素足(未来山脈第363号より抜粋)

灯籠の苔を食べて生きて行けるか 雨が来る
下諏訪 中西まさこ

眞白だ垣根を越えて百合の花 ゆーらりゆらゆら我家を覗く
小浜 川嶋和雄

漱石をあばき出してる集合サロン つきる事はない文豪研究
諏訪 伊藤泰夫

隣に住む娘一家のリフォーム 仮住まいになる我が家を叉片付け
諏訪 宮坂夏枝

令和元年 愚直な人間の初句『国旗より高く泳ぎし鯉のぼり』
大阪 加藤邦昭

料理を持ち寄り語る七時間 口も手も脳も留まることなし
米子 角田次代

断崖の薄は風に吹かれ酩酊して認知症の患者のごとし
埼玉 清水哲

雨に打たれた花々 新緑の緑に囲まれ鮮やかに咲く
諏訪 上條富子

父の日の風に飛ばされ転がる小鳥の巣 玄関先に捨てがたく
岡谷 金森綾子

麦秋田と早苗田織りなす安曇野の風景にしばし癒され朝の病院へ
岡谷 三澤隆子

降り過ぎなければ救いの五月雨見渡す限りのさ緑に心をゆだねる
岡谷 柴宮みさ子

草をかき分け真っ先に取るカタバミ 実家も嫁ぎ先も同じ片喰の家紋
岡谷 横内静子

「パパがいっしょに行くの」児の笑顔がかがやく父兄参観の朝
岡谷 片倉嘉子

熱い熱い貝が殻を開く それをいただく生きぬくために昨夕今朝と
東京 髙橋輝美

力也君 いながわけにおうまれになられにばんめにうまれうなんに
鹿沼 田村右品

優雅に舞うちょうのしたではキャベツの葉がいたいたしいレース模様
米子 稲田寿子

本当に大切なのは相手の腹の内よりも自分の胸の内
仙台 狩野和紀

夕日が雪の八ヶ岳、蓼科と雲を染めてまっ赤に私を包む
茅野 平澤元子

梅雨含む川ばたに さわやかな風 光で話すホタルたち
岡谷 伊藤久恵

新田川の浅瀬の石の上どっちが先に恋したのかカラスと白鷺
東京 鷹倉健

摘みたての水芹を頂く お浸しに玉子とじにと 遠い日のせせらぎ思いつつ
岡谷 堀内昭子

知っています 大人が「今の子」を見る目を「元号予想はタピオカ元年」
北海道 吉田匡希

部活で流した爽やかな汗反発したって何も変わらない現実
伊那 藤本光男

炎天に水やるひとのありがたさみちばたに咲く白百合の花
神戸 粟島遥

体ふわふわ 散りつもった白藤をサクサク踏む
岡谷 唯々野とみよ

僕の高校のシンボルは蜻蛉 トンボは前にしか進まない自分もそうありたい
松本 下沢統馬

相手の見えぬ敵にむかい苛立ち白うさぎもほろほろ
下諏訪 光本恵子