太陽は今(未来山脈第359号より抜粋)

いやこれまで、いやまだまだ 口語自由律短歌が叫ぶ
大阪 井口文子

一生の中の今どのあたり 六十八歳で初々しく歌集準備中
富田林 木村安夜子

明治大正昭和に生きた松園 信念を貫き通し輝きを放った生き方
伊那 金丸恵美子

いつ乾いたやら奴凧のもの干し フガフガ力のはいらない力でしぼる
千曲 中村征子

退職後の人生をどう生きると自問した事も今はどうぼけないかに
藤井寺 近山紘

一センチカットした髪外耳道夜にくすぐる二本が潜む
一関 貝沼正子

懐かしさに包まれたように雪もやみ晴れ間に部分日食
札幌 西沢賢造

冬はつらいが夜明けは素晴らしい そして今に梅が咲き 桃が咲き桜が咲く
東京 上村茗

東日本大震災から八年復興続くも第一原発の復興の終わりはない
東京 鷹倉健

吐くわ下すわの大さわぎ これって風か鬼の霍乱
岡谷 唯々野とみよ

楽しみです 安夜子さんの歌集すごくすごく読みたいです
下諏訪 中西まさこ

パスポートを更新した帰路 喫茶店でコーヒーの香りを楽しむ
大阪 加藤邦昭

母と一緒にふきの薹を摘んだ日が懐かしい 思い出話は脳を活性化
岡谷 佐藤静枝

平成三十一年一月三日三時三十三分最後まで三にこだわり夫逝く
米子 大塚典子

暦では雨水昼からの雨やみスーパームーン湖を照らす
諏訪 宮坂きみゑ

焚火をすると炎の中にうかぶ 弥生人縄文人も焚いた姿が
豊丘 毛涯潤

この薬は効くと信じて三十年続けているプラス思考の健康法
岡谷 土橋妙子

冬の夜の星の記憶は透明な球体のなか 春の雨ふる
諏訪 松沢葉子

初めてのスノボに浮かれる息子に 「簡単に骨折するよ」口酸っぱく言う
諏訪 大野良惠

心臓の検査で移った私の背骨S字カーブが憂よんで来て
札幌 石井としえ

「なにくそ」と強さをくれる人 さくらの香りふりまいて
鳥取 小田みく

来年も飾れるように願って南天福寿の掛け軸を片付ける 一月の末
岡谷 武田幸子

声に出して読むがいい 五円で唯一売れた賢治の「雪渡り」
岡谷 金森綾子

もくれんはビロードのマントで寒さに耐え花開く時はハラリと落とす
岡谷 片倉嘉子

中央アルプス麓老舗ホテル眼下の水無き川に大中の石ぎっしりと
岡谷 三澤隆子

山折り谷折り薔薇と蝶の折紙を水入りコップに 電気不要の加湿器
岡谷 柴宮みさ子

“鬼は外”と夫“ごもっともごもっとも”と後ろから私 二人だけの豆まき
岡谷 横内静子

師の言葉学徒たるもの風邪ひくな 熱と頭痛では書物が読めない
東京 木下海龍

まもなく途中でへたり込むかもしれない犬を散歩に誘うこの犬は私
京都 毛利さち子

マヤ文明の故郷であるメキシコ・グァテマラの熱帯樹林
青谷 木村草弥

入学前の下宿探し 知らない土地でうろうろきょろきょろ
横浜 大野みのり

収入おいといて百姓楽し 空も小鳥も野菜たちもみんな友達
福知山 東山えい子