会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
いのち(未来山脈2026年4月号より抜粋)
- 2026年4月1日
- 会員の作品
愛知 川瀬すみ子
- さあ食べよう肉も野菜も蜜柑色に染まってぽかぽか南瓜のシチュー
- 冷蔵庫の冷蔵室へ野菜はお引越し 野菜室は手作りワインが並ぶ
松山 三好春冥
- 成人の日の強風に老いた家が震える 明るい雨戸が欲しい
- 成人の日の思い出は昔話 父も母も逝った家の広さ
福山 杉原真理子
- 阿伏兎観音傍らに宮城道雄の記念碑 眼前に波穏やかな能登原の海
- 墓参時に阿伏兎を訪れた宮城道雄 随筆鞆の津の一節が記念碑に
千曲 中村征子
- 不平不満別にただの言い草なんだけど 齢のせい不徳の至り
- プンプンわたしにはちっとも匂わない 他人と合わない鼻が鳴る
甲賀 中村宣之
- ハンドルを回して削る鉛筆と感性は右手の加減で鋭くなる
- 丸くなった消しゴムでは納得できないひと言を消せなくて
札幌 西沢賢造
- 「朝の水は血管ひやすよ」レモン浮かべた白湯にかわる
- 日曜の掃除戸を開けると八重桜わずか春の雨降るふる
諏訪 藤森あゆ美
- 入線する先頭車両に凛とした顔を感じる特急あずさ
- 夢を追う人々乗せて今日もまた特急あずさは東へ向かう
福知山 東山えい子
- おってかい 村の爺婆頼って来た 医者行きだとか買物だとか
- お礼は若いもんに言っとくでな 今村は独居と空屋
近江八幡 芦田文代
- 枯れ野に柳一本芽を吹いて春ようと言い出した
- 寄っても来ない春はポケットから手を出してもつかめない
神奈川 別府直之
- 具がいっぱいのペペロンチーノ オーダーにピタリ応えるシェフの腕
- ポテトサラダはやはりじゃがいも里芋はマヨネーズには合わんかも
米子 角田次代
- 元旦の朝米子正月マラソンに孫五人が寒風の中四キロを走る
- 老いも若きも笑顔のゴール私も来年は走ってみようかなどと
静岡 鈴木那智
- 川原の松の枝に引掛っているアンパンマンの絵の凧風にはためき寂しそう
- 新春の青空にアンパンマンの絵の凧風うけてグングン上がる元気よく
平塚 今井和裕
- 華厳の滝百メートルの名瀑だ写真に収め想い出とする
- 新宿は下水処理場そのことも若者達は知る由もない
札幌 石井としえ
- 音のないうオノマトペの雪降り積もる排雪苦労思わせながら
- 大雪にマンション住まいも外に出て雪かきしている声かけ合って
岡谷 三澤隆子
- 川霧消えた天竜に隊列くんで南下の鴨 目ざすはいずこ
- 庭に小さな体ちょこまか遊ぶ四十雀 黒いネクタイちらつかせ
下諏訪 長田惠子
- 赤いトタン屋根に霜がつく朝日を浴びるとダイヤモンドに変わる
- れんげそうを毎日見に行った幼い日 耕され肥料となる運命の日まで
岡谷 片倉喜子
- まばらな実の我が庭の南天を活ける 二本束ねてさまになる
- 小さな羽根の部品を取りつけ餅つき機はなめらかな餅をつく
岡谷 横内静子
- 難なくと今年も南天を飾る 今までもこれからもずうっと
- わら馬・土馬・毛糸馬を飾って今年も突っ走ろう
東京 桃谷具久夫
- 煮干しの骨人差し指に突き刺さる胃袋も食べ怨霊鎮め
- 列島を卑怯の矛盾覆う空凛として国花愛を示して
京都 岸本和子
- 師走半ば芥川賞候補作品発表される 畠山丑雄「叫び」も
- 京大在学中に「地の底の記憶」で文芸賞受賞しデビュー
素足(未来山脈2026年3月号より抜粋)
- 2026年3月4日
- 会員の作品
福山 杉原真理子
- 時の流れに心は置き去りのまま師走を迎える
- 新日曜名作座は八月より竹下景子段田安則で新たにスタート
横浜 上平正一
- 闇ふかく風に吹かれて唄っている石女ひとり白い子守唄
- ガラス戸をあけるとベランダの花々が笑って迎えてくれる朝である
箕輪 市川光男
- 小島の声で目覚める朝小川のせせらぎこの中で生きる私は幸せ
- やろうと思っていた事の出来た日の夕焼けは美しい燃え盛る私の心だ
札幌 西沢賢造
- 二度寝をしようと出窓からの木の枝葉しだいに明るんでいく
- 酸素器とともにベッドからソファーへレモンを浮かべた白湯がおいしい
米子 大塚典子
- 今日も頑張りますと鏡の我にグータッチ 笑顔のオーラ
- 百本の玉葱植える私に黄嫌じゃれあい余興か踊る
諏訪 藤森あゆ美
- 痛すぎて人の喉だと思い込む コロナの脅威やり過ごす夜
- 痛いよ痛い頭が痛い 割られてごらんよスイカ割りみたい
札幌 石井としえ
- 姑の松前漬けを今年また私が作る深夜の手仕事
- 若い頃一夜で作れた松前漬け今年は五日指も痛めた
松本 金井宏素
- 溢れそうな新雪に支えられて 大天井岳の斜面を満月が転がっている
- 紅色の淡い夕焼け 太陽はまもなく因幡の海に落ちるだろうとマップがいう
諏訪 宮坂夏枝
- 七十歳の娘の私に写真や食べ物を送ってくれる九十四歳の父
- 今に集中して目前の人にも精一杯対する父の在り方
鳥取 小田みく
- 年女願い事多しこの年に 大社の神様ほほえみがえし
- 松林長くつづき深々と 神殿に向かい新しい年を願う
群馬 剣持政幸
- 長い裾野が広がる麓の街から宇宙へ響かせようこの歌声を
- 好きでたまらぬ歌うことの喜び蟠り捨てて声を合わせる
流山 佐倉玲奈
- 週三日の塾通い十九時から学習と友との語らいを終え帰宅は二十二時半
- テスト前 とにかく自室に籠って机に向かう子ら 結果はいかに
春日井 稲垣嘉子
- 北上夜曲・山のけむりなど静かに流れて葬儀は始まる
- 四人の子らの柱だったねお父さん幾たびも言いたい ありがとう
山梨 岩下善啓
- 古い町の小さな寺 狭い庭に桜が四本
- 寒風の中 緋寒桜の蕾がふくらんでいる
東京 下沢統馬
- 潮風に吹かれ海面が穏やかに揺れている何時間でも座っていられそうだ
- いつまでも坐っていたいクロアチアの海岸 海の青 緑のオリーブがさわやか
東京 木下海龍
- 初礼拝こころ清きを胸にあつく神をまじかに観るを願いて
- 今年こそ文語詩編を詠み初めるむせる声音を浄めつつ
下諏訪 光本恵子
- 群れて飛ぶ白き鳥たちいっせいに湖に降り立ちべちゃべちゃおしゃべり
- 日本近海に眠るレアアース深すぎてね残念と言って死んだ夫
太陽はいま(未来山脈2026年2月号より抜粋)
- 2026年2月5日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
- 初の女性総裁は自民党の高市早苗経験がもたらす自信にじませる
- 大小の違いはあるが 男性社会に飛びこむ緊張感は理解出来る
福山 杉原真理子
- 十月末県北へ 標高五百メートル世羅高原の風に夏の疲れが消えてゆく
- 森と花の絵本ミュージアムガーデンでアサギマダラに出会う
原 泉ののか
- 喜寿に快気に乾杯カンパイ 居並ぶ五人は十五歳
- 「好き勝手やって」のひと言は私への誉め言葉
彦根 久保仁
- 空見ればオリエンタルブルー西洋東洋一枚の絵の中に
- 初めて聞く名前だけど毎日見ているセルリアンブルーの空
札幌 石井としえ
- 題詠のクリスマスに詠むジングルベルかつては良かった歳末商戦
- 広告をわくわく見ていた息子達ウルトラマンにガンダムなどと
米子 大塚典子
- 秋香る ほほ紅さして活を入れ八十婆のスーパー詣で
- モナリザのポーズとってみた 鏡に笑われ私はわたし
青森 木村美映
- 「ムーンリヴァー」歌うシーンのオードリー夢にたちたる朝の涙は
- マンシーニの「ひまわり」聴けばその土の下に眠れる兵を想いき
米子 安田和子
- 浜松の友が帰省するので久し振りに皆で会うことになった
- 三か月も前から約束 宝塚の友も加わり楽しみにしていた
島取 小田みく
- あの世への旅じたくしてゆっくりと長い長い階段を行くおば
- 夫の持つ長い旅路のぼり切り半世紀ぶりにご対面かな
飯田 中田多勢子
- 火曜日午後四十分の訪問リハビリを三ヶ月受けた外を歩きたいため
- ケアマネリハビリの先生リース業者とで合う歩行器を選んでくれる
諏訪 河西已恵子
- 近所の店 清水二のM・Kを知らないか 叫んでいる人きみゑさんとの出会い
- 百歳の人の好きな愛染かつらの主題歌「旅の夜風」はもう飽きた
茨城 南村かおり
- 今年も来られた十一月の蓼科湖 紅葉に間に合い心浮き立つ
- 湖への道を父と共に歩く今年は歩行器も道連れにして
岡谷 佐藤靜枝
- 日本初の女性首相が誕生した二○二五年男の政治に一矢
- 世界ジェンダー平等日本は一一八位女性の意識の低さ
小浜 川嶋和雄
- 秋一番さくら葉紅葉花もよう 春よりきれい散るははかない
- 校舎前ボプラは黄色紅さくら 並んで立ってる絵よりきれいだ
千曲 中村征子
- カラスに突かないでと強く願う 見境なく今を詰め込む燃える袋
- カラスは本気? いたずら? わかっているんだ あの目と嘴
大阪 木村安夜子
- 何でも応えてくれるスマホ トントンいじってあそぶ
- ドライフラワーになったよ 黄薔薇三本 お気に入りの花瓶に挿す
近江八幡 芦田文代
- 亀がぽあんと浮いている カラスのえんどう取るのはあとで
- 誰か誰か待ち伏せしてほしい こんもり若葉が伸びたから
岡谷 片倉嘉子
- くもり空の湖畔五キロを歩く 塩嶺おろしが耳元でヒューヒュー
- くっつき虫がジャージの両脚に棘の種を運ばせ旅するせんだんぐさ
岡谷 横内静子
- やまっちそばは独特 紐状のとろろ芋がのっかってさっくい
- 松本めぐみの里は人気どころ新鮮な農産物が並びつい買い過ぎて
岡谷 三澤隆子
- 通りすがりに振り向いた猫玉ねぎの苗植える吾の手先に見入る
- クリスマスローズの葉陰に置きざりのシクラメン小さな蕾あって
北海道 吉田匡希
- キーウにもガザにも星よ流れるなどうせ願いが叶わないなら
- 赤ちゃんの泣き声じゃなくバンシーの群れの声だよ戦争が来る
伊那 金丸恵美子
- こけしあられが土産に海外へ ブルガリア人は呪いに見えるらしい
- 君の焼く鮎餅が海を渡る 待っている人が大勢いるとメールが届く
奈良 木下忠彦
- 体調が気になって人に会う機会が少なくなる ますます気が衰える
- 人との出会いは知らず知らずエネルギーを買っているようだ
いのち(未来山脈2025年12月号より抜粋)
- 2025年12月1日
- 会員の作品
札幌 石井としえ
- 久しぶり息子の友とかこむ「医は仁術」を説く頼もしさ
- 童顔になったと思えば「太った」と遅い夕食続く歯科医で
奈良 木下忠彦
- リハビリをかねて再びビアノ発表会に 稽古が脳に刺激を与える
- 病んだところを補おうと周りの脳が手助けしているかのようだ
横浜 酒本国武
- 生まれたばかりの蝉が前足だけで金網にぶら下がっていた
- あさ散歩に出ると濃厚卵の黄身のような色の太陽がいた
埼玉 須藤ゆかり
- とことこと夜をなぞって山手線たくさんの言の葉があふれる
- それぞれの駅が待つけど乗り合った顔 顔 顔がさまざま光る
鳥取 小田みく
- 今朝も又血管壁をおし上げ ず~んと高い血圧の数値
- ひさびさのゆるりとした朝むかえおり残暑きびしき今年の夏は
諏訪 宮坂夏技
- 十日間の日本一周クルージングに夫と参加一旦仕事を休んで
- めったに晴れない所でも行く先々快晴 夫が晴れ男のせい
埼玉 木村浩
- 花売り場に菊が増えた彼岸が近づいたかそれで気付くとは
- 菊食べニガミに夏バテを知る自分の体なのに
米子 安田和子
- 喉が変 まさかコロナ プールの中でもマスクしてるもの そんなー
- 盆の仕度で喉の痛みすっかり忘れ買物我家実家親戚の墓参で大忙し
伊那 金丸恵美子
- 「黄花晩節」老いるとも健康で気高くありたいと子からのメール開き思う
- 夕日が西の空を紅花色に染める 私の穏やかな日々やんわりと過ぐ
静岡 鈴木那智
- 秋むしの声を楽しみ籠に草を敷く虫はすぐ隠れ紛れる
- 虫籠をもち中を確しかむ龍の重さのみでみ命は存在
岡谷 花岡カヲル
- 夕方五時市の愛の鐘が鳴る 悲し気に遠吠をする近所の犬
- 庭石の上に蝉 人差指をそっと近づけるとぱっと飛び去る
近江 八幡芦田文代
- 何もしなかった していない自分に言いたいこと何
- ひらがなが好き漢字もまるいのが好きまるまるがいい痛くない
諏訪 大野良恵
- 今日の私を浄化する最初の一杯 あとはただ酔いに紛れる
- 節度ある飲酒を心がけつつカレンダーに休肝日はない
東京 桃谷具久夫
- 核の呵責アインシュタイン苛まれ溢れる懺悔コーラシュワシュワ
- 花綵は鉄条網にかえられて事大になれて長い物にはまかれろリード
坂城 宮原志津子
- とうとうあなたは逝ってしまった「今日あいに行くよ」とラインした朝
- 秋桜ゆれる園庭 園児たちと鬼ごっこ元気なあなたを思い出す
愛知 川瀬すみ子
- どの星にも 何か住んでたか何か住んでるか今から住むのが居るさ
- どの川も 地元の人らの生活の場いこいの場恐さを知っている人らの
岡谷 佐藤静枝
- 安曇野の山に迎えられ年一度仲間と学ぶ健康のつどい
- 平均寿命も健康寿命も越えず逝った夫の明朗な月
原 桜井貴美代
- 厚木まで曾孫に会いにひた走りアンパンマンのベビー服と
- 八十路越え曾孫に会える喜びに心は弾む足どり軽く
原 泉ののか
- ひまわりプロジェクトに参加する 届いた六粒のたね
- 絵にかく向日葵の中心は格子 よぉく観ると螺線状
原 山下ナツ子
- 手から手へ 小さな絵本から蝶が飛んだ
- 娘の車が曲がり角を曲がり消えていく ふたたび一人
原 太田則子
- 何光年も前の星のきらめき 今の一瞬が短くも尊い
- 夏の大三角の間に天の川 神話を思い目をこらす
森 樹ひかる
- もう後戻りできない チャレンジに挑む毎日の私
- 舞台に立つ自分の姿を浮かべるのは恐怖でしかなかった
松山 三好春冥
- 冷凍ビザの加熱が足りなかっ た責める者はいない無精の食卓
- 焦げた食パンの耳を熱いココアに浸す ほどよい加減は難しい
素足(未来山脈2025年11月号より抜粋)
- 2025年11月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 日本の地下のマグマも吹き出すか猛暑日予報の赤い天気図
- アスファルトの熱気に負けずオニノゲシ猛暑の歩道へギザギザ伸ばす
箕輪 市川光男
- 太陽さんやっとお目覚めかい私はもう草刈りを終えたよと手を合わす
- 七月の太陽は朝からギラギラ畑の仕事は草々に終えてさあビールだ
岡谷 花岡カヲル
- 背高のっぽの赤いバラ湖風にふかれて坪庭を賑わす
- 血圧の薬を飲んでいる私 奈良漬を漬けると娘は嘆く
青森 木村美映
- 二十代は脱色・染色を繰り返し気づいたら髪がなくなっていた
- 還暦間近・未婚独身いまさらにウイッグなんてかぶる気もな
愛知 稲垣嘉子
- 義父さんあなたの息子も車椅子ですハンサムだった遺影に告える
- もっと力出してよ夫よベッドより車椅子の移動大変だあ
近江八幡 芦田文代
- 塗り重なった文字の看板が話しかける その商のむかし昔
- ホーローの看板は錆びてる ぼんやりした灯は残る八百屋
東京 桃谷具久夫
- 蝉一匹平和の森で歌ってる心に響く初のテノール
- 油蝉夜明け前から気張り鳴く帰る行く人ともかくファック
札幌 西沢賢造
- 鼻の酸素チューブはずれ覚めて知らずに逝ってしまうのか「ハレルヤ」
- 「悟ったようなことなど言わないで」と五十インチのテレビが届いた
飯田 中田多勢子
- 大宮諏訪神社秋季祭典を二十三日神社や大宮通り桜並木一帯で繰り広げ
- 同神社は東野全域橋北・橋南一部三十ヵ町一五〇〇世帯を氏子とする
千曲 中村征子
- 降りる沸く 天から地から 雨の一滴と入れかわる虫の演奏家たち
- 胡瓜から涙がポタポタ 大事にしすぎたせっかくのいただき物
仙台 狩野和紀
- 手の届きそうにない事を適えようとする願いが若さの秘訣
- 人の物ほど良く見えても鏡と睨めっこして諦めるのが一番
さいたま 清水哲
- 医大の教授は「血圧は?」測定リストを見せ「薬は出しません」
- 心臓に二つのポンプあり 一日に一〇八〇〇〇回打つ働きにただ深く感謝
横浜 上平正一
- どこかで夜汽車がくしゃみしながら走ってるね ウンウン
- 夜汽車が何か食べ物を探してるみたいだね ウン ウン
東京 木下海龍
- なんとかあと二年は生きて居ようと思って励んでおります
- 九十一歳になるといろいろと身体の限界も感じている日々
群馬 剣持政幸
- 昔梓志乃が歌ったカラオケが脳裏を掠めるラブホの空間
- 既婚男性は年上の部下ハーレムな寝言の前に聞いておけ
松本 金井宏素
- 山稜を赤く染めて日が昇る 視界から生物の気配が消えた神無月
- 物心ついたころから時計はこの柱に掛かっていた 思えば長い道程だった
流山 佐倉玲奈
- 十月にもなるのに今日も暑い それでも朝晩は涼風
- 昨年は出られなかった体育祭に今年は百mを全力で駆け抜ける
山梨 岩下善啓
- 増穂登り窯で零時から六時 ひとり窯焚き当番
- 久しぶりの徹夜 六時間ひとりで登り窯に薪を焚べる
下諏訪 光本恵子
- 木の実がいっぱい落ちている公園 人と熊の共存はありえないというが
- 熊のやさしい目が気にかかる熊と人間の共存など 雲が笑っている
太陽はいま(未来山脈2025年10月号より抜粋)
- 2025年10月1日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- 心地よき水の温度に染付の器十客すすげば至福
- 白いスニーカーで歩くモール キャンディのような夏菊の束を買う
米子 角田次代
- 朝からうきうき今日は友の家で四人のお茶会 お久しぶり
- お手本のような友のおもてなしはいつもながらに学びの時
藤井寺 近山紘
- 激しい雨溢れる水滝の様に流れる大川の橋桁の危うさ
- 東の空の雲が切れて真っ青な空が顔を出す初めての蝉の声届く
岡谷 三枝弓子
- 辞書でというとスマホが早いと云う人時代にとり残されている
- 亡夫が遺した物は消えて百合も絶えたことし私が咲かせる
京都 岸本和子
- 夏至の日の「天声人語」高校語資料集大人の間で異例の売れ行きと
- 高校で芳しくなければ視点を変える知恵と勇気が必要だったのだ
岡谷 片倉嘉子
- 一本のねじ花の茎が伸びてもうすぐ咲くのを心待ちにする
- 五センチの茎が三倍も伸びピンクの小花をらせん状につける
岡谷 横内静子
- 朝日を浴びてクオーキング 電柱の上が定位置の鳶に今日も“おはよう”
- 気持ちよりずっと歳をとっている身体に 次々とメスが入って
岡谷 三澤隆子
- 合宿の力士の朝稽古を見る湖畔 光る汗に満面もキラキラ
- 互いにゆずらぬ力士のぶつかりあい 紅さした姫りんご傍らに
下諏訪 長田惠子
- キムチにマヨネーズは邪道ですか おいしいから許してください
- 誇るものがない人は口を閉ざし静かに生きよとあなたは思っている
大阪 花菜菜菜
- 息吸うための理由は きょう今を生きるため 雨よ降って来い
- 小一時間歩く+ラジオ体操 朝のルーティンおはようから
平塚 今井和裕
- 丘白く見上げたものよ下界から今度は逆に眼を下し眠る
- この街に情けをかけて叙情なり街を助けて風呂敷広げ
諏訪 宮坂夏枝
- 娘一家とUSJ万博行きの強行軍ただただ後についていこう
- 小学生ふたり園児ふたりの孫 万博には大人四人の手が要るね
愛知 川瀬すみ子
- イチローのスピーチを中卒と言うならトランプの中卒英語は何ぞや
- キトラ古墳ツアーに出かけた朝に咲いた君 キトラのバラと名付け
諏訪 河西巳恵子
- 南側窓に古びた大きな製材所 モネのサン・ラザール駅に似る
- 郭公 杜鵑の声とうに聞かない 川畑も山際も家 家 家
坂城 宮原志津子
- 傷口ふさがらず外来受診続く夫退院してから三ヶ月もの日々
- シャワーで傷口洗い手当する私 夫から「ありがとう」のシャワー浴びる
横浜 上平正一
- 朝大ゲンカしなが知らぬふりしてパンを齧っている おかしな夫婦
- コンクリートの坂道の角にいちりん咲いているど根性すみれ
伊那 金丸恵美子
- 子供達が一斉に下校 元気な声が一際響き渡る 今日は一学期終業式
- 子供の心にふる里をと始めた読み聞かせ活動 未来を信じて続ける
大阪 山崎輝男
- 歴代最高四十一・八度を記録 酷暑日続出日本は熱帯化
- 四十度超えのスペイン 酷暑による死者千三百地球沸騰
神奈川 別府直之
- 朝霧高原を埋め尽くすボーイスカウトのテント自然と向き合う
- 薪を拾い火を熾すボーイのお兄ちゃんたちがたまらなくたくましい
下諏訪 藤森あゆ美
- 近づくほど涙あふれる 泣き腫らした目のまま家には帰れず
- 初めて家を通過する あふれ出る涙を止めるまでの時間
静岡 鈴木那智
- 厚みあるそら豆の大きな莢が天に向かって育つ直立をし
- 大粒の強い甘味のそら豆だが青臭さが苦手な人も
埼玉 須藤ゆかり
- 愛していれば 性善説のきらめきはガラスのこころに乱反射する
- 煮え切らないわたしはせんを飼っているセミロング セミダブル うつせみ
岡谷 花岡カヲル
- 築五十五年私の部屋 蛍光灯ピカピカLEDライトに変わる
- 電気屋さん八畳間だが天井が高いから十二要間用のLEDだと言う
下諏訪 中西まさこ
- 群青の海峡の底に沈めたいYへの恋慕とTへの憎悪
- 波しぶき上げ揺れる船の甲板の手摺りにもたれ血の色の酒
北海道 吉田匡希
- 歯並びの正しさだけが真実で皮膚果てしなく偽証のすべて
- たましい と言葉にするとき唇と唇触れるのはただ一度
いのち(未来山脈2025年9月号より抜粋)
- 2025年9月1日
- 会員の作品
京都 岸本和子
- ブラタモリ宮古島 魅惑のブルーに囲まれた遠い遠い夢の島
- 「ちょっとみやこじままで」先生の余裕のひとこと 私も言ってみたいです
一関 貝沼正子
- 首あおく鳩歩み来る駅前に人を待つ間の思いあれこれ
- こんなにも今満開の山桜訪う人もなく楸邨の句碑
大阪 花菜菜菜
- 夜ふけてドアノブの音 夫かと驚く お隣さんご帰宅の音
- 徘徊も困ったものよ 知らせをくれた「梅田曽根崎警察署」
茨城 南村かおり
- 北海道富良野 何年も憧れ写真集で見た地に立っている
- 家族で行けるこの恵み 最終プランは夫が決めた
岡谷 花岡カヲル
- 四季咲きのピンクの大輪のバラ卒寿を祝ってくれるか庭に咲きこぼれる
- 地元の大きな梅とやっと出会い我家の常備食さっぱり漬けを作る
平塚 今井和裕
- 雪道に一歩ずつ進め雪止んでそのくり返しに時間感じる
- そんなにも固執するのか止めてみな気分転換風に吹かれて
岡谷 佐藤靜枝
- 早朝に尾瀬へ向かう六月十日空模様気になるツアー旅
- 亡夫の写真に手を振り久々の旅に出る歩く不安を封じ込め
彦根 久保仁
- 赤と青交じれば高貴な色 古代から続くチリアンパープル
- 乳首紙める赤子のようにキスする君はパープルの葡萄咥え
岡谷 征矢雅子
- 黒くたたずむホテル群のまばらな灯り和倉温泉に雨けむる
- しょっぱい和倉の温泉なめてみる貸し切りの湯のようわれ一人
小浜 川嶋和雄
- わが里は福井県小浜市池河内 仕事は炭焼きおれ山奥育ち
- 我家は茅葺屋根だ三角の 七十坪ほど二階は焚き木が
下諏訪 笠原真由美
- ソープ皿きれいに洗ってシトラスの香の石鹸をのせれば夏来ぬ
- 南口を出て下連雀の道を歩くリアルな夢に笑ってしまう
岡谷 三澤隆子
- 小さきわが畑の予定巡らせて今年も実家の苗場へ向かう
- 兄のくれた助言を今は甥から教えられ植える苗の品定め
岡谷 片倉嘉子
- 帰りぎわ師から手渡された自慢焼き手のひらにぬくもりいつまでも
- バスのなかではテンション高めの会話とびかう 仲間とのバスハイク
岡谷 長田惠子
- 早苗の田と麦秋の畑がパッチワーク模様に広がる松本平 夏はもうすぐ
- 生きているのではなく生かされている 人生を全うするとは
岡谷 横内静子
- 道すがら知らない者同士の他愛もない会話 互いの帽子を褒め合う
- 『ホケキヨ」と鳴く鴬が電線に止まって 何度聞いても。ホーホケキヨ。
湯河原 別府直之
- お店に入ると店員の皆さんの笑顔 なめろうの前でこちらも笑顔
- きょうのオススメがインスタで届いた! 刺身もフライもどれもうまそう
近江八幡 岸田文代
- 問うたら良いけど東京は小走りで目印さえ探せない
- アナログの旅はもっぱらしゃべり 人間ですやん
埼玉 木村浩
- 春日差しが誘うか散歩しても誰とも手も握れず一人行く
- 春日差し帽子をかぶりなおす影は日差しを止めているんだ
諏訪 藤森あゆ美
- 何人も重なるようにたむろしてその集団は私だけを待つ
- 傘連判状に並ばれて私は円の中心となる
静岡 鈴木那智
- 描きたる絵の中のキャラクターや動物が飛び動く3Dの世界
- 人工の知能を使い下水道管の水漏れを探すAIロボットに熱い視線
東京 桃谷具久夫
- フランシスコ教皇悼む世界善導を発する宗教家どれだけありや
- 死んだ人のCDもらう同じ歌を歌った世代その人紹介されたよう
米子 大塚典子
- わたしたちどうだったろう 燕の子育て本気度に若き日想う
- 夜明けから巣づくりに余念ない燕 パートナーみつかって良かったね
諏訪 河西巳恵子
- 猫の額ほどの公園 桜蕊積もり古いカセットから力なくラジオ体操第一
- 唐突に俳句好き短歌嫌いはどっちでも 町内針槐の花粉まみれ
素足(未来山脈2025年8月号より抜粋)
- 2025年7月30日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
- ひと雨ごとに枝葉をのばす緑の山々 大きく深呼吸している
- 何処から来たの我が家に着地蒲公英の綿毛 風に吹かれ空気に遊ばれ
神奈川 別府直之
- 村にひとつの一貫校 児童 生徒も 先生 保護者もみな輝いている
- 緊張した面持ちで防災訓練に臨む ひとりだけ迎えがまだ来ない
伊那 金丸恵美子
- 童謡唱歌の杜へようこそと始まる唱歌教室 初夏の歌が懐かしく沁みる
- 「夏は来ぬ」和歌からの言葉が美しい 歳を重ねて理解する日本の風景
岡谷 花岡カヲル
- 玄関に彩なすクンシラン 日毎に色を染めて咲きほこる
- 大の里二十三年初土俵から十三場所で七十五代横綱となる
愛知 川瀬すみ子
- メンズシャツSで体型カバーいざハツラツと自由に動く胸のあたり
- 「今ときの中だよ」返信有り車窓の動画付き 知らんけどグー
東京 桃谷具久夫
- コンクリート狭隘に咲くすみれ花背景の惨めに幸せ映える
- 赤トンボ国のため死んでくれ 革まり鉄アメリカに攻め入る
横浜 上平正一
- さくらの花に蝶がしがみついて流れてゆく・・・春の夕ぐれ
- さみしいなぁ・・・夢の中でも荒野を彷徨っているわたし
諏訪 宮坂夏枝
- 自分を労う計画「古稀の誕生日は好きな宿で過ごす」を敢行
- 行ってみたかった松本十帖自分にだけ相談してネット予約
平塚 今井和裕
- 日本人旅行といえば温泉と相場は決まり宿の料理
- 暖かき人の心を無にするな歌じゃないが人を信じて
箕輪 市川光男
- 誰も居ない朝一番の畑に立って深呼吸さあ仕事だ仙丈の日の出も近い
- アルプスの雪解け水を集めて天竜川はゴウゴウと流れる真に龍の姿だ
山梨 岩下善啓
- 戦後八十年 昭和も遠くなりにけり
- 明治も遠くなりにけり 小沢昭一がよく言っていたな
さいたま 清水哲
- 鶏インフル アメリカで牛に感染し死亡者も発生
- 十七年前に警鐘した鶏ウイルスはアメリカで牛から人へ既に感染
仙台 狩野和紀
- 四十年前の写真が不意に出てきた今日を知らずに笑顔満開の貴女
- 長屋育ちでマンションに憧れた訳じゃない本当は息苦しかった
下諏訪 光本恵子
- 車の運転は夫 十四歳の文子と六歳の玲奈と鳥取へ里帰りの夏だった
- 笑顔を遺してあの星になった坂本九 日本航空一二三便墜落事故で亡くなる
太陽はいま(未来山脈2025年7月号より抜粋)
- 2025年6月30日
- 会員の作品
千曲 中村征子
- 言いたい言えない「遊びにおいで」近くに若い親子が越してきた
- 散歩は土手の道 ピンクの残る山に鯉のぼりを数えようっと
小浜 川嶋和雄
- 遠くよりさくら公園めれば 天辺紅いか近づけば蕾が
- 俺の見る遠敷の里のさくら皆 山も野もです白で満開だ
一関 貝沼正子
- 相槌の様子でわかるこの話二度目と分かりさらりと流す
- 右側に傾く古稀の後ろ手に左、左と気合を入れる
藤井寺 近山紘
- スーパーの出口で知らない女が最近夫を亡してネと寂しさを語る
- 日常の生活リズムが突然崩れて行き場のない時が流れるという
米子 角田次代
- 暖かくて気持ちいい布団の中で背伸びする今日の予報は晴れ
- 花吹雪の中速度を落して走るこころの憂さも花びらとともに
埼玉 木村浩
- もつなのに高級もつ鍋分かるような分からないような
- 洋風もつ鍋おもしろそうだけど食わず嫌いをおしとおす
札幌 石井としえ
- 母親のみやげに手にしたエンゴサク春の遠足どの子もきまって
- 思い出はそこに行き着く春の日に野原で食べた子等とのおにぎり
青森 木村美映
- このところ禁酒がうまく続いていてドヤ顔しつつ定期採血
- 肩こりの薬を処方してもらうおそらく眼鏡があわないせいだ
原 桜井貴美代
- 出発だハンドル握る夫イキイキ春の訪れ心華やぐ
- みちのくの三春滝桜 生きて千年 紅の花びら滝の流れ
原 太田則子
- ほっ眩しい朝日をさけるか恥じらうかクリスマスローズの花ゆかし
- 杏の花 蕾も花びらも丸っこいそれを見る目もまるい
原 森樹ひかる
- またたく間に輝く緑の森に 感激の一瞬
- 柔らかな緑 優しい色つける小さな野の花に春の陽ざし
原 泉ののか
- 春休み雪がみたいとやってきた孫 大手ひろげて迎える
- 標高差四六六メートルを一気に上がるロープウェイ 鳥になる
大阪 加藤邦昭
- ゴールデンウィークの息子の帰省に合わせ関西万博を見学する
- 煩雑な予約手続きだけを息子に任せたが彼は入場料も負担する
茨城 南村かおり
- 十年ぶりに姪の家訪れる 子供たちの成長ぶりに目を見張る
- 訪れたマンションの高層階が姪の家 最高の景色と広い空間
山梨 岩下善啓
- 黄昏の伏魔殿 老師念願の障壁画が完成する
- 大画伯に色紙を所望すると障壁画の小下図を載く
岡谷 花岡カヲル
- 黄砂くる対岸の美しい景色ぼやけしだいに全て見えなくなった(三月二十五日)
- 洗濯物は室内干とする 近くの西山もうっすらと黄砂
埼玉 街川二級
- 躑躅枯れゆく 今こんなにも暇という現実もまた私にはやさしさか
- 読み終えて久しい本を処分する前にもう一度読む烈しさが欲しいが
福山 杉原真理子
- ICUで面会以来五年ぶりに兄に会う 積る話を次々に
- 施設に暮らし一年不自由な体で頑張る兄 手の温もりに涙 涙
東京 須藤ゆかり
- 腹のいたいひとが隣りで寝つづけて電車はいっそう各停になる
- ゆらゆらと水草めいて泣き出しそう 泣き出しそう 膝頭をあやす
坂城 宮原志津子
- 病棟スタッフの見送り受けピリオド打つ夫 入院生活一〇五日間
- 小雪舞う一月緊急手術そして桜舞う今 経過観察になり家路へ
富田林 木村安代子
- 各駅停車の窓の向こう 土を耕す人の背中が丸い
- まあるい地球のてっぺんに立つ気分 春の星天あおぐ
松山 三好春冥
- 後期高齢者になり不都合なことが増えた カフェインレスにしよう
- コーヒーも紅茶もカフェインレス 人生我慢できないことばかり
米子 大塚典子
- 幼より小さなよろこび見つけるを得意とし一寸先を生きる
- ブクリブクリと浮かんでくる過去をプクリプクリと春の川に流す
いのち(未来山脈2025年6月号より抜粋)
- 2025年5月29日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- この再会をわたしが引き寄せた 一周巡って理想の友だち
- だから感覚がすべてなんだよ触ってごらんスワロフスキーの髪飾り
湯河原 別府直之
- 新橋で久方ぶりの歌会が開催されることの嬉しさ
- 参加した歌人六人 諏訪からは日帰り参加の光本先生
諏訪 河西巳恵子
- 飴三個掌に「これ舐めて待っていてね」多美子さん吹雪の中買い物に
- こんなに食べられないと言った昼食を完食 職員さん皆腕利きのシェフ
米子 安田和子
- 家を建てて五十年近く私の身体と一緒であちこちガタがきだした
- 板壁の張り替えに始まり里帰りした娘に廊下がブワブワと指摘される
原 太田則子
- 小川の水音が増すころ岸辺にはハート型のすみれの葉
- 踏まれても踏まれても起き上がる草 形状記憶で生きている
原 桜井貴美代
- 夢うつつ一首出来たにんまり目覚めてメモを記憶はどこへ
- 曇り空みぞれが降る空 春が来るぞと暗くヒバリ
原 泉ののか
- 案内たよりに階段をのぼる 迎えてくれた沈丁花の香
- ヒールの音ひびく道をランドセルの子ら駆けおりてゆく
原 森樹ひかる
- 重い扉を開けてみる 次々いろんな扉が現われてきた
- こんどは思い切ってこちらの扉にしよう 未知の世界へ
青森 木村美映
- ずんだもんです漆黒のめたんですねえねえめたんなあにずんだもん?
- 眼鏡にはハズキルーベを重ね掛け尻に敷かれたい訳ではないが
松本 金井宏素
- 落葉松に春雪 梢に僅かな薄紅がさして祭の始まる儀式
- 苦手な冬がもったいないほど早く過ぎて 気づけば春の景色に満ちる
飯田 中田多勢子
- 昔住んでいた遠い平岡から近くの牛牧霊園に墓を移した二妹金田家
- 新幕地へ二妹夫婦三妹夫婦と私五人で揃って彼岸の入りにお参りに
仙台 狩野和紀
- 還暦となり募る淋しさは自業自得か芽吹き陽が差さないだけ
- 心なき一言のダメージの重さはキロで計って間に合うのか
岡谷 花岡カヲル
- 春一番庭先にスノードロップ小さな白い鈴をだいて外界をのぞく
- 木戸先の福寿草 寒のもどり雪の中でふるえている
岡谷 佐藤靜枝
- 春に亡くなった夫と妹福寿草は土の中で出番を待っている
- 今生きていたらと年を数える三歳違いの妹の祥月命日
大阪 山崎輝男
- 港(はま)を生きて半世紀 想い出話はつきず霧笛鳴る中夜が深ける
- タンカーの着桟速度は秒速八センチ「匠の技」語るパイロット
千曲 中村征子
- 行く度品は薄くなり厚くなる金額 千円札が百円に見える
- 「ヤショ旨かった」と釈迦 切り分けられたヤショウマのその後が気になる
埼玉 須藤ゆかり
- 冬のままの平原に吹く風の向き おでんの好み 変わったんだね
- 雪がまだ雲のかたちを保つから思いは思いのまま重くなる
奈良 木下忠彦
- 人生の終わりを考えよと脳梗塞の鉄槌 何をどう考えようか
- 頭は小賢しく考える 命が納得するのは人やこの世に何を残したか
一関 貝沼正子
- たっぷりと水をあげれば立ち上がる鉢のカラーはまだまだ元気
- プランターを退けての声は水仙か黄色の葉群わっとあふれる
京都 岸本和子
- たった一キロ南の地なれど鴨川デルタ 世間への出入り口
- 東に京大西に同志社青春の交差点 川風も弾んでいる
札幌 西沢賢造
- 小さき人を継ぐアレクシェーヴィチ「過去が未来か」と福島に立つ
- 避難指示の報に百二歳の男故郷喪失に自死する
近江八幡 芦田文代
- 目の前に新聞読む男がいる さい先良いな今日の電車
- スマホする娘の爪短くてほっとほっとの朝の電車
富田林 木村安夜子
- 文字忘れ言葉を忘れる日の近未来 ふと想う
- あの人はもう亡くなったよ ずっとあとから聞く訃報 ぽつんと一軒家
坂城 宮原志津子
- 雪も溶け池端にふきのとうの新芽が あれから二ヶ月も過ぎた
- マイコバクテリウム初めて知る感染症 傷口から侵入長びく治療
京都 毛利さち子
- 方向性のない会話繰り返してる 目の前の抹茶パフェほろ苦い
- みんなみんな過去になるのだ素敵な場面にはフラッシュを焚こう