素足(未来山脈第366号より抜粋)

掌に残ったわずかな温もり 共に暮したインコの命惜しむ
岡谷 三枝弓子

猪に踏みしだかれしごかれつつ立つ稲 刈り取り不能の田
福知山 東山えい子

滴る春に街に出よう曇りがちだった窓に朝の光満ちて
札幌 西沢賢造

暑い十月 朝晩が涼しいからしのげるが 太陽の照り付けはまいる
東京 上村茗

母の遺してくれた箏仲間 彼女たちと暖かな時を私は享受している
諏訪 宮坂夏枝

石間も砂地もぐんぐん 咲き広げるマリーゴールド オレンジ一色に
岡谷 堀内昭子

朝晩めっきり涼しさを呼んで庭一面の秋桜 飛び交う赤とんぼに癒される
岡谷 林朝子

もういない義母の施設を訪ねる眺めてただろう晩秋の葛城山
藤井寺 近山紘

崩れきれないという廃墟の無惨 夕陽よ抱いて奥まで深く
諏訪 松沢葉子

青空映えてくっきりと山並み 朝日に照らされみずうみ輝く
諏訪 上條富子

十月は秋らしい陽気になるはずがこの暑さ地球は何処を廻ってるの
東京 保坂妙子

他国から要求多い我国はスイスのように自立出来てますか
下諏訪 小島啓一

君の捨てた草履の鼻緒を直して履く 足の裏から君を感じる
長野 岩下元啓

高原の紅いどうだんつつじ 小さな鈴の様に風に揺れている
茅野 平澤元子
いちめんにピカマチスの深紅が広がりし雲に映えて名画になり
埼玉 清水哲

ようやく終わった夏休み ほっとしたのもつかの間 運動会発表会と
流山 佐倉玲奈

喉におわす神様がいう「近頃は汚い風、よく通りますね」と
北海道 吉田匡希

記録的暑さに笑顔ふりまいたひまわり身なりもあわれ お疲れさま
岡谷 伊藤久恵

部活が終わった三年の夏 もう縛られる事なく走れるのは楽しい
伊那 藤本光男

きれいだぜ裕次郎だぜ海生き物沢山いるけど意味はしらない
東京 中村千

友の安否が知りたくても伝えられない歯がゆさ
埼玉 赤坂友

吐く息の白さに気づく信号待ち 学校までの道のり
松本 下沢統馬

雨のしずくが文字をつないで流れ落ちる バスの席
下諏訪 光本恵子