素足(未来山脈2022年8月号より抜粋)

連休できた息子が電話パソコン 電気関係の修理完了 当分安全
大田原 鈴木和雄

前庭にライラック淡い紫の花 いとおしく雨に濡れて咲く
岡谷 花岡カヲル

裏側の美しさにも目を見張る 磨き抜かれた母の刺繍
諏訪 大野良恵

虚空蔵山のぼりて観れば濃紺の伊豆半島は初夏の陽に霞む
静岡 鈴木那智

補助金を頼りに飲食店 汗だくの週末はうれしいひめい
鳥取 小田みく

日差しなんか恐くないでも流行なんで俺も日傘
埼玉 木村浩

あっちの水もこっちの水も甘くも辛くもなし減塩対策
仙台 狩野和紀

トンネルが出来て近くなったフラワーパーク 一時間弱で到着だ
牛久 南村かおり

島国日本 最高峰「富士山」標高約三千八百米 発登山は三十歳代
大阪 與島利彦

幸せは食べて寝ること女抱く男女相悦の今夢の中
兵庫 明石の人

しばらくは豆餅 おはぎ 苺ジャム作りに夢中で時が過ぎてゆく
岡谷 金森綾子

入学記念のラベンダーを持ち帰る児は息をはずませ頬を染める
岡谷 片倉嘉子

諏訪の海がこんなにも凪いでいる 桜花見上げる赤砂崎
岡谷 横内静子

枯庭に春を呼び込む春黄金花(サンシュユ) 始まる花リレーに心ゆるむ
岡谷 三澤隆子

彼岸より十九日ラナンキュラスの紅い花びらすべてを手の平に
岡谷 柴宮みさ子

少しずつ戻り始めた日常 夏休みはどこへ行こうか
流山 佐倉玲奈

「百超えたらテレビが来るよ」と言うと母笑う
神戸 粟島遥

施設に戻る直前に「ありがとよ…忘れない」という父の奥底
諏訪 藤森あゆ美

今日は子供の誕生日 やせ衰えた姿見せたくない
京都 岸本和子

仙覚の深みの中にユーモラス君はどう読むマル(〇)・サンカク(△)・シカク(□)
諏訪 伊藤泰夫

交通事故以来身体が自由に動かない 這いずりながら仕事をする
さいたま 赤坂友

玉ネギの出荷が始まり実家の手伝いに大中かわいらしい玉太り
米子 稲田寿子

生きたいと死にたくないは近そうで遠いと思う 気力がたりない
北海道 吉田匡希

たかだか知れている生き方を生きて透き通る青い空を見る
札幌 西沢賢造

虹の一番内側の色の花菖蒲緑風の中に咲く 明方のマジックアワー
松本 金井宏素

さわやかな塩嶺の丘飛び交う鳥のその名は知らず 木陰に寝転ぶ
下諏訪 光本恵子