとネギも買って帰れと追加命令
「我々は微力だが無力では無い」良い言葉だと手帳に記す
岡谷 三枝弓子
夕暮れのオルゴールの音は愛の鐘 子どもの無事を母の祈り
オルゴールの音が街中に響き時を知らせる帰宅をうながす愛の鐘
米子 角田次代
月日は流れ寄る年波が物語る体力 今年は八十歳になる
粟島神社百八十七段の初詣 思いのほか心臓は荒れ狂う
埼玉 木村浩
屠蘇呑んで散歩すれば新年の風でも風は風
松の内朝から屠蘇だ竹でも梅でももっと長く続け
福知山 東山えい子
まっさらに生きようと決めた 十五からの日記束ねて処分
十五からの心を束ねて捨てる 八十二歳! 新しい一歩
諏訪 宮坂夏枝
八歳の孫秋華が我が家に泊まる特別な夜を愛しむ
宿題の催促のない祖父宅好きなテレビを見てゆっくりすごす孫
諏訪 河西已恵子
背負子負い山の畑へ 足元踏みしめ諏訪湖に気付かなかった子供の頃
山畑への道から湖水が見える驚き とうに五十を過ぎていた いい遠景
諏訪 小坂泰夫
ウラ声をうまく使ってミセスグリーンアップルみたいに歌いたい
思うように歌うにはオモテ声からウラ声を行ったり来たり
埼玉 須藤ゆかり
大根を一本分下茹でをする米ぱらぱらと願いのように
味がよく馴染むようにといくつもの隠し包丁入れてゆく
諏訪 宮坂きみゑ
中立国守ったスイスやポルトガル町が痛んで居なかった 街が健康
スイスには国連事務所がありいつも旗がひらめいて居た
平塚 今井和裕
まだ暗いまだかかるかな明けるまで情念込めて夢を包んで
この時代嫌だ嫌だでどうするの心明かして病んでしまうか
岡谷 三澤隆子
床の間の大きな鏡餅と片目のダルマ わが家を託す年の初め
快晴の諏訪湖畔に迎えた初日の出 まぶしき七時十分
下諏訪 長田惠子
偶然聞こえた一フレーズにどきっ シンディーローバーにまた会えた
あなたの色は美しいと力強く歌う 彼女の東日本大震災支援と重なる
岡谷 横内静子
新聞のパスワードで頭ひねって達成感 さっそく応募する
雪の八ヶ岳がキリッと光 家族の新年会に向かう車中
岡谷 片倉嘉子
灯油タンクは満タン 安心して暖かい正月を迎えられる
細川宗英の彫刻のわきにひいらぎ咲いて湖畔の風を受ける
奈良 木下忠彦一
肺心臓に加えて脳までも病む 天は何を見よ考えよというのか
三つの病が重なる からだの奥で終活を急かす声が大きくなる
福山 杉原真理子
ふくやま文学館木下夕爾生誕百十年詩と俳句企画展を訪れる
木下夕爾は郷土の詩人 生涯故郷に留まり詩集を六冊刊行した
松山 三好春冥
黒と金茶の防水靴二足を新調 昭和スタイルのお出かけ用に
お出かけには軽くて弾む靴がいい また五年は履けるだろう
下諏訪 笠原真由美
LINEありがとう私は元気・・・と打ちかけた指がとまって枝に残る雪
雪から晴れに変わる天気予報が「わたしは間違えた」を終わらせる
茨城 南村かおり
久しぶりのチラシ作り 前回は夫 今回はほぼ娘の作品
写真選びが難しい アルバムをスクロールして見つけていく
いのち(未来山脈2025年3月号より抜粋)
- 2025年2月27日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
隠しごと何もなけれど東京の人の流れに俯きてゆく
偶然を装う時の気まずさよたぶん相手も間の悪い顔
横浜 上平正一
ベランダの赤い薔薇が数ミリずつ延びて来る小さなしあわせ
沈みきったわたしのこころに薔薇の蕾が微かに広がってくるしあわせ
米子 角田次代
「元気だった?」ひと言が互いを思いやり会話が始まる貴女と私
人から人へと繋ぐ人の輪 人生を楽しくする輪 大切な輪
横浜 酒本国武
片道四○○米の道を二往復が飼い犬の世界 他へは頑として行かない
蝉の声がぱったり途絶え代わりに虫が鳴きはじめた
札幌 西沢賢造
宮滝古い入館者名簿時に背を向く青年の名をみる
吉野の夏の山道たどり西行庵いつの日かの青空
茨城 南村かおり
数年ぶり姉が我が家に尋ねて来る心浮き立つ冬休み
まずは牛久シャトーを見てもらう わずかばかりの地域観光
東京 桃谷具久夫
夏ガレージブールの児羨ましく初詣でまた一回り逞しく羨ましさ増す
蜜柑何でこんなに甘くなる口を窄めて食べて笑いたい
諏訪 宮坂夏枝
二○二五年がスタート ぎゅっと詰まった三年間を振り返る
年頭の検診 三年前の発病と治療 人生のタイムリミットを意識する
飯田 中田多勢子
デイのレク魚偏の字を問われる岐で「かわはぎ」「あじ」難しい
職員で元調理師のHさんが習った字の解説をしてくれわかりやすい
坂城 宮原志津子
後頭部強打する一瞬とぶ記憶 厳しい寒さ十二月あけきらぬ朝
脳神経外科CT検査「硬膜下血腫みられます」即入院 ドクターの声
松山 三好春冥
年の瀬にゼンマイ仕掛けの亀が猛ダッシュ 兎も鬼も笑い転げる
猛ダッシュするゼンマイ仕掛けの親亀子亀 年の瀬に笑う門あり
大阪 山崎輝男
食べる物も着る物もない瓦礫の街ガザ地区に寒波追い打ち
底冷えのガレキの中で息絶えた愛児抱きしめ立ちすくむガザの母
富田林 木村安夜子
津軽の方言が漬け物みたいでついつい笑うけど「どうすベー」おわりのない雪かき
今年もとどく ドカンと根雪 悲鳴をあげる津軽のま白い冬
甲賀 中村宣之
きみは差し入れを受け取っていない ずっと作業を続けていた
そっと缶コーヒーくらい渡してやればよかったと今さらおもう
小浜 川嶋和雄
庭の木木青のままだ変わらない どうだんつつじ一寸赤いか
自動車で若狭街道突っ走る 広がる稲株ひつじ田一つ
四条畷 高木邑子
雑煮餅思い切り長く伸ばして口に入れ私の今年の事始め
おやつを食べるのが私の仕事ズボンの繕いは私の手慰め
下諏訪 笠原真由美
かなしみが雨ふらす街 給油所で夫はつぶやく「レギュラー満タン」
喪の服と真珠に体温を吸われつつ助手席に見る雨の斎場誰からも離れて読経の声をきく扉をあければそこは水庭
原 桜井貴美代
千波湖の湖畔に咲く四季ざくら行き交う人々みんな笑顔
イカだタコだ客を呼ぶ声 活気あふれ賑わう那珂港
原 太田則子
花豆の夢を曲げてリース作り 松ぼっくりに野ばらの赤い実添えて
巳年にて「み」の形に草蔓曲げる 目は松の実飾りは赤い実
原 森樹ひかる
困難を極める場面でも笑顔で話しひょうひょうと健郎さん
こんな人と一緒ならいいな 私は心の底から憧れていた健郎さん
原 泉ののか
柏の樹いっぽん くしゃくしゃの葉ぎゅっと纏って此処にたつ
バチバチ背中をたたくのだあれ 昨日カラマツ今朝あられ
素足(未来山脈2025年2月号より抜粋)
- 2025年1月31日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
何かをつぶして通り過ぎた私の車 烏の策略にはまったらしい
あとを頼むと亡父と宮崎信義師 カレンダーは一枚となる今年も
一関 貝沼正子
あと二日残るカレンダー剥ぎ取って可燃ゴミ日に捨てる十月
カレンダーに丸印つける月初め まずは受診日、今月は三科
諏訪 大野良恵
社長と専務とパート二人の零細で回す三社の仕事
親会社の無理な要求に決してNOと言わない下請けの意地
さいたま 清水哲
コロナ感染五年目でマスク外せぬこの姿 院長先生答えを下さい
「ウイルスが変異しています」「わからないことばかり」本日も死亡者二人
飯田 中田多勢子
宅老所「かけはし」十人前後の利用者一年前とメンバーが変わった
毎日通っていた八十八のIさん元気だったけど息子に引きとられた
大阪 與島利彦
令和六年師走 京都清水寺の貫主 世相一字漢字 金と和紙に大書
閏年 国外パリ五輪金メダル 国内は政官財等々 裏金の記録更
仙台 狩野和紀
いくつになろうとわからない解決への近道は右か左かそのままか
最近息が続かないけどゴールが見えてきたとは認めません
諏訪 藤森あゆ美
人はみな一糸まとわず生まれ出る 存在こそが色の重なり
最初から伸びてた幹の太さより後から伸びた幹の太さよ
東京 桃谷具久夫
熙巳さんの頑固 恵子さんの頑固どちらも大好き壁に並べて貼る
政治も宗教も律のない国 自由のなかに律を求める
愛知 川瀬すみ子
そおっとスマホで「花の名」検索 白玉の実は富貴草か 城の裏道
故郷の山に登る 信長が四年居た小牧山城 懐かしさブラス何か
大阪 山崎輝男
雄ひよこ卵生産の邪魔者か 孵化器から出るとすぐさま殺処分
コンベアに載ったひよこを雌雄分け 雄は粉砕機かガス処分
流山 佐倉玲奈
久しぶりに顔を合わせ温泉宿へ 食べて卓球して盛り上がる
足腰の弱り気味の母 それでも孫子と卓球に汗流す
東京 木下海龍
二人して常の席にて初礼拝 長くて短い半世紀
年惜しむ卒寿の宴に孫五人 道半ばにして老いを演ずる
福山 杉原真理子
新型やくもカレンダー二〇二五 新年への夢と希望が膨らむ
スーパーやくもで行った米子 母の膝で横揺れに耐えた思い出
山梨 岩下善啓
年末年始の僧堂荷担 雲水のインフルエンザで延期になる
大晦日に僧堂荷担に赴く 餅つきが大変だったと雲水が言う
札幌 石井としえ
ゆく雲の流れをじっと見ていた日整形外科の病室の窓
リハビリの膝の屈伸に行く廊下静かな病室いくつも過ごして
諏訪 小坂泰夫
初詣のあと電柱電線揺れに揺れ新年早々こころも動揺
四月退社し八月出戻り 居心地のよさ同僚のおかげ
下諏訪 光本恵子
過去を未来の重しにはしない じっと見つめている青鷺
ゆっくりでいい 自分らしくいまのままの歩調で
太陽はいま(未来山脈2025年1月号より抜粋)
- 2024年12月31日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
・リズムよく庭の敷石打つ音か軒の雨垂れ時の源
・顔のないデジタル時計青白くホテルの壁に時をおし出す
福知山 東山えい子
・政治の無策や知らんと思ったけど お米ない? 人に頼られ心が痛む
・朝日新聞の隅っこに 米作り時給十円とあり でも田捨てられず
岡谷 三枝弓子
・八ヶ岳に向かう車窓から蝉時雨が酷暑に疲れた心にとびこむ
・庭隅にふっくらと茗荷こんなに取れたと誇らしげに言うだろう亡夫は
奈良 木下忠彦
・退職して新しい生き方を求める 人間の多様さ命の重さに気づく
・人生の苦からは逃れられはしない 苦を背負ったまま答えを探す
坂城 宮原志津子
・三年連用日記帳十五冊ずらり並ぶ本棚 数々の思い出終活の第一歩
・何着ものスーツ下がるクローゼットの中 今は不要の品と思い切る
諏訪 大野良惠
・コロナに感染した夫を隔離 そうだ浴衣をリメイクしよう
・引きこもりの夫に提供するべく食事を扉の前に置く
札幌 石井としえ
・歩行器で散歩の道の枠花壇ひまわりの背伸び楽しみにして
・カラス見て過ごした病室冬の日よ今日雁見てる歩行器散歩
原 桜井貴美
・道端にふと目をやれば曼珠沙華 残暑の日々に秋の気配
・十月に名残の蝉の声を聞くツクツクボォシツクツクボォシ
原 泉ののか
・どんどん山容かえる八ケ岳 特急あずさは走る
・ばあば二人に囲まれ孫は得意気 天までのぼる
原 太田則子
・葉の落ちる音ほおをなでる風のにおい あの暑さを忘れさせる
・冷水をグイと飲み干した夏 今はふうふう茶碗を両手で囲む
森樹ひかる
・中学生の合唱 ホール全体にはち切れんばかりの歌声響く
・力強い歌声未来へ向かう若いエネルギーが満ちている
藤井寺 近山紘
・同級生何年も会っていないのに小さな町医者でひょっこりと出会う
・クラブの先生の話題当時どことなく気に障っていたと苦笑いする
大阪 花菜菜菜
・あっキンモクセイの花あたらしい今朝の発見金木犀のかほり
・散髪のバリカン使いも介護の一つとなりて今度の日曜約束する
岡谷 佐藤靜枝一
・十月十三日両親の法事をする清々しい朝 八ヶ岳をあおぐ
・姉夫婦が健康であればこその父母法要の席 身を正して臨む
静岡 鈴木那智
・騒がしき轡虫の声は立ち退きて涼しき声の松虫が鳴く
・コスモスの咲く畑道を歩きなば一匹の蝶まとわり放れず
岡谷 征矢雅子
・暮れゆく高ボッチ ペールピンクの満月のはかなげに沈む
・夜更けて浮かぶ二十日のおぼろ月 微かに花の香りする
岡谷 横内静子
・最後の作業療法はみそ汁作り 豆腐にわかめと千切り葱を浮かす
・スタッフの昼食時に合わせ煮過ぎず暖かくと感謝を込める
岡谷 三澤隆子
・白色ピンクの秋明菊にホトトギス いちいの大木囲み風に踊る
・姉から株分け藤袴 わが狭庭にアサギマダラの気づくを待つ
下諏訪 長田惠子
・緑の葉の上で緑のカマキリが動かない 葉になろうと擬態努力中
・小春日和のベランダで居眠りのツバサ まったりの犬時間を過ごす
岡谷 片倉嘉子
・永井さんの歌を聴いて清々しい帰り道 高い空に風が吹く
・物干しぎおに雨粒がならび今にも落ちそうにぷるぷる震える
青森 木村美映
・魂を揺るがす如くAdoの「唱」 ひるむ背中を駆り立ててくる
・まずベースラインに耳を傾けよ 音楽だけの話じゃないぞ
下諏訪 藤森静代
・晩秋にふたりの友が天空へ旅立つ 涙にくれつつ思い出に浸る
・よき事の少ないこの頃 今宵の上弦の月のほほえみに友を偲ぶ
いのち(未来山脈2024年12月号より抜粋)
- 2024年11月29日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
この世にきてやっと半年すぎた凪を膝にのせてシューマンを弾く
ト長調そして次はへ長調 凪に聴かせる「こどもの情景」
岡谷 三枝弓子
田の畦を紅く染めて群れ咲く彼岸花 初めて見た奈良の旅
ヒマワリの花束とマスカットのケーキを持って孫娘祖父ちゃんもいたらという
埼玉 須藤ゆかり
お気に入りをそっと身につけ秋をゆく夏の波打ち際をなぞって
空はまだ夏を装おう風のなかの次の季節にまだ目を伏せて
坂城 宮原志津子
コロナ感染で五年間のブランク コーラス演奏会十一月三十日決定
メンバー二十七名~大切なこと音楽で伝えたい~テーマに練習かさねる
富田林 木村安夜子
いつもの座布団にゆったり眠る猫 昏れてゆく十月の空
夕暮れてゆく樹木の深い緑こうべを垂れる
横浜 酒本国武
五月の明るい光 本を片手に街を歩けば学生の頃を思い出す
空き地には河津桜の緋が溢れ時どきスマホで撮る人がいる
諏訪 河西巳恵子
猛暑生きのびる 鏡に向かい髪適宜に切れば私の出来上り
房総「濃溝の滝」の模写 ずっと額に飾られ秘かな自慢
横浜 上平正一
送り盆 線香だんだん細くなる山の奥で仏法僧が鳴いている
星も見えない空うれえをこめて雲を分けゆく今夜の羽田発七時五十分
飯田 中田多勢子
秋祭りの一番は大宮神社昼間は青天だったのに夕方からどしゃ降り
どしゃ降りの中でも神輿はきおう花火はバンバンバン大三国は中止
鳥取 小田みく
赤のかたまり ようやく咲いて 彼岸来たよと風にうたう
青木稲穂にすがりつく 真すぐに並ぶ ひがん花のおび
静岡 鈴木那智
紫のブドウ鮮やか撓みのる秋の味覚の旬は来たれる
鰯ぐも澄みきった空一面に緩る流れ行く心の安らぐ
大阪 花菜菜菜
鎌を持ち大地慈しみ五キロの米と一筆添えられ届いた
稲刈りのあとの田んぼにやれやれして足腰のため整骨院ゆくと
原 桜井貴美代
散歩の道中帽子をうっかり置き忘れ毎日捜す夫
「忘れ物です」とビニール袋に夫の帽子 角の家の垣根にそっと
原 太田則子
金色の稲穂をるコンバイン おこぼれ嬉しやカアカア
お彼岸におはぎを作る手仕事 小豆こんとこと餅米ふっくら
原 泉ののか
刺すような残暑の中で想いだす兄と遊んだ海辺の臭い
かわってゆく樹々の色ゆっくりゆっくり黄葉す
原 森樹ひかる
この夏ほったらかしの庭 草たちはみな自由に走り回る
草の中でひときわ輝く青い宝石 つゆくさの君と名づける
四條畷 高木邑子
懸賞金で賑わう土俵上イケメンの力士出世に大銀杏追いつかず
横綱不在でも活気溢れる土俵上客席にマスク顔もちらほらとなり
大阪 山崎輝男
臓器提供と書かれた免許証 事故死で散った甥の生命の短さよ
二十六歳で帰らぬ人となった甥 子供の頃の可愛さ目に浮かぶ
諏訪 宮坂夏枝
寒さも暑さも彼岸までは本当 朝の空気の清涼感あれほどの酷暑の後
断捨離トレーナー講習が終わりトレーナーインターンとなる
米子 大塚典子
入場行進する甲子園球児みて「男の孫が欲しい」とTVに語る
勝負はついても称えあっている高校球児 会話は私がつくる
大阪 加藤邦昭
七十四歳の誕生日の朝 カーテンを開ければ大阪環状線はもう動いている
妻は急用で昨夜から外泊 子供は東京 一人だけで迎える誕生日の朝
松山 三好春冥
父二十五回忌母三回忌 残暑の墓を清めに来ました
白い曼珠沙華の花ことば 恋愛でも情熱でも楽しみでもなく
素足(未来山脈2024年11月号より抜粋)
- 2024年10月30日
- 会員の作品
アラいけない明日の散歩では遅い 草刈り鎌の餌食になっているもち草の花
千曲 中村征子
地中海の満月は波間に漂い 魚がぴちぴち跳ねる光となり
さいたま 清水哲
ソックスが裏返しだと気づく午後みんみん蝉鳴く 今日は立秋
一関 貝沼正子
日本人第一号の金メダルは 女子柔道の角田選手だ
小浜 川嶋和雄
ハンドル握るカラマツ林を車で走る逞しい娘
原 桜井貴美代
大輪の向日葵のぞきこむ 幾何学的に並ぶ小さな種
原 太田則子
てっぺん大好きアキアカネ 稲穂にとまって澄まし顔
原 泉ののか
木の実ちゃんおはようごはん食べる犬に声がけの夫
原 森樹ひかる
はしゃぎ過ぎた後の鎮もり蒟蒻みたいにのっぺりした瞬間がくる
京都 毛利さち子
太陽系地球四十六億年前 球体は地核マグマ・マントル・プレート等
大阪 與島利彦
パキパキの青空は戻って来ないムシムシの猛暑日が 台風一過
愛知 川瀬すみ子
辛抱と我慢の違いを学ぶ説法 猛暑日に聞く忍耐と堪忍
松山 三好春冥
就活を兼ねた身辺整理のための断捨離なぜトレーナーを目指したか
諏訪 宮坂夏枝
俺が俺がと前に出て口を開けば嘘ばかり離れてわかる真実
仙台 狩野和紀
「中西さん、中西さん」と何度か呼ばれて はっ と目を開けた
下諏訪 中西まさこ
見守りましょう 大人が我慢するとき 越えられない壁はないという
流山 佐倉玲奈
窓から遠望できる針の木岳 緑の黒部ダムはその真下に光っていた
松本 金井宏素
「露の身ながら さりながら」永久にあれよと今を生きる
東京 木下海龍
成田空港から飛行時間十一時間四十五分のはずが十時間でアブダビ国際空港到着
松本 大野みのり
古い町の小さな寺 住宅街の中の涸れはてた庭
山梨 岩下善啓
年に五十回守屋山に通う父 ラクに登れるのは糖尿で痩せたからだと
諏訪 小坂泰夫
三年前に亡くなった夫の耕七と世界中旅した思い出に生きる
諏訪 宮坂きみゑ
敗戦時に生を得て七九年 米子の伯耆富士・大山から富士の見える街に住む
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈2024年10月号より抜粋)
- 2024年10月1日
- 会員の作品
朝ドラ見つつ朝食終えMC女子アナの笑顔に手を振ってみる
札幌 西沢賢造
横たえる体 無理やり起こしては客人迎える彼女の意志
諏訪 藤森あゆ美
亡夫の実家の墓仕舞いあずさから上越新幹線で新潟へ行く
岡谷 佐藤静枝
ふれあい音楽会 いまの会社の新しい仲間と楽しむ
湯河原 別府直之
おれ敦賀へ若狭街道自動車で 氣比神宮にお参りするよ
小浜 川嶋和雄
河原の草花一つひとつ名前を持って健気に生きている
京都 岸本和子
死ぬ死ぬ死ぬって私はいつ死ぬんだ主治医の顔をじっと見る
箕輪 市川光男
風邪をこじらせ十日間もダウン 明日は起きるぞ気合を入れろ
鳥取 小田みく
若者のはやり言葉をつかってみるが八十路前にはムズイ
米子 大塚典子
会いたいと言う行くと「わし生きとって良いんかのお」九十八歳兄
東山えい子
父なる神様助けてと縋りつ いきる我が主我が神 私は赤子
四條畷 高木邑子
今日のことは今日にしかない割ればほら卵は白身と黄身って呼ばれる
埼玉 須藤ゆかり
漫画のヒーローのようです 二塁ベースから手を振る大谷翔平
富田林 木村安夜子
早朝に飲む梅醤番茶で塩分補給 猛暑日予報に気を引き締める
福山 杉原真理子
掃除キッチンの整理に時給二六〇〇円 塩の美味しいケインズの町
横浜 大野みのり
量産型少女歩けば六月の雨はデジタルなマトリックス
青森 木村美映
青蛙そっと手の平に乗せたれば畏まり平伏をした侍
静岡 鈴木那智
ワシントン州の土壌で実ったチェリー 海を渡って私の手の平に彩る
伊那 金丸恵美子
押し寄せてくる人 人 人オーバーツーリズム わが町も疲れてる
愛知 川瀬すみ子
朝の迎えKさんの温かい手 いつの間に私がKさん曳いていて うふふ
諏訪 河西巳恵子
暑さをしのいで散歩にでると朝日がすでに瞼にまぶしい
茨城 南村かおり
梅雨の空気が太陽と雲をおしあげている 空の先には夏があるというに
甲賀 中村宜之
食事の片付けをしながら頭では次の食事のことを考える 夏休みのルーティーン
流山 佐倉玲奈
若き日に庭の如く遊んだ山 老いて感謝で遠望する
北九州 大内美智子
きのうは蝉の声きょうはきりぎりす酷暑にも秋の訪れが
下諏訪 藤森静代
わが住居の道側垣根 百日紅並木 夏休み子供等の花見マンション
大阪 與島利彦
今日の昼食は 毎回違う店に入るのが僕たちのルールだ
東京 下沢統馬
悪口は風が吹き消す夕間暮れギザギザの葉を伸ばすノアザミ
一関 貝沼正子
窓のないスタジオで口だけが動く 論より証拠の傘を持って行こう
松山 三好春冥
いのち(未来山脈2024年9月号より抜粋)
- 2024年8月31日
- 会員の作品
都合の悪い話は聞こえない振り不都合な言葉は切り捨てる術を覚える
藤井寺 近山紘
「聞いて!」と突然の病と入院を語る友 驚きと安堵が交錯する
米子 角田次代
新聞はチラシを見るだけ女房もクロスパズル欄だけ開く
横浜 酒本国武
往時を思い出して馬町界隈 下校時で歓声が上がる まぶしい
京都 岸本和子
憎しみと愛しみが交互に入れ変わる夜の深まりゆくあいだ
横浜 上平正一
なんでもない河原の草たち背が伸びて景色は夏模様われも半袖
愛知 川瀬すみ子
一生に一度きり使えない言葉をと河野裕子さん 切り抜きが見当たらない
諏訪 河西巳恵子
一つだけ良い事は悩みの種だった過体重 この度一・五キロの減少
米子 安田和子
金魚に上見横見が有るとは君だけ見えたらそれで良し
埼玉 木村浩
美容室の入口「髪を短く切って気持が良い」とK君が言う
岡谷 花岡カヲル
大涌谷に到着すると富士山が晴れやかに登場こころおどる
茨城 南村かおり
ブリキのおもちゃは懐かしい あとはモーター発光ダイオード
平塚 今井和裕
七月の風に樹々ゆれる おいでおいでと誘う昭和
富田林 木村安夜子
歌 チェンバロ ヴィオラダガンバ 教会中に澄んだ音広がる(小樂コンサート)
原 太田則子
四国へ四国へ夫任せの旅に出るハンドル握る夫を信じて
原 桜井貴美代
ぴょこぴょこ顔だす紅葉の花 赤いプロペラ大空みすえる
原 泉ののか
アルハンブラ グラナダ 次々と重厚なギターの調べが宿に流れる
原 森樹ひかる
誰もいないオフィスに挨拶をする朝 波紋のように声が広がる
甲賀 中村宣之
しまなみ海道を走り二十四年ぶりに訪れる平山郁夫美術館
福山 杉原真理子
狭庭で実った梅 二か月先が楽しみなシロップ漬けに
北九州 大内美智子
目分量で味付けした食事が終わる いつも何か足りないまま
松山 三好春冥
素足(未来山脈2024年8月号より抜粋)
- 2024年8月2日
- 会員の作品
早採りのワカメのしゃぶしゃぶ生日に海の緑の元気をいただく
一関 貝沼正子
久しく夜の街に出掛ける事もないドアの向こう溶け込めない暗闇
藤井寺 近山紘
レジ待ちに一輪のカーネーションを持っている男子生徒にホッコリ
米子 安田和子
皆は湖周の花見に 私独り部屋から桜吹雪見て持て余す時間
諏訪 河西巳恵子
未婚かつ子なしの僕も読み聞かせ・おかいつソングのライブに出ます
青森 木村美映
給わりし喜び数え幸せ思う朝心病み苦しむ吾子に涙しつも
四条畷 高木邑子
文章講座の冊子「くらしの中から」が四十一号に「きくの会」は二十五期生
飯田 中田多勢子
「美味しいごはんありがとうございます」婿のこの一言にいやされる
諏訪 宮坂夏枝
病を期に仕事半分とする自由人 全て脱会のあとは新短歌のみ
鳥取 小田みく
この船路 皆で渡ろう道を追い 高度に進歩 カッコイイ列島
平塚 今井和裕
午後三時の多摩川沿い 桜の木陰で横になる すっと肌に当たる風が時間を忘れて
東京 下沢統馬
野山の縁冴え渡り書棚に増えゆく珠玉の歌集
福山 杉原真理子
大丸デパート五階のカフェにて「先生、もう三十年生きてね」プロポーズ!?
さいたま 清水哲
梅雨に夢見る雪のようだ久しぶりの恋は 涼しく冷たく全てが光る
埼玉 街川二級
便りがないのは元気な証拠とは言えず真心だけは忘れないで
仙台 狩野和紀
駐車場ぐるぐる回って下って見える駐車のミニカー
千葉 石井義雄
ふり返ればヨーロッパがユーロになる前に各国の旅をした夫と私
諏訪 宮坂きみゑ
戦争の話を聴かせてください 必ず後の世に伝えますから
山梨 岩下善啓
親切は呪いのひとつ微笑みは威嚇のひとつ愉しやわが世
北海道 吉田匡
紫紺和紙五角形の紙風船が破裂して 桔梗咲く文月の始まり
松本 金井宏素
「夕鶴」を語る現状の子供達に如何に映るのか 日本の美しい昔ばなし
伊那 金丸恵美子
また増えた植木鉢 カーテンを開け水やりするのが朝のルーティーン
流山 佐倉玲奈
梅雨晴れの間洗濯機は小気味よいシャツは香り乾いているよ
東京 木下海龍
紙上の名は故里のあの人かあの人が未来山脈の活字が引っぱるもの
近江八幡 芦田文代
京都高瀬川の鷺が諏訪湖の鳥と同じ目を 戻ってきた君
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈2024年7月号より抜粋)
- 2024年6月28日
- 会員の作品
のど自慢大会でマイクに向かっておかあさんありがとうと全盲の人
奈良 木下忠彦
春が来た 空の色が弾んでる 楽しいことひとつでも見つけられそう
京都 岸本和子
小さな家が建ち大きな家が街から消える角の肉屋も売物件と
岡谷 三枝弓子
いい時もそうでない時も温かく人を迎えて咲く桜
諏訪 大野良恵
塩原温泉病院では再起のためリハビリに励んだ
大田原 鈴木和雄
嫌うからきらわれるのか嫌われるからきらうのか 春の曇天
甲賀 中村宜之
新婚さんが桜花を背にポーズ 五十年前初デートのときめき蘇る
大阪 山崎輝男
晩春のタリーズで飲むハニーラテ蜜入れるだけで苦みは生きる
埼玉 須藤ゆかり
人が滅べば紙も仏も消える 宇宙も在りつづけるのかな?
山梨 岩下善敬
桜満開 家族も安泰 孫の手を引き幸せ桜
北九州 大内美智子
予約してひたすら検査や診察を待つ大病院のフロア通院は体力勝負
京都 毛利さち子
閏年 得した気分も日記に特記するものもなく更けてゆく
米子 大塚典子
体調を崩している私には春は目映い 都忘れの花が咲き出した
伊那 金丸恵美子
何処から種とんで来しか菜の花のきいろ鮮やかに群れ満開に
静岡 鈴木那智
五月晴れに行き交う飛行機雲 絵画のような直線が三本さわやかに
下諏訪 藤森静代
田んぼの畔が通学路だった れんげ草の花束をもらったことも
松山 三好春冥
一枚のチケットのもぎり半分夢の続きの映像が見える
藤井寺 近山紘
前ばかり見ていられないとつぶやけば俺も同じと頷かれた夜
諏訪 藤森あゆ美
今年も母の日 結婚している娘たちからプレゼント届く妻感謝の電話
大阪 與島利彦
伝書鳩は数千キロを命かけて家目指す山鳩は自ら餌を探して生きる
下諏訪 長田恵子
降りやまぬ大粒の雨にうんざりするが春の雨は大事
岡谷 片倉嘉子
会う事も叶わなくなってきて兄姉の顔を見てホッとする春の墓参
岡谷 横内静子
庭すみに競り合う緑は浅葱 野萱草 浅き春をわが食卓に
岡谷 三澤隆子
広がる新緑の中に山桜が交じっている 大和魂という言葉があった
松本 金井宏素
新緑は眩しく 散り際も美しかった桜も別に散りたかったわけでは
横浜 街川二級
ホームの温もりの中にいる我に届く老人虐待の声辛し
四条畷 高木邑子
教えてと百姓見習い息子の頼りない婆さん 先生
福知山 東山えい子
満開の桜はカエルの卵が枝にひしめいているようだ
横浜 酒本国武
また一人増えた私の主治医今度は若い女医さんだ
箕輪 市川光男
もう八重の咲く時期なのに雨の日は昼まで蒲団をかぶっています
青森 木村美映