太陽はいま(未来山脈第370号より抜粋)

サンルームのしゃこばサボテン咲きさかり令和二年の温い正月
一関 貝沼正子

一つの事を続けるのは長い年月を費やす リンゴに赤い果肉微笑む
伊那 金丸恵美子

蘇東坡の詩を書き写す キャンパスノートに横書きで
下諏訪 笠原真由美

どの分野にも若い才能 習熟伝統を越えて新しい息吹
奈良 木下忠彦

冬だ冬だと梢がさわぐ余分なものを捨てた木々の確かな生
諏訪 松沢葉子

日の暮れるのが少し遅くなった なんでもないことが今日は嬉しい
京都 岸本和子

夫の腰がぬけて動けない どうしようもなく切羽詰って救急車だ
飯田 中田多勢子

鍵穴も見えない暗い周辺 街灯がぼんやりと道路を照らす
岡谷 佐藤靜枝

始まりはいつでも良い 今年で三度目になる巡礼の旅
鳥取 小田みく

あ~あ頭はハゲるし腹は出る腰は痛んで肩も張る世の中闇だ
箕輪 市川光男

スキー場に雪は無いがすがすがしい白い山を見ながら草をとる
米子 稲田寿子

思い出いっぱいの城崎西村屋に遺影の夫を連れていく もうすぐ一年
米子 大塚典子

毎年めぐってくる誕生日なのに毎年毎年祝ってもらう
岡谷 武井美紀子

一月の雨が音をたてている 雪でない安堵と雨である不安と
岡谷 唯々野とみよ

悪魔っ祓いやどんど焼き町や村も楽しくやる小正月
諏訪 宮坂きみゑ

寒空に咲くロウバイに足を止める 持ち主と話が弾む散歩道
下諏訪 藤森静代

日本歴史の奥ざしき 京都盆地に愛着わく 周年伝統行事・盛大
大阪 與島利彦

頭の上の電線はホント頭がいいんだ 明細書がまっすぐ通過していく
千曲 中村征子

ひさしの雪が朝陽にとけて庭石をうがつ大寒の朝
岡谷 片倉嘉子

朝のラジオ体操 じゃんけんゲームに加える二人の新たな試み
岡谷 金森綾子

なだらかに整えられた植込みを藁帽子はさわさわとたどる
岡谷 柴宮みさ子

つつがなく暮らした我家の一年だるまの目入れ式に感謝の締めとなす
岡谷 三澤隆子

青空に連凧が垂直に上がる 今年はきっといいことあるよ元旦ウォーク
岡谷 横内静子

プリンタはすぐに壊れるものらしくあえて最新機能は追わない
青森 木村美映

探し物をしていたら目的物は見つからず出てきたのは昔の未来山脈
東京 保坂妙子

誕生日ショートケーキは六種類七十八歳の言葉も冴える
東京 木下海龍

今頃は友の出棺の時 テレビを消し自宅の居間より手を合わせる
大阪 高木邑子