二月の火(未来山脈第334号より抜粋)

小六の息子が挑んだのは中学受験そしてもう一つ 母の病気

諏訪 藤森あゆ美

裾野が長いこの大地に吹き荒れる風は悪さばかりじゃなかった
群馬 剣持政幸

「外回りを直しませんか」と業者が何度も来る逆撫でしないように断る
岡谷 佐藤静枝

北北西を向いてほうばる巻き寿司だ 今年もいいことあると思えり
小浜 川嶋和雄

大雪で日本脱出を心配したが何とかニュージーランドへ出発できた
米子 安田和子

幾筋もある長い廊下を杖を曳いて戸惑いながら妻の病室へ
岡山 廣常ひでを

三寒四温まさにこの言葉の通りの気候がつづいている
諏訪 上條富子

節分に母と語り合う幸せのこの一刻よこのままであれ
仙台 綱尾守

腰痛に耐えて餅つき おせち料理無理するなよ 夫の声
原 桜井喜美代

八ヶ岳峰の陽が暮れなごりの青空に白い月ぽっかり今日は十五夜
原 柏原とし

真っ白な空に真っ白い冠がみえる 雪の女王はアルプスに滞在
原 泉ののか

パチパチ燃える薪の音やかんの音やさいを刻む音 冬の朝の目覚め
原 森樹ひかる

会えぬ友らの顔浮かべ今年ももうじき終わりとなる
仙台 田草川利晃

昨日スタジオで写真撮影をしてもらいたくさんいいお顔が撮れたね
東京 佐倉玲奈

朝霧高原より望む富士山は残雪に染まり神神しく身がひきしまる
岡谷 伊藤久恵

大河ドラマの主役のセリフ語尾が聞きとれず音量を上げても無理
岡谷 堀内昭子

今年は倖せの種をまこう 三日坊主にならぬよう一日一善に心がける
岡谷 林朝子

こたつにて北風ヒューヒューみる休耕地 芒ゆらゆらブルーベリーも休む
茅野 名取千代子

どの空の下でも自分が大好きな自分で生きよう
仙台 狩野和紀

声だけの長いおつき合いの老友我家まで念願かなって来てくれる
さいたま 山岸花江

九十歳身辺整理を始めたが減らすのでは無く身辺完成である
大田原 鈴木和雄

雲間より光まぶしく日射しあり背にあたたかく心潤える
岡谷 武居幸子

自由律言いたい事が先にあり内なる思い光に出そう
岡谷 宮坂夏枝

母の節高かな手 包丁持つ手 背中流す わたしもて近づいてきた
岡谷 百瀬豊子

孫自慢 髙倉健がとまらない棟梁たちの昼休み
上田 宮下久恵

夕方は風呂に入って気分一新 明日の栄気を養える
塩尻 小池和夫

階を知らすエレベーターの数字よりまだ間に合うと靴紐結ぶ
大阪 鈴木養子

コンパネやベニヤとともに積まれた古材を薪にしろと命じられる
滋賀 岩下元啓

ピピピ(オノマトペ)とことばに出すと忘れない脳も研究が進む
下諏訪 青木利子

師のいない「風の会」漸く歩いて来た道 閉ざされて
東京 及川かずえ

毎日の放課後バレーの練習は楽しみだ 引退するまであと三ケ月
松本 下沢統馬

亜細亜アフリカ未開の民の支配こそとスペイン英国などの世界戦略
藤沢 篠原哲郎

春の節目に気になる雛人形 雨水に飾ってもいいらしい
諏訪 浅野紀子

校正は砦にも似て落日の朱の色の、見よ、フリクションペン
東京 金澤和剛

柔和に仔む万治の石仏 祭りのときも地震のときも
下諏訪 光本恵子