短歌の音数
- 2020年6月1日
- エッセイ
・ゆすぶってやれゆすぶってやれ木だって人間だって青い風が好きだ
宮崎信義のうた(第四歌集『急行列車』から)
ゆすぶってやれ/ゆすぶってやれ/木だって/人間だって/青い風が/好きだ
6音+6音+4音+7音+6音+3音(32音)
この短歌の音律を考えるとき、定型律(五七五七七)とはかなり異なるのだが、立派に一つのまとまり、すなわちリズムをもっていることがわかる。舌の上に乗せて短歌を口ずさんでみよう。
口語自由律とはいえ、「音律」がいかに大切か、わかるのだ。
昨年の、12月8日の「未来山脈70周年記念大会」の折、藤原龍一郎氏の「口語自由律の光と影」と題した講演の中で、なぜ口語自由律の歌は覚えられないのか、皆の口の端に上らないのか、との提案がなされました。
あれから私なりに考えつづけています。実際、口語自由律歌のなかにも、口の端に乗せるリズムの大切さ、それを感じるよい歌がたくさんある。あまり長い歌、35音以上の歌は口の端に乗せてもらえない。するすると出てこない。
宮崎の先の歌は、32音である。
ともかく、口語自由律とはいえ、28音から36音くらいまでに留めたい。
何回でも、このように代表歌として列拳することにより、よい歌は覚えていきたい。次の世にも、つながっていくのである。
代表的な歌を上げて終わる。
・わたしのあばら骨の中で夫と子供が肉をつつき 巣をつくる(32音)
金子きみ (1960年版「新鋭十二人」日本文芸社刊)
・人間ってやっぱり淋しい動物やなあ 独りの枕につぶやいて梅雨きいている(40音)
松本みね子 (歌集『いのち流れる』)
・ふるさとの自然に還る―それが何より 生まれ育ったところなのだ(32音)
宮崎信義 (「未来山脈」2009年1月号)
・見えない自分を裸にする それでもじぶんが見えない(26音)
光本恵子 (歌集『朝の出発』)