素足(未来山脈第381号より抜粋)

雷鳴とどろきあられの音して雪の予報の朝に目を覚ます
札幌 西沢賢造

今まで通りでいい オンオフで足りるのにやかましい進化
千曲 中村征子

ゴーッと地が鳴りキノコ雲が立ち上がる「撤退しろ!」と無線の叫び
下諏訪 笠原真由美

寒風を背に千曲川のせせらぎを聞く 年明けの初歩き五千八百歩
坂城 宮原志津子

八十路の我はワープロで作歌 昔の文明の機器は老人の杖だよ
下諏訪 小島啓一

ひみことはやまたいこくか日本の創造主は女帝なのか
神戸 池たけし

空も湖も澄んだ青 八ヶ岳は雪化粧して見下ろしている
岡谷 花岡カヲル

川中美幸や細川たかしは素朴私なんかでも話しかけてくれる
箕輪 市川光男

拭くたびに私を映す鏡は口角上げて老をつくろう女の見栄
岡谷 土橋妙子

二人からプロポーズ受けし走る馬のたてがみのように心が揺れる
埼玉 清水哲

結婚して夫が作ってくれという朝鮮漬け 食べたことがない
岡谷 武井美紀子

Yarukiを持ち合わせてるかそれで決まる尽くせぬYaruki希望します
東京 久保田万作

精一杯生きて潰れた人を非難できない 頑張れとはもう言えない
つくば 辻倶歓

ホカホカの炬燵に屈託なく笑う夫婦 あたしも支えるよ
富田林 木村安夜子

助けを呼ぶこともなく塩をなめ水を飲みつつ餓死する二人あり
神戸 粟島遥

我が君とハウルが同じキンナンバーとは 声が出るほど驚いた
山梨 岩下義啓

時間がたっぷりあった学生時代 貧乏旅行のお供はいつでも青春18きっぷ
流山 佐倉玲奈

壇上で一列に並んで万歳と手を上げる 誓いを新たに真剣な目
熱海 石川とみ

頬がやさしい目が優しい白髪の箒職人確かな手元へのこれは恋か
岡谷 唯々野とみよ

叔母が逝き生家の家系で年長となり自覚と寂しさ
北九州 大内美智子

節分は二月二日 福は内コロナ外 笑いあって二人だけの豆まき
松本 金井宏素

コロナにかかり長い入院 退院したけれど本当に回復するのか
埼玉 赤坂友

日曜日ラジオの音楽聞きながら 仏画に向かうお気に入りの時間
下諏訪 今井恵子

長い階段はS字形に登る 大袈裟だがこれが私の生きる哲学
大阪 加藤邦昭

君とのお話は秘密心の奥に仕舞うよ 柔らかなボールが飛んで来た
伊那 金丸恵美子

去年今年コロナ禍の世に光あれ逝きしも遺るも魂魄(ブシューケー)違わず
東京 木下海龍

「明るい心」そのように過ごそうと孫の書初めを部屋に貼る
米子 笹鹿啓子

なんと優雅な小鳥の舞か ダンシングの指揮者はどなた
下諏訪 光本恵子