いのち(未来山脈第368号より抜粋)
- 2020年2月4日
- 会員の作品
シャワーヘッドから生まれた水が何にも触れずに排水される
名古屋 早良龍平
僕と君と似た者同士のふたりだね男と女の違いあるけど
下諏訪 中西まさこ
もみじ浴の京都清水寺 元年の漢字は「令」に森貫主の揮毫アート
大阪 與島利彦
一首も書けなかった夏 作りかけた習慣が崩れていく
京都 岸本和子
不幸なまま幸福のままでは終わらないという人生 やっと普通な今
下諏訪 須賀まさ子
「ありがとうございました」と一日に百回くらいは言ってる仕事
諏訪 藤森あゆ美
娘の子五歳と三歳七五三を一緒にやる兵庫加古川の日岡神社
岡谷 武井美紀子
娘に誘われて地図にのっていない御射鹿池(みさかいけ)を目ざし登って行く
岡谷 花岡カヲル
健康教室の集いは笑顔で始まり笑いで終わる高齢者活躍の場
米子 稲田寿子
小鳥のさえずり ゆったりとした旋律「自律神経にやさしい音楽」をきく
諏訪 宮坂夏枝
青空にぐらぐら燃えるピカマチス認知症治療のジューズに凝れ
さいたま 清水哲
ラグビー四強はイングランド ニュージーランド 南ア・・・大英帝国だ
太田原 鈴木和雄
年取れば丸くなるかと思いきや協調忘れた老人会
北九州 大内美智子
最後まで寄り添えた安堵の思いか 亡夫を時々忘れる日もあって
大阪 高木邑子
漢詩の中国語朗読でいろ鮮やかな山川草目心に沁みる
大阪 山﨑輝男
わずかに残った葉がゆれる音もなくこきざみにゆれる
岡谷 唯々野とみよ
チャラチャラした女子高生より真面目に身体を受け容れる女性の尊さ
つくば 辻倶歓
連れ合いに声かけをするウォッチング壺坂霊験記ここに深い愛
諏訪 伊藤泰夫
北風に枯葉舞い散る最後の一葉小枝にしっかりしがみつき
東京 鷹倉健
秋晴れの日山友二十一人はマイクロバスで三瓶山登山に出発する
米子 安田和子
八十七歳のトラクター坂道に横転 勤しむ日々いくつもの物語
千曲 中村征子
台風が三十近くも発生する 海水をたぎらせたのは人間のしわざ
奈良 木下忠彦
炭鉱(やま)おとこ代表していた町会議員閉山反対つらぬいて
札幌 石井としえ
多忙ときめきの無いまま新短歌(うた)出来ず散歩の枯葉ふみしめる
鳥取 小田みく
石川英吾様 鹿沼市千渡の石川家にごりっぱごたんじょうをなさる
鹿沼 田村右品
一円不足で戻ってきた原稿 〆切に間にあっていたのに
東京 上村茗
三十年ぶり ランチ会のお誘い仲間の顔思い浮かべながら心がおどる
坂城 宮原志津子
晩秋の午後の黄色い光に照らされ街も人らもきいろく染まる
京都 毛利さち子
言葉より先に涙があふれ出る 洪水の街 流される犬
一関 貝沼正子
ロンドンから北に電車で一時間 ケンブリッジに着く
青谷 木村草弥
我が家の正月準備は当番制に子達の住む地で順番に
下諏訪 小島啓一
淡い淡い靴の紅いろにじみいでて知らない街の歩道を染める
北海道 吉田匡希
生まれは大町 松本の茶道の先生に気に入られて名古屋に
諏訪 上條富子