いのち(未来山脈第358号より抜粋)

七つの病がせまる奥の死 まだ生きていましたと明けの烏に告げる
大阪 井口文子

冬は静かだ雪も静かに降る休もうよ木も枝も佇んでいるから
木曽 古田鏡三

ふわっと澄んだあの声で病と戦っていたのか いとしや市原悦子
岡谷 唯々野とみよ

抵抗しないと流され抵抗すれば取り残される決断の前の躊躇
京都 毛利さち子

心に秘めた想念を抱えて揺らぐいくつもの夜を越えて
札幌 西沢賢造

三十分早く家を出たのにもう 凍った道に渋滞の列が伸びる
諏訪 大野良惠

蓬莱橋を渡り左手 ルネス街も駅側通路の解体を終え
青森 木村美映

「三月九日」という歌の存在を知る この日は孫(しー)くんの誕生日
諏訪 宮坂夏枝

ボランティアを立ち上げて六年目プログラムの出し物考える
岡谷 武井美紀子

昭和平成と平和が続き生かされて来た次はどんな年か
諏訪 上條富子

ときめき無いまますぎゆく日々 新短歌ができないと全く出きぬ
鳥取 小田みく

国想い吾が取った行動が家族の絆に亀裂を生む
東京 鷹倉健

しゃがんだ途端 アッイタタ 立ち上がりたくても立てない
米子 安田和子

鳥群れて木末に騒ぐ公園を掃く竹箒 一瞬のしじま
東京 高橋輝美

異次元に踏み入り戻りくるごとく師の室を出て向陽に立つ
東京 木下海龍

会社組織を運営するに部/課/係などの編成は一般的だが
藤沢 篠原哲郎

ワルツに染まったニューイャーコンサートの一夜 年の始まり
岡谷 土橋妙子

平成の次は何だろう ロボットが介護してくれる時代よ独居に来い
愛知 川瀬すみ子

そろそろ心の旅立ちの季節と思い眠れぬ夜を数えている
仙台 狩野和紀

雪解けて背くらべ始めた水仙 老いの身を励まし葉が延びる
下諏訪 藤森静代

隣家では正月で帰省したお孫さんの置土産 雪だるまにほっこり
岡谷 林朝子

平成の我が家を振り返る長男夫婦と二世帯住宅に、次男も結婚し孫五人に恵まれ
岡谷 堀内昭子

温かな粥五臓に流れる七草がゆのパワーで風邪知らず 全力投球
岡谷 伊藤久恵

エメラルドグリーンの沖縄の海 白い砂浜この自然を壊すのはなぜ?
坂城 宮原志津子

人と接する事の多いポジション任されるだけに時にカっとする事もある
仙台 田草川利晃

三歳になったおしゃべりなボク 冬らしい澄んだ空気の大晦日に生まれ
流山 佐倉玲奈

そろそろ着くころと友達を待ちわびる夫の心は中学生
岡谷 佐藤静枝

去年の秋なじみの紀伊国屋書店へ 新刊の私の生い立ち立読み購入
與島利彦

山あり谷ありで歩いた弥次喜多道中も五十年を迎える
米子 角田次代

亡父の二十七回忌 子供と孫が集まり法事をする
飯田 中田多勢子

今日の試験だけで自分の未来が決まるのか そんな不安が頭をよぎる
松本 大野みのり

ベルリンの壁が壊されているレーニンも只の人だったのか
太田原 鈴木和雄

ちらちら寒桜を見ながら坂道走ると赤信号事故りますよ
諏訪 関アツ子