短歌の作り方
- 2020年12月31日
- エッセイ
対象を絞ること、対象をよく見ること
対象をあるがままに見ること。あの人が言うからとか、この花は誰もがこう思うから、ではなく、私はどう感じるか。私の眼で見て感じたことが大事である。内なる感情に対しても同様である。本を読み、辞書を見て、ラジオを聴く。同じ庭の花もじっくり見ているといつもと異なって見えてくる。
言葉に出して自分の感情や具体的な花の思いなどを表現するとき、比ゆを使って自分の気持ちを表現することもあってよい。
ともかく感じたことを紙面や画面に吐き出してみよう。字数など考えないで、ともかく吐き出す。活字に表現してみる。そのあとじっくり考える。長すぎたところは三十字前後に。気持ちがダブる言葉は簡潔に。それが名詞も、修飾することば形容詞や副詞もダブっていないか、その修飾語はもっとふさわしい単語があるのではないか、音数を考えながら、別な単語を当ててみる。韻律はリズムはよいか。
数日して、その歌をさらに読み直してみる。そして完成する一首。
・父母の暮らしのかたわらの千年の湖から水をもらい顔を洗う
(金子きみ歌集『草の分際』)
・諦めの中で何をうたえと言うのか私の海が夜通し吠える
(梓志乃歌集『遠い男たち』)
・ゾウの背の高さになって見上げるとタイの空にまた近づく
(藤森あゆ美歌集『美しい水たち』)
・花びらはことば 人とことばの空間に見えぬものを見る
(光本恵子歌集『素足』)
・茜色から闇色に代わるころ若樹は声を押し殺して滴をたらす
(光本恵子歌集『素足』)
・若葉風をすって私も大きくなろう 明日の夢を欅に誓う
(貝沼正子歌集『触角』)