素足(未来山脈2022年5月号より抜粋)

読み疲れて部屋専用の露天風呂 ヒノキの湯槽に入れば雪 ちらちらと
下諏訪 中西まさこ

八時です朝のご飯はヨーグルト リンゴ半分薬はおやつだ
小浜 川嶋和雄

102歳で旅立つ伯母の告別式 いやというほど簡略で静か
京都 毛利さち子

夜空いっぱいの星のシンフォニー タクトのように身体をゆらす
岡谷 征矢雅子

米洗う窓辺の鼻先 すいせんのののかに香る春近し
鳥取 小田みく

四分の一世紀を数々の勉強会に参加する人生 悔ゆる事はない余生
岡谷 土橋妙子

青い鳥 ルリキビタキの声忙し春の野山を歩いて行けば
静岡 鈴木那智

二月七日は亡父の命日 三姉妹で猫柳金仙花を携えて墓参りに
飯田 中田多勢子

さみしさを背負った風が指先を掠めて通りすぎてゆく
横浜 上平正一

ウクライナの詩人シェフチェンコに我は尊敬に熱し我の尊敬は熱し
さいたま 清水哲

日向の業績より心の奥底に潜む温情を宝とする
仙台 狩野和紀

コロナオミクロン株が保育園で猛威をふるう 自粛中の孫たち
諏訪 宮坂夏枝

ひよこ豆のドライカレーを作りつつカーリング一試合を見終わる
下諏訪 笠原真由美

蕾のほころびに連れ歪んだわが身も解れだす終わりの見えぬコロナ禍歩む
境港 永井悦子

窓越しの椅子に座り粥すする 返り咲きのシクラメンはメラメラ
下諏訪 光本恵子