- 2021年5月6日
- エッセイ
今回は短歌の技法を考えてみたい。
☆一字あけについて
短歌を詠むとき、ここは一字あけが好いか、詰めるがいいか、迷う時がある。
基本的には一字あけは、短歌ではあまりしない。それでも一字あけたほうが良い場合がある。
一字あいていることにより、必ずここで一呼吸止めて読み味わう。また、漢字が重なる場合などはどこで一呼吸つくのかわからない、そんなときは一字あけをすることによって、深くその歌を味わうことができる。
・娘よ何が起ころうともお前の人生 暴風雨も明日は晴れる
(光本恵子歌集『紅いしずく』)
☆倒置法
歌の述べる順序を逆転し、強調しようという短歌の作り方がある。主述を逆転し、最後の止めを名詞止めにする場合など。
・ベッドにからたちの実を一つ とろり溶けてく溶けてく わたし
(未来山脈・川瀬すみ子)
・生きるコツが掴みたいから行ってみるあの沈丁花が香る坂
(未来山脈・福長英司)
・西村陽吉も土岐善麿も渡辺順三も啄木の血の踊る口語歌の今
(光本恵子歌集『紅いしずく』)
☆擬人法
その辺に転がる空き缶も擬人法を使うことによって心が入り込み、生きもののように短歌が立ち上がってくる。
・少し錆びたドロップスの空き缶 内緒話ひとつ閉じこめて
(未来山脈・三好春冥)
・マグネット一つを用にダイソーをめぐる私はひととき魚
(未来山脈・貝沼正子)
☆オノマトペ
擬音や擬態語をまとめてオノマトペと言う。同じ音を繰り返して使い、音の感覚や動作が個性的な色合いを増すはたらきをする。歌が生きてくる。立ち上がって来る。情感が読む者に伝わって来るではないか。
・会うたびに愚痴を言われて暗闇がモクモクモクモク増えてゆく
(未来山脈・藤森あゆ美)
それぞれ未来山脈五月号より短歌をとり上げる。