会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
太陽はいま(未来山脈2026年8月号より抜粋
- 2026年8月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 頂きし筍五本のゴワゴワよ皮剥き急ぐ可燃ゴミの朝
- このバッグに入れてたはずの鍵がない 玄関先に迫る夕闇
横浜 街川二級
- 自分の生まれた頃の流行歌に覚える奇妙な懐かしさ 生き方を思う
- 地面を這う類の花を撫でつけて青空のもとまだ肌寒く海風は
愛知 川瀬すみ子
- 早く終わって帰りたいだけ 美容院緊張しまくり 葉隠れの老い
- 早く終わってウォーターベッド楽しみたいだけ リハビリ整形外科
亀岡 毛利さち子
- 降り続く雨降り続く雨 あいにくの雨 でも恵みの雨
- 傘をかぶっても心は濡れるから今日は逢いには行きません
藤井寺 近山紘
- ほんのりと夕暮れの匂いまだ話の続きがあるのに手袋をする
- もう行くよはまだ行かないの暗示柔らかい光の向こうの小さな駅舎
福知山 東山えい子
- 花野菜のポリ袋が消えた 数軒目あった! 倍値で
- ナフサなくビル建設が進まぬと二男三男がなげく中東情勢
札幌 石井としえ
- 生垣の緑が踊って動物の形に見えてる発熱外来
- 熱が出て休んでしまったデイサービス皆勤賞を今年はのがす
坂城 宮原志津子
- またひとり面会も手を振ることも出来ず幼き頃の友が召された
- 山の分教場から地元の学校へ小学生の頃机並べて学んだ友だった
松山 三好春冥
- 春と夏の狭間に小雨のにおい 懐に傘はあっても濡れて帰る
- あわただしくストーブと扇風機を置き換える 短い春の雨のにおい
諏訪 大野良恵
- 突然にビシッと背中横切る痛みウッとひと声身動きできず
- 鏡の前に立ったまま背中の緊急事態に山ほどの疑問符
大阪 花菜菜菜
- 「こんにちは」の挨拶より毎朝のおはよう おはようがいい
- 請け負いの途絶えた日々思い出すかに公園の椅子にいる夫
静岡 鈴木那智
- 雨のなか楽しそう蕗の葉は初夏のあめに打たれ戯れている
- 葉のさきが緑の傘のよう蕗の葉は秋田音頭の「唐傘いらぬ」と
米子 大塚典子
- ♪あかりをつけましょ雪洞に ココロ踊る雛祭り一月共にする
- お雛さまに膳を ばら寿司・ゆで卵・分葱の味噌和えでおもてなし
岡谷 佐藤靜枝
- 亡妹の親友から手紙がくる静枝お姉さんいつか会えますか
- 妹が逝って三十六年忘れないでいてくれる人の暖かさ
茨城 南村かおり
- 同級生を尋ねて長野訪問 さらにもう一人参加同級会はじまる
- ランチは小布施花屋にて旬の食材を楽しみながら会話が尽きない
諏訪 河西巳恵子
- 生きていると思わぬ恐い事態が 角間川の花筏紆余曲折かつ早い
- 一学期最初の休日 隣り合せの中学高校 川辺の桜無口に満開
横浜 上平正一
- 体操で良く撓るからだのポッケから梅の実ひとつポロリとおちた
- 体操のポッケからおちた梅の実を小犬が鼻先で転がしている
山梨 岩下善啓
- 日本は負けると思ってたよ 怒られるからそんな事言わなかったけどね
- 甲府空襲を見て「日本は負けるな」と七歳の少女は思った
米子 角田次代
- 友の突然の訃報心臓が高鳴り木の葉の揺れるのをただ見ている
- ものしりで世話好きだった貴女 お礼の言葉が飛び交うお別れ会
京都 岸本和子
- コッペパンが好き 何でも受け入れてくれる幼なじみみたいで
- 「恵方巻を食べてみたい」とかいう鬼の子と遊んでみたら楽しかろう
伊那 金丸恵美子
- 小さな手の平にちっちゃなカラスエンドウの種 実って毀れてまた実る
- 「梅が漬かったパリパリで美味しい」とメールが届く 四季折々の郷土漬け
北海道 吉田匡希
- 今すぐに馬身になって走りたい紙片にかすれた文字のよろめき
- カーテンが夜風に膨れいずれしぼむ部屋の主はもう戻らない
松本 金井宏素
- 沙羅の落花が青苔の上で濡れている 潤う八十九歳の朝
- 無造作に植えた苔桃にいつの間にか珊瑚のような玉が光っている
岡谷 三枝弓子
- 代掻きがいつしか交流の場に 泥田に泳ぐ子 鬼ごっこする子
- 学校田の空に飛ぶ子のはじける声 春の行事となる稲田づくり
いのち(未来山脈2026年7月号より抜粋)
- 2026年7月1日
- 会員の作品
京都 岸本和子
- 叡山への雲母坂 細い山道に何とも素敵なキラキラネーム
- ボールペンより鉛筆 間違い直しを認めてくれる鉛筆が好き
横浜 上平正一
- 五郎助ほう何もいわずに羽根広げ黄泉の国へ旅立てり
- 五郎助ほうと人恋して人の世を憂いで長寿の「梟」黄泉の空へ
諏訪 大野良恵
- 煩わしいうつつ放れて沈み入るミシンの針目すすむ毎に
- 余り布誰を採用するか吟味して時を置き去りにする
松山 三好春冥
- こいのぼりの矢車が金の光を弾く 黄砂飛来の予報
- 黄砂飛来の前日に洗濯を終えて一服 ボットの湯が冷めていた
下諏訪 中西まさこ
- ローマの夏どの店も観光客ばかり座ればすぐに「マルゲリータ?」と
- まずサラダそしてクワトロフォルマッジ注文は英語だがイタリア訛り
諏訪 宮坂夏枝
- f分の一ゆらぎという言葉を知る いやしの音色のこと
- クリスタルボウルで奏でるその音色いやしの波動が身体に入る
福知山 東山えい子
- 最後だと九十四歳の兄が会いに来た ヨタヨタ運転ひやひや見送る
- 時には父母だった兄姉たちの想い出 逝った空見上げる
一関 貝沼正子
- 沖縄のエイサーの響き耳奥に眠れぬ夜は踊り出すべし
- ゴリゴリと首を回せば音がして旅の三日目家が恋しい
東京 下沢統馬
- ウィーンからブラハへ 冬のヨーロッパはどこも寒い
- 可愛い街 一言で表すとこうなる 欧州で一番好きな街並み
坂城 宮原志津子
- 連休に子や孫達やって来る天日干しふかふか寝具五人分
- 娘や孫娘食事作り任せてと色々揃え賑やかな夕食手卷寿し完成
岡谷 佐藤靜枝
- 月一度姉の家でカレーの日甥の次男が仕事帰りにとんでくる
- 地元で就職した甥の次男カレーの日に会える楽しみ
甲賀 中村宣之
- 裏白のチラシに昨日を詠んで スーパーへ行くとするか
- レシピ通りにいかないものだ人生の塩加減を間違えるなよ
静岡 鈴木那智
- 山寺の修業僧ひとり瞑想す釈迦入滅の絵の掛かる
- 灌仏会あま茶を注ぐ釈迦立像に歓喜して雨降らす八大龍王
大阪 花菜菜菜
- 潮風がはこんでくる風に誘われ五月に遊ばれる
- 独りはいいものだ 気ままに旅して海辺の此処
埼玉 木村浩
- ソファーもう何十年有るだろう七十を過ぎ座る時間長くなる
- ソファー一人用でも重いテレビに向けるだけで力がなくなった
近江八幡 芦田文代
- 継ぎ当てなんて死語かも リハビリや言うて靴下繕う雪の日
- 凄い家に住んでんのや「ナビあるぜ」と切り返された幼な会
鳥取 小田みく
- 海近し温泉に孫と来て合格祝いにジュースでカンパイ!!
- サイレンの音遠くにて スピードいはんか はたまた火事か
流山 佐倉玲奈
- 水耕栽培で育てたヒメモンステラ 大きなガラス容器に移しメダカを二匹
- 根と根の隙間を泳ぐ二匹のメダカ 毎朝生存確認のぞきこむ
小浜 川嶋和雄
- 東京の桜の開花聞いた俺 小浜も咲いたか公園へ行く
- 桜花重なり合って咲いている 婦人のカメラは小枝の蕾を
諏訪 藤森あゆ美
- いつの間に五十六にもなったのか時計の針は今日も右回り
- 十九でファンデーションを塗り始め化粧というもの知った赤い日
北海道 吉田匡希
- 嫉妬にもリボンかければ八重咲きのさくらばなにも見えなくはない
- 落ちる時も綺麗なままで椿に鼻寄せてもなんの匂いもしない
素足(未来山脈2026年6月号より抜粋)
- 2026年6月1日
- 会員の作品
愛知 川瀬すみ子
- 「さみしいね白い花木は」と君は言う不意打ちの事シデコブシの下
- これも好き あっちもそっちも好き 気付いたらGバン六着の老い
下諏訪 笠原真由美
- やわらかな松の新芽が匂い立つ坂の途中の家の庭先
- “あの国”の成り立ちにあった歪みは苦くまたひとつ戦争が始まった
松本 金井宏素
- 少年期のおぼろな記憶を手繰りなが霜野を行く八十八歳
- 穏やかな流れに小枝を落とし速さを競う 湧き上がる歓声は幻聴
飯田 中田多勢子
- 組合の空家三軒が解体される昭和二十二年飯田大火後に建てられた
- 借地へ建てられた家で返すときには更地にしての約束地続きの三軒
平塚 今井和裕
- 後を追う暗中模索電気無きこの世界なき理不尽となる
- 温かい春の木洩れ日眩しくていつか自分の心と重ね
鳥取 小田みく
- クッションのモチーフ編みに熱中し孫と二人時間忘れる
- 二人旅 合格祝いにかこつけて孫との温泉 一泊旅行
近江八幡 芦田文代
- 迷うのは石の隙間の草引く時 しがみついてた過去を持つ
- ほとばしるようなものはない喘ぐ事のほうが多いひと日が終る
横浜 上平正一
- さくら吹雪 ボタン雪のように舞いおりてくる
- 春風にさく 吹雪のようにほっぺにぶつかってゆく
東京 木下海龍
- 笹鳴きも聞かずに過ごす街に居て五月となれば季節の明日は
- 赤彦の「黄なる空」は見えたのか「御神渡り」ない湖は活きてるか
春日井 稲垣嘉子
- デイサービスの小太郎さん我が柴犬と同じ名前思わずふきだす
- ホーホケキョどのとまり木で鳴いてるの? 唄くちずさみ草を刈りゆく
ポーランド 下沢統馬
- ポーランドからオーストリアへ クリスマス前のウィーン市街
- オーストラリアから飛んできた彼女を迎える 三ヶ月ぶりの再会
伊那 まさこ
- 彼女がくれた水仙がひっそり咲く お気に入りの髪型で号令をかける
- 蛙の合唱が聞こえる私も仲間に入りたい 練習後の休けいになごむ
伊那 金丸恵美子
- 仕事辞めたらゆったりと新聞を読もう 一日で読めない記事の多さ
- 政治経済スポーツ文芸暮らし 毎日資料を揃え編集する人々は凄い
太陽はいま(未来山脈2026年5月号より抜粋)
- 2026年4月30日
- 会員の作品
奈良 木下忠彦
- ピアノ発表会十三年連続出場で表彰を 入院五回しつつも
- 発表会の合間合間に発症 病気が気配りしてくれたかのように
小浜 川嶋和雄
- 雪ながめストーブの火をそっと消す 陽は煌煌と食堂照らす
- 高梨沙羅ジャンプ混合団体銅 冬季五輪だミラノの空で
横浜 上平正一
- 朝公園に来ると鶺鴒がきてピョコンと頭を下げて挨拶してくれる
- 鳥たちがエサ争いしてるそばで双方むいてる黄水仙
千曲 中村征子
- てんやわんやトイレットペーパーを大箱で買った ホルムズ海峡を知った日
- 崖っ淵でわめく大統領トランプ 悪い奴はやっつけたあとは君達がやれ
岡谷 三枝弓子
- バレーボールコートの緊張感 選手のふと見せる笑顔に人柄をみる
- 笑顔は相手の心をあたためるそんな人生を送りたいひとりの夜の
岡谷 横内静子
- オリンピックのフィギア『りくりゅう。ペアの応援に力が入る
- “りくりゅう”ペアの成長を楽しんで私もいっしょに励まされてきた
岡谷 三澤隆子
- 土手下の光とどかぬ川面に蠢く白い鴨 石垣は凍てつき
- わが背丈にも及ばぬ枇杷の木 わら帽子とばされ吹きざらし
岡谷 片倉嘉子
- 電気はどこで作られて流れてくるかおもいを馳せる
- 大寒の店先に並んだいよかんの明るいオレンジ色 思わず手に取る
下諏訪 長田恵子
- 横浜の二十センチの菜花があずさに乗ってやってきた 友のみやげ
- 昼食にデザート食べて友との話は四時間 今度はいつ会える
松山 三好春冥
- 南の街に風花が舞う節分 刃物を研ぐ露天商の息が光る
- ううん苦いチョコレートだ 二月の日溜まりに冷えた体が溶ける
諏訪 宮坂夏枝
- 断捨離トレーナーを辞退した古稀を迎え意識するわたしの残り時間
- 一年目は自宅の集中断捨離二年目は講習生三年目トレーナー活動
大阪 山崎輝男
- カラスの雛は物まね上手 犬のワンワン猫のニャンニャン九官鳥か
- スズメが早く餌をおくれと指つつく 可愛い仕草に目を細む
諏訪 藤森あゆ美
- 玄関を出てすぐに踵を返すまた一つ忘れたね今日のこと
- 三年前と同じ薬を処方され目尻にしわ寄せ苦笑い
飯田 中田多勢子
- 訪問リハビリの楽しみは近所の喫茶店へ歩行器にすがって行くこと
- 椅子十二カウンター六の小さな店いらっしゃいませの声に救われる
静岡 鈴木那智
- 大寒の小春びよりの日差なか薄紅顔の寒桜さく
- 土肥桜うす紅色の衣装を着る目白 鴬よりて賑やかし
近江八幡 芦田文代
- 三和土の向こうに動く影お客さんですよと首のばしてみる
- 雑貨屋の箕の中にサルいます動かない目でお留守番
神奈川 別府直之
- ひとこと言えば何とかなると思わないのか気が利かないのか
- 席に荷物を置いたまま混雑していてもわれ関せず おいっ!
大阪 花菜菜菜
- 手術の後遺症右目 かすかな陽ざしあたたまる 確実に春
- 通りすがり「あんじょう降りや」の声 魔法がかかるラスト二段
青森 木村美映
- シャツ・パンツそして歯ブラシ以外には聖書と科学書のみの入院
- 縋る神ではありません立ち止まるときに語らう先輩として
下諏訪 笠原真由美
- 床にモップをかけ、“お遊びマット”を敷けば「風が来る?」と夫の顔がゆるむ
- マットの上に消防車 ショベルカー 機関車 レゴブロック・・・・ぜんぶ並べる
福山 杉原真理子
- ナースコールボタンを傍らに術後の夜は静かに更けてゆく
- 病の父は何度このような夜を過ごしたのだろう
鳥取 小田みく
- 寒さゆるみて築山のじんちょうげのつぼみ ほほえみかえす
- 決算だ 確定申告だと 多忙きわめるこの時間に梅の花は香る静かに
彦根 久保仁
- 曼殊沙華秋の彼岸に咲く華よ春の彼岸は彼岸桜よ
- 春の雨お墓の汚れ流しつつこの世の汚辱流せるならば
下諏訪 中西まさこ
- 何気ない日常を詠むそのひとのうたに隠れているものは何
- はしゃいだり寂しがったり淡々と家事をしながら隠しているもの
北海道 吉田匡希
- 首筋に春の匂いが懐いてきてうなじに残る番の証
- もう雷のない街角にいるはずもない君の影 追いかけはせずに
いのち(未来山脈2026年4月号より抜粋)
- 2026年4月1日
- 会員の作品
愛知 川瀬すみ子
- さあ食べよう肉も野菜も蜜柑色に染まってぽかぽか南瓜のシチュー
- 冷蔵庫の冷蔵室へ野菜はお引越し 野菜室は手作りワインが並ぶ
松山 三好春冥
- 成人の日の強風に老いた家が震える 明るい雨戸が欲しい
- 成人の日の思い出は昔話 父も母も逝った家の広さ
福山 杉原真理子
- 阿伏兎観音傍らに宮城道雄の記念碑 眼前に波穏やかな能登原の海
- 墓参時に阿伏兎を訪れた宮城道雄 随筆鞆の津の一節が記念碑に
千曲 中村征子
- 不平不満別にただの言い草なんだけど 齢のせい不徳の至り
- プンプンわたしにはちっとも匂わない 他人と合わない鼻が鳴る
甲賀 中村宣之
- ハンドルを回して削る鉛筆と感性は右手の加減で鋭くなる
- 丸くなった消しゴムでは納得できないひと言を消せなくて
札幌 西沢賢造
- 「朝の水は血管ひやすよ」レモン浮かべた白湯にかわる
- 日曜の掃除戸を開けると八重桜わずか春の雨降るふる
諏訪 藤森あゆ美
- 入線する先頭車両に凛とした顔を感じる特急あずさ
- 夢を追う人々乗せて今日もまた特急あずさは東へ向かう
福知山 東山えい子
- おってかい 村の爺婆頼って来た 医者行きだとか買物だとか
- お礼は若いもんに言っとくでな 今村は独居と空屋
近江八幡 芦田文代
- 枯れ野に柳一本芽を吹いて春ようと言い出した
- 寄っても来ない春はポケットから手を出してもつかめない
神奈川 別府直之
- 具がいっぱいのペペロンチーノ オーダーにピタリ応えるシェフの腕
- ポテトサラダはやはりじゃがいも里芋はマヨネーズには合わんかも
米子 角田次代
- 元旦の朝米子正月マラソンに孫五人が寒風の中四キロを走る
- 老いも若きも笑顔のゴール私も来年は走ってみようかなどと
静岡 鈴木那智
- 川原の松の枝に引掛っているアンパンマンの絵の凧風にはためき寂しそう
- 新春の青空にアンパンマンの絵の凧風うけてグングン上がる元気よく
平塚 今井和裕
- 華厳の滝百メートルの名瀑だ写真に収め想い出とする
- 新宿は下水処理場そのことも若者達は知る由もない
札幌 石井としえ
- 音のないうオノマトペの雪降り積もる排雪苦労思わせながら
- 大雪にマンション住まいも外に出て雪かきしている声かけ合って
岡谷 三澤隆子
- 川霧消えた天竜に隊列くんで南下の鴨 目ざすはいずこ
- 庭に小さな体ちょこまか遊ぶ四十雀 黒いネクタイちらつかせ
下諏訪 長田惠子
- 赤いトタン屋根に霜がつく朝日を浴びるとダイヤモンドに変わる
- れんげそうを毎日見に行った幼い日 耕され肥料となる運命の日まで
岡谷 片倉喜子
- まばらな実の我が庭の南天を活ける 二本束ねてさまになる
- 小さな羽根の部品を取りつけ餅つき機はなめらかな餅をつく
岡谷 横内静子
- 難なくと今年も南天を飾る 今までもこれからもずうっと
- わら馬・土馬・毛糸馬を飾って今年も突っ走ろう
東京 桃谷具久夫
- 煮干しの骨人差し指に突き刺さる胃袋も食べ怨霊鎮め
- 列島を卑怯の矛盾覆う空凛として国花愛を示して
京都 岸本和子
- 師走半ば芥川賞候補作品発表される 畠山丑雄「叫び」も
- 京大在学中に「地の底の記憶」で文芸賞受賞しデビュー
素足(未来山脈2026年3月号より抜粋)
- 2026年3月4日
- 会員の作品
福山 杉原真理子
- 時の流れに心は置き去りのまま師走を迎える
- 新日曜名作座は八月より竹下景子段田安則で新たにスタート
横浜 上平正一
- 闇ふかく風に吹かれて唄っている石女ひとり白い子守唄
- ガラス戸をあけるとベランダの花々が笑って迎えてくれる朝である
箕輪 市川光男
- 小島の声で目覚める朝小川のせせらぎこの中で生きる私は幸せ
- やろうと思っていた事の出来た日の夕焼けは美しい燃え盛る私の心だ
札幌 西沢賢造
- 二度寝をしようと出窓からの木の枝葉しだいに明るんでいく
- 酸素器とともにベッドからソファーへレモンを浮かべた白湯がおいしい
米子 大塚典子
- 今日も頑張りますと鏡の我にグータッチ 笑顔のオーラ
- 百本の玉葱植える私に黄嫌じゃれあい余興か踊る
諏訪 藤森あゆ美
- 痛すぎて人の喉だと思い込む コロナの脅威やり過ごす夜
- 痛いよ痛い頭が痛い 割られてごらんよスイカ割りみたい
札幌 石井としえ
- 姑の松前漬けを今年また私が作る深夜の手仕事
- 若い頃一夜で作れた松前漬け今年は五日指も痛めた
松本 金井宏素
- 溢れそうな新雪に支えられて 大天井岳の斜面を満月が転がっている
- 紅色の淡い夕焼け 太陽はまもなく因幡の海に落ちるだろうとマップがいう
諏訪 宮坂夏枝
- 七十歳の娘の私に写真や食べ物を送ってくれる九十四歳の父
- 今に集中して目前の人にも精一杯対する父の在り方
鳥取 小田みく
- 年女願い事多しこの年に 大社の神様ほほえみがえし
- 松林長くつづき深々と 神殿に向かい新しい年を願う
群馬 剣持政幸
- 長い裾野が広がる麓の街から宇宙へ響かせようこの歌声を
- 好きでたまらぬ歌うことの喜び蟠り捨てて声を合わせる
流山 佐倉玲奈
- 週三日の塾通い十九時から学習と友との語らいを終え帰宅は二十二時半
- テスト前 とにかく自室に籠って机に向かう子ら 結果はいかに
春日井 稲垣嘉子
- 北上夜曲・山のけむりなど静かに流れて葬儀は始まる
- 四人の子らの柱だったねお父さん幾たびも言いたい ありがとう
山梨 岩下善啓
- 古い町の小さな寺 狭い庭に桜が四本
- 寒風の中 緋寒桜の蕾がふくらんでいる
東京 下沢統馬
- 潮風に吹かれ海面が穏やかに揺れている何時間でも座っていられそうだ
- いつまでも坐っていたいクロアチアの海岸 海の青 緑のオリーブがさわやか
東京 木下海龍
- 初礼拝こころ清きを胸にあつく神をまじかに観るを願いて
- 今年こそ文語詩編を詠み初めるむせる声音を浄めつつ
下諏訪 光本恵子
- 群れて飛ぶ白き鳥たちいっせいに湖に降り立ちべちゃべちゃおしゃべり
- 日本近海に眠るレアアース深すぎてね残念と言って死んだ夫
太陽はいま(未来山脈2026年2月号より抜粋)
- 2026年2月5日
- 会員の作品
岡谷 三枝弓子
- 初の女性総裁は自民党の高市早苗経験がもたらす自信にじませる
- 大小の違いはあるが 男性社会に飛びこむ緊張感は理解出来る
福山 杉原真理子
- 十月末県北へ 標高五百メートル世羅高原の風に夏の疲れが消えてゆく
- 森と花の絵本ミュージアムガーデンでアサギマダラに出会う
原 泉ののか
- 喜寿に快気に乾杯カンパイ 居並ぶ五人は十五歳
- 「好き勝手やって」のひと言は私への誉め言葉
彦根 久保仁
- 空見ればオリエンタルブルー西洋東洋一枚の絵の中に
- 初めて聞く名前だけど毎日見ているセルリアンブルーの空
札幌 石井としえ
- 題詠のクリスマスに詠むジングルベルかつては良かった歳末商戦
- 広告をわくわく見ていた息子達ウルトラマンにガンダムなどと
米子 大塚典子
- 秋香る ほほ紅さして活を入れ八十婆のスーパー詣で
- モナリザのポーズとってみた 鏡に笑われ私はわたし
青森 木村美映
- 「ムーンリヴァー」歌うシーンのオードリー夢にたちたる朝の涙は
- マンシーニの「ひまわり」聴けばその土の下に眠れる兵を想いき
米子 安田和子
- 浜松の友が帰省するので久し振りに皆で会うことになった
- 三か月も前から約束 宝塚の友も加わり楽しみにしていた
島取 小田みく
- あの世への旅じたくしてゆっくりと長い長い階段を行くおば
- 夫の持つ長い旅路のぼり切り半世紀ぶりにご対面かな
飯田 中田多勢子
- 火曜日午後四十分の訪問リハビリを三ヶ月受けた外を歩きたいため
- ケアマネリハビリの先生リース業者とで合う歩行器を選んでくれる
諏訪 河西已恵子
- 近所の店 清水二のM・Kを知らないか 叫んでいる人きみゑさんとの出会い
- 百歳の人の好きな愛染かつらの主題歌「旅の夜風」はもう飽きた
茨城 南村かおり
- 今年も来られた十一月の蓼科湖 紅葉に間に合い心浮き立つ
- 湖への道を父と共に歩く今年は歩行器も道連れにして
岡谷 佐藤靜枝
- 日本初の女性首相が誕生した二○二五年男の政治に一矢
- 世界ジェンダー平等日本は一一八位女性の意識の低さ
小浜 川嶋和雄
- 秋一番さくら葉紅葉花もよう 春よりきれい散るははかない
- 校舎前ボプラは黄色紅さくら 並んで立ってる絵よりきれいだ
千曲 中村征子
- カラスに突かないでと強く願う 見境なく今を詰め込む燃える袋
- カラスは本気? いたずら? わかっているんだ あの目と嘴
大阪 木村安夜子
- 何でも応えてくれるスマホ トントンいじってあそぶ
- ドライフラワーになったよ 黄薔薇三本 お気に入りの花瓶に挿す
近江八幡 芦田文代
- 亀がぽあんと浮いている カラスのえんどう取るのはあとで
- 誰か誰か待ち伏せしてほしい こんもり若葉が伸びたから
岡谷 片倉嘉子
- くもり空の湖畔五キロを歩く 塩嶺おろしが耳元でヒューヒュー
- くっつき虫がジャージの両脚に棘の種を運ばせ旅するせんだんぐさ
岡谷 横内静子
- やまっちそばは独特 紐状のとろろ芋がのっかってさっくい
- 松本めぐみの里は人気どころ新鮮な農産物が並びつい買い過ぎて
岡谷 三澤隆子
- 通りすがりに振り向いた猫玉ねぎの苗植える吾の手先に見入る
- クリスマスローズの葉陰に置きざりのシクラメン小さな蕾あって
北海道 吉田匡希
- キーウにもガザにも星よ流れるなどうせ願いが叶わないなら
- 赤ちゃんの泣き声じゃなくバンシーの群れの声だよ戦争が来る
伊那 金丸恵美子
- こけしあられが土産に海外へ ブルガリア人は呪いに見えるらしい
- 君の焼く鮎餅が海を渡る 待っている人が大勢いるとメールが届く
奈良 木下忠彦
- 体調が気になって人に会う機会が少なくなる ますます気が衰える
- 人との出会いは知らず知らずエネルギーを買っているようだ
いのち(未来山脈2025年12月号より抜粋)
- 2025年12月1日
- 会員の作品
札幌 石井としえ
- 久しぶり息子の友とかこむ「医は仁術」を説く頼もしさ
- 童顔になったと思えば「太った」と遅い夕食続く歯科医で
奈良 木下忠彦
- リハビリをかねて再びビアノ発表会に 稽古が脳に刺激を与える
- 病んだところを補おうと周りの脳が手助けしているかのようだ
横浜 酒本国武
- 生まれたばかりの蝉が前足だけで金網にぶら下がっていた
- あさ散歩に出ると濃厚卵の黄身のような色の太陽がいた
埼玉 須藤ゆかり
- とことこと夜をなぞって山手線たくさんの言の葉があふれる
- それぞれの駅が待つけど乗り合った顔 顔 顔がさまざま光る
鳥取 小田みく
- 今朝も又血管壁をおし上げ ず~んと高い血圧の数値
- ひさびさのゆるりとした朝むかえおり残暑きびしき今年の夏は
諏訪 宮坂夏技
- 十日間の日本一周クルージングに夫と参加一旦仕事を休んで
- めったに晴れない所でも行く先々快晴 夫が晴れ男のせい
埼玉 木村浩
- 花売り場に菊が増えた彼岸が近づいたかそれで気付くとは
- 菊食べニガミに夏バテを知る自分の体なのに
米子 安田和子
- 喉が変 まさかコロナ プールの中でもマスクしてるもの そんなー
- 盆の仕度で喉の痛みすっかり忘れ買物我家実家親戚の墓参で大忙し
伊那 金丸恵美子
- 「黄花晩節」老いるとも健康で気高くありたいと子からのメール開き思う
- 夕日が西の空を紅花色に染める 私の穏やかな日々やんわりと過ぐ
静岡 鈴木那智
- 秋むしの声を楽しみ籠に草を敷く虫はすぐ隠れ紛れる
- 虫籠をもち中を確しかむ龍の重さのみでみ命は存在
岡谷 花岡カヲル
- 夕方五時市の愛の鐘が鳴る 悲し気に遠吠をする近所の犬
- 庭石の上に蝉 人差指をそっと近づけるとぱっと飛び去る
近江 八幡芦田文代
- 何もしなかった していない自分に言いたいこと何
- ひらがなが好き漢字もまるいのが好きまるまるがいい痛くない
諏訪 大野良恵
- 今日の私を浄化する最初の一杯 あとはただ酔いに紛れる
- 節度ある飲酒を心がけつつカレンダーに休肝日はない
東京 桃谷具久夫
- 核の呵責アインシュタイン苛まれ溢れる懺悔コーラシュワシュワ
- 花綵は鉄条網にかえられて事大になれて長い物にはまかれろリード
坂城 宮原志津子
- とうとうあなたは逝ってしまった「今日あいに行くよ」とラインした朝
- 秋桜ゆれる園庭 園児たちと鬼ごっこ元気なあなたを思い出す
愛知 川瀬すみ子
- どの星にも 何か住んでたか何か住んでるか今から住むのが居るさ
- どの川も 地元の人らの生活の場いこいの場恐さを知っている人らの
岡谷 佐藤静枝
- 安曇野の山に迎えられ年一度仲間と学ぶ健康のつどい
- 平均寿命も健康寿命も越えず逝った夫の明朗な月
原 桜井貴美代
- 厚木まで曾孫に会いにひた走りアンパンマンのベビー服と
- 八十路越え曾孫に会える喜びに心は弾む足どり軽く
原 泉ののか
- ひまわりプロジェクトに参加する 届いた六粒のたね
- 絵にかく向日葵の中心は格子 よぉく観ると螺線状
原 山下ナツ子
- 手から手へ 小さな絵本から蝶が飛んだ
- 娘の車が曲がり角を曲がり消えていく ふたたび一人
原 太田則子
- 何光年も前の星のきらめき 今の一瞬が短くも尊い
- 夏の大三角の間に天の川 神話を思い目をこらす
森 樹ひかる
- もう後戻りできない チャレンジに挑む毎日の私
- 舞台に立つ自分の姿を浮かべるのは恐怖でしかなかった
松山 三好春冥
- 冷凍ビザの加熱が足りなかっ た責める者はいない無精の食卓
- 焦げた食パンの耳を熱いココアに浸す ほどよい加減は難しい
素足(未来山脈2025年11月号より抜粋)
- 2025年11月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 日本の地下のマグマも吹き出すか猛暑日予報の赤い天気図
- アスファルトの熱気に負けずオニノゲシ猛暑の歩道へギザギザ伸ばす
箕輪 市川光男
- 太陽さんやっとお目覚めかい私はもう草刈りを終えたよと手を合わす
- 七月の太陽は朝からギラギラ畑の仕事は草々に終えてさあビールだ
岡谷 花岡カヲル
- 背高のっぽの赤いバラ湖風にふかれて坪庭を賑わす
- 血圧の薬を飲んでいる私 奈良漬を漬けると娘は嘆く
青森 木村美映
- 二十代は脱色・染色を繰り返し気づいたら髪がなくなっていた
- 還暦間近・未婚独身いまさらにウイッグなんてかぶる気もな
愛知 稲垣嘉子
- 義父さんあなたの息子も車椅子ですハンサムだった遺影に告える
- もっと力出してよ夫よベッドより車椅子の移動大変だあ
近江八幡 芦田文代
- 塗り重なった文字の看板が話しかける その商のむかし昔
- ホーローの看板は錆びてる ぼんやりした灯は残る八百屋
東京 桃谷具久夫
- 蝉一匹平和の森で歌ってる心に響く初のテノール
- 油蝉夜明け前から気張り鳴く帰る行く人ともかくファック
札幌 西沢賢造
- 鼻の酸素チューブはずれ覚めて知らずに逝ってしまうのか「ハレルヤ」
- 「悟ったようなことなど言わないで」と五十インチのテレビが届いた
飯田 中田多勢子
- 大宮諏訪神社秋季祭典を二十三日神社や大宮通り桜並木一帯で繰り広げ
- 同神社は東野全域橋北・橋南一部三十ヵ町一五〇〇世帯を氏子とする
千曲 中村征子
- 降りる沸く 天から地から 雨の一滴と入れかわる虫の演奏家たち
- 胡瓜から涙がポタポタ 大事にしすぎたせっかくのいただき物
仙台 狩野和紀
- 手の届きそうにない事を適えようとする願いが若さの秘訣
- 人の物ほど良く見えても鏡と睨めっこして諦めるのが一番
さいたま 清水哲
- 医大の教授は「血圧は?」測定リストを見せ「薬は出しません」
- 心臓に二つのポンプあり 一日に一〇八〇〇〇回打つ働きにただ深く感謝
横浜 上平正一
- どこかで夜汽車がくしゃみしながら走ってるね ウンウン
- 夜汽車が何か食べ物を探してるみたいだね ウン ウン
東京 木下海龍
- なんとかあと二年は生きて居ようと思って励んでおります
- 九十一歳になるといろいろと身体の限界も感じている日々
群馬 剣持政幸
- 昔梓志乃が歌ったカラオケが脳裏を掠めるラブホの空間
- 既婚男性は年上の部下ハーレムな寝言の前に聞いておけ
松本 金井宏素
- 山稜を赤く染めて日が昇る 視界から生物の気配が消えた神無月
- 物心ついたころから時計はこの柱に掛かっていた 思えば長い道程だった
流山 佐倉玲奈
- 十月にもなるのに今日も暑い それでも朝晩は涼風
- 昨年は出られなかった体育祭に今年は百mを全力で駆け抜ける
山梨 岩下善啓
- 増穂登り窯で零時から六時 ひとり窯焚き当番
- 久しぶりの徹夜 六時間ひとりで登り窯に薪を焚べる
下諏訪 光本恵子
- 木の実がいっぱい落ちている公園 人と熊の共存はありえないというが
- 熊のやさしい目が気にかかる熊と人間の共存など 雲が笑っている
太陽はいま(未来山脈2025年10月号より抜粋)
- 2025年10月1日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- 心地よき水の温度に染付の器十客すすげば至福
- 白いスニーカーで歩くモール キャンディのような夏菊の束を買う
米子 角田次代
- 朝からうきうき今日は友の家で四人のお茶会 お久しぶり
- お手本のような友のおもてなしはいつもながらに学びの時
藤井寺 近山紘
- 激しい雨溢れる水滝の様に流れる大川の橋桁の危うさ
- 東の空の雲が切れて真っ青な空が顔を出す初めての蝉の声届く
岡谷 三枝弓子
- 辞書でというとスマホが早いと云う人時代にとり残されている
- 亡夫が遺した物は消えて百合も絶えたことし私が咲かせる
京都 岸本和子
- 夏至の日の「天声人語」高校語資料集大人の間で異例の売れ行きと
- 高校で芳しくなければ視点を変える知恵と勇気が必要だったのだ
岡谷 片倉嘉子
- 一本のねじ花の茎が伸びてもうすぐ咲くのを心待ちにする
- 五センチの茎が三倍も伸びピンクの小花をらせん状につける
岡谷 横内静子
- 朝日を浴びてクオーキング 電柱の上が定位置の鳶に今日も“おはよう”
- 気持ちよりずっと歳をとっている身体に 次々とメスが入って
岡谷 三澤隆子
- 合宿の力士の朝稽古を見る湖畔 光る汗に満面もキラキラ
- 互いにゆずらぬ力士のぶつかりあい 紅さした姫りんご傍らに
下諏訪 長田惠子
- キムチにマヨネーズは邪道ですか おいしいから許してください
- 誇るものがない人は口を閉ざし静かに生きよとあなたは思っている
大阪 花菜菜菜
- 息吸うための理由は きょう今を生きるため 雨よ降って来い
- 小一時間歩く+ラジオ体操 朝のルーティンおはようから
平塚 今井和裕
- 丘白く見上げたものよ下界から今度は逆に眼を下し眠る
- この街に情けをかけて叙情なり街を助けて風呂敷広げ
諏訪 宮坂夏枝
- 娘一家とUSJ万博行きの強行軍ただただ後についていこう
- 小学生ふたり園児ふたりの孫 万博には大人四人の手が要るね
愛知 川瀬すみ子
- イチローのスピーチを中卒と言うならトランプの中卒英語は何ぞや
- キトラ古墳ツアーに出かけた朝に咲いた君 キトラのバラと名付け
諏訪 河西巳恵子
- 南側窓に古びた大きな製材所 モネのサン・ラザール駅に似る
- 郭公 杜鵑の声とうに聞かない 川畑も山際も家 家 家
坂城 宮原志津子
- 傷口ふさがらず外来受診続く夫退院してから三ヶ月もの日々
- シャワーで傷口洗い手当する私 夫から「ありがとう」のシャワー浴びる
横浜 上平正一
- 朝大ゲンカしなが知らぬふりしてパンを齧っている おかしな夫婦
- コンクリートの坂道の角にいちりん咲いているど根性すみれ
伊那 金丸恵美子
- 子供達が一斉に下校 元気な声が一際響き渡る 今日は一学期終業式
- 子供の心にふる里をと始めた読み聞かせ活動 未来を信じて続ける
大阪 山崎輝男
- 歴代最高四十一・八度を記録 酷暑日続出日本は熱帯化
- 四十度超えのスペイン 酷暑による死者千三百地球沸騰
神奈川 別府直之
- 朝霧高原を埋め尽くすボーイスカウトのテント自然と向き合う
- 薪を拾い火を熾すボーイのお兄ちゃんたちがたまらなくたくましい
下諏訪 藤森あゆ美
- 近づくほど涙あふれる 泣き腫らした目のまま家には帰れず
- 初めて家を通過する あふれ出る涙を止めるまでの時間
静岡 鈴木那智
- 厚みあるそら豆の大きな莢が天に向かって育つ直立をし
- 大粒の強い甘味のそら豆だが青臭さが苦手な人も
埼玉 須藤ゆかり
- 愛していれば 性善説のきらめきはガラスのこころに乱反射する
- 煮え切らないわたしはせんを飼っているセミロング セミダブル うつせみ
岡谷 花岡カヲル
- 築五十五年私の部屋 蛍光灯ピカピカLEDライトに変わる
- 電気屋さん八畳間だが天井が高いから十二要間用のLEDだと言う
下諏訪 中西まさこ
- 群青の海峡の底に沈めたいYへの恋慕とTへの憎悪
- 波しぶき上げ揺れる船の甲板の手摺りにもたれ血の色の酒
北海道 吉田匡希
- 歯並びの正しさだけが真実で皮膚果てしなく偽証のすべて
- たましい と言葉にするとき唇と唇触れるのはただ一度