太陽は今(未来山脈第357号より抜粋)

読んでいただけますか 歌集を作ろうと思う 名刺をそっと手渡すように
富田林 木村安夜子

葉牡丹に癒し求めるこの冬場来訪者来る玄関に置く
諏訪 伊藤泰夫

四方の山が黒々として吹雪いている とうとう里も雪舞いだした
諏訪 河西巳恵子

金剛山登頂一四八八回目という 膵臓癌の友の生きる証の年賀状
大阪 山崎輝男

締切日過ぎても歌がない 本棚の「地球の歩き方」渡航順に整理
大阪 加藤邦昭

ルノアールの絵のごとくぽっちゃりの猫の額をなでてやる日々
神戸 粟島遥

自分史で我が人生を二度生きる幸も不幸も4K画像で
北九州 大内美智子

平成三十一年正月温かな晴れた青空に恵まれた元旦
諏訪 上條富子

義母から習ったのっぺい汁はゆく年 くる年をつなぐ一品
岡谷 佐藤静枝

子供たちとの会話は素敵な時間 未来に希望や夢が見えてくる
伊那 金丸恵美子

いつも闇を抱えて生きている 漆黒の闇は描けはしないか
下諏訪 須賀まさ子

何かしないと 今出来る事 年の始めのあせりと希望を思う
鳥取 小田みく

明日は短歌〆切日 何を書こうか ペンをとりノート開ける
原 森樹ひかる

川が流れるように風が木の葉を散らすように残りの人生自然に生きよう
岡谷 林朝子

頭の半分が痛む掛かり付け医に CTを撮るが異常なく耳鼻科に紹介され
岡谷 堀内昭子

田舎の秘境ムード漂う小さな駅におりたつ ほわっと温暖な風が迎える
岡谷 伊藤久恵

夫が要介護1私が要支援1夫婦そろって木曜日にはデイサービスへ行く
飯田 中田多勢子

あれもあるこれもあると暮し家を建てた母子家庭の母の友
岡谷 武井美紀子

十二月中ばから娘から孫がはやり目になり学校を休んでいると電話がある
米子 安田和子

いつしかに新しい年に漂う 橋も渡らず扉も開けないこの身
千曲 中村征子

謹賀新年 子孫の腹帯授与寺 宝塚中山観音様へ妻同伴の参拝
大阪 與島利彦

西の山寺で鐘が鳴る大晦日一年照らした太陽に手を合わせる
諏訪 宮坂きみゑ

祖父の写真を尻においちゃった母ごめん懐かしいねご免なさい
成田 青山フライパン

夕焼け空に微笑む三日月 亡母のやさしい面影が重なってくる
下諏訪 藤森静代

蓄髪の許可が出て髪をのばすが密度がなくなったなと
仙台 田草川利晃

刻の移ろい ゆっくり流れる雲を一人ながめ熱いコーヒーをすする
辰野 里中沙衣

ヨッコラショの掛け声で立ち上がある体を動かすのが生き甲斐
諏訪 百瀬町子

友も亡く師もなく天草の農学校は閉校 島にはこどもがおらん先生お力貸して
さいたま 横田哲治

八ヶ岳蓼科雲が覆いて今にも降ってきそうな梅雨の空
茅野 平澤元子

父の入院 その足でひとり銭湯に寄る 溜まった疲れを溶かそう
諏訪 宮坂夏枝

入院手術の言葉が身近になるとは思わなかった明日は北側病棟四階
箕輪 市川光男

節分には福は内にと願うけどまずは健康と家族の協力
下諏訪 児島啓一

誰にでも愛情注ぐ父はなぜ 誰にでも優しくなれたの
原 江崎恵子

穏やかな陽射しの冬の日 新美南吉の「てぶくろを買いに」を読む
米子 笹鹿啓子

あんなに愛を語った言葉 同じ言葉で諍い そして離婚
東京 高橋輝美

へその上ぺったり貼った絆創膏 今日もまあまあに終わる機能
諏訪 藤森あゆ美