太陽はいま(未来山脈第376号より抜粋)
- 2020年11月3日
- 会員の作品
夢の中にだけ現れる両親の海より深くかぶる帽子
愛知 早良龍平
罌粟粒ほどの種子を蒔く 五つの鉢にあふれる松葉ボタンの花
岡谷 三枝弓子
つきささる視線に顔をあげる 元気お出しと向日葵
原 泉ののか
熊除けにリンリンリンと鈴ならし人に出会えばちと恥ずかし
原 桜井貴美代
原村の気候にまさかの扇風機買い自然の風は勝てなかった
原 太田則子
一心不乱にただただ見つめている愛犬 しっぽがぷるぷる揺れている
原 森樹ひかる
アンパンマン コロナ姫を助けてあげて さみしくて心優しい女の子
山梨 岩下善啓
がんばれと声かけ続けたあの人が逝った 広島忌を迎えぬまま
群馬 剣持政幸
潔くも自信に満ちた名刺をいただいた「山崎正和」四文字のみの
京都 岸本和子
草を刈る音がする草の泣き声がする草の涙のにおいがする
岡谷 唯々野とみよ
夏の診察室は葉陰に昏く「久しぶりですね」とK先生がいう
下諏訪 笠原真由美
検査・指導・診察で半日が終わるこれがなくなったら私もあの世か
箕輪 市川光男
盆棚を作るのに夫は道具が重たくて運べない飾るのを息子に頼む
飯田 中田多勢子
猛暑の中親友の妻が逝ったとメールが届く今年一番の辛いニュース
藤井寺 近山紘
ひと抱えの花束を持って従妹がくる労りが嬉しくて目が潤む
岡谷 佐藤静枝
衣が上の「衣更」衣が下の「更衣」衣を変えるから「ころもがえ」
豊丘 毛涯潤
ピカマチスを知り大熊医院の院長先生は吾の診断の結果を見て青くなり
埼玉 清水哲
「クマ鈴を必ず持っていってね」早朝の独り散歩を心配してくれる
下諏訪 中西まさこ
短い命を燃やしつくした蝉の亡きがら 車が轢き去る夏の暮れ
大阪 山﨑輝夫
タイヤがない車が走ったら面白いだろなと頭の中が 信号待ち
愛知 川瀬すみ子
思いっきり抱きしめた夜の痺れを右の腕がおもい出している
横浜 上平正一
梅雨明けどっと押し寄せる暑さに畑仕事 下着ぐっしょり濡れる
岡谷 花岡カヲル
巣ごもりは6ヶ月目に突入し 今日も一人除草剤を撒く
横浜 福長英司
わが庭で今年の夏も見る花は まだ青いんだ白百合だけど
小浜 川嶋和雄
川の瀬音聞こえる湯の街 歩く人の姿は少なく土産店静か
辰野 里中紗衣
雨が降る土にしみ込む緑が育つ この生命こそ根っ子になろう
木曽 古田鏡三
風は未だに冷たい朝 いいことがありそうな そんな予感 きっと春の始まり
熱海 石川とみ
済んだ事は容認して振り向かず進む私の心改造計画の第一歩
大阪 高木邑子
愛しきれずに生かされる女いつまで経っても恋愛体質
諏訪 藤森あゆ美
※掲載されていた以下の作品は大木瑞香さまの作品でした。お詫びして訂正いたします。
天空に舞て来よ亡き姉よ さ緑の空天女の如く