太陽は今(未来山脈第373号より抜粋)

薄翠のはなびらひらき六月の桜がひらき散った六月
北海道 吉田匡希

八方塞がりが心に影を落とす ロールシャッハの不定形の染み
京都 毛利さち子

春のカラス一羽 幸せな住処めざして飛んでゆくのだろうか
札幌 西沢賢造

一番に逢いたい人はお父さん! は本当 でも自由も良い
福知山 東山えい子

黄色の水仙が咲いたよ 車椅子の母に窓越しの風を見せる
松山 三好春冥

地域集団作る媼ら家よりいいと悪口雑言餌に暇もて余す
諏訪 河西巳恵子

庭先で老いが転ぶ大丈夫かと言えば 大丈夫と言う谺でしょうか
豊丘 毛涯潤

夫が逝って一人では耐え難く居候をさせてもらう姉の家
岡谷 佐藤靜枝

しきりに動きたそう 動けない動かない 変だ ひょっとして
奈良 木下忠彦

コロナがね原村にも来たんだってと口から口へ実(まこと)しやかに
原 桜井貴美代

雨上がり陽を受けた水たまり二羽の雀が水かけごっこ
原 太田則子

トラクターの音が響く誇らし気に光る掘り起された土
原 泉ののか

灰色の森から生命(いのち)みなぎる緑の森へ まさしくゴールデンウィーク
原 森樹ひかる

乗客の来ない今年の連休に片付けに集中する毎日
諏訪 浅野紀子

咳をしてもコロナ? くしゃみが出た 飛沫が飛ぶ マスク マスクと騒ぐ やれやれの毎日
東京 上村茗

花冷えの夜 牧師の許可を得て暗闇の礼拝堂で一人祈りを捧げる
大阪 加藤邦昭

せっかく髪染めたのに友だちにも会えず学校へも行けない息子
諏訪 大野良恵

社会の機構 人の情コロナウイルスみな喰い荒らす
諏訪 松沢葉子

予定表 あれもこれもが中止で消され 通院日だけが残ってる
坂城 宮原志津子

歳食って生きていると何が起きても叉来年の春うららの楽しみある
藤井寺 近山紘

みんな自分の優位性を強調し自信満々な発言私はカッコ付けてもだめ
下諏訪 須賀まさ子

庭のあちこちに二寸足らずの可憐なすみれ微風に首をふりふり咲く
岡谷 花岡カヲル

曾孫十九歳の誕生日大学も決り入学を待つばかりでも行かれない
東京 保坂妙子

高齢者になって腕力脚力腹筋の衰え切実に感じる昨今
岡谷 武井美紀子

耳障りなのは「躊躇なく」と「スピード感」偉い人ほど言い訳がましい
横浜 福長英司

零下の朝は寒いけれど窓越しの日差しにホッとする
茅野 平澤元子

パソコンを替えたついでにオフィスを更新するのもなりゆきでした
青森 木村美映

集落の鯉幟あがる空にウイルス吹き飛ばせと祈る
諏訪 宮坂きみゑ

一日に何度となく繰り広げられる姉弟げんかそれでも姉弟がいていい
流山 佐倉玲奈

フランス コンクのサント・フォア教会の「タンパン」
青谷 木村草弥

新聞にテレビニュースはウイルスだ コロナコロナとほんと疲れる
小浜 川嶋和雄

予定なく五月のカレンダーは真っ白 スケッチブックを取り出す
米子 角田次代

残雪の仙丈に向かって力強く泳ぐ鯉幟病を乗り越えた私を励ます様に
箕輪 市川光男

青嵐渡るや八洲コロナ災 蝦夷の國から琉球までも
東京 木下海龍