太陽はいま(未来山脈2022年10月号より抜粋)

あなたのかかげる左手に羽が生えたように駆け寄る曲調はワルツ
京都 毛利さち子

「鳥屋」と言えば「鶏か」雑ぜ返す雅子さん 私も抜け毛一本摘まみつつ
諏訪 河西巳恵子

訳がわからなくなったと妻 これはまたしてもと血の引く思い
奈良 木下忠彦

湖面に跳ねる魚の波紋湖底に眠る古代の暮らし 朝の光が広がる
岡谷 三枝弓子

死の花に埋もれて逝った人の白骨摘む惜別
東京 木下海龍

「背番号3」を忘れぬものたちがアルウィンの空を見上げる八月
下諏訪 笠原真由美

宿場町歴史ウォーク猛暑でガイドさんの話より皆が日陰を探す
米子 安田和子

俺は書く投稿文の職業欄 農林業と名乗る八十路だ
小浜 川嶋和雄

ウクライナへの支援コンサート 弾き語りはカテリーナさん
岡谷 征矢雅子

子どもたちの緊張する顔一人一人バスに乗って場所確認
牛久 南村かおり

両の手をパチンと叩きさようならを目で合図する爽やかなひと
横浜 上平正一

天竜の流れ超えてカッコーの声 さるすべりの紅色ちらほらと
岡谷 三澤隆子

今日は七月十六日(なないろ) 虹の日と聞く曇り空なれども夢見る一日
岡谷 柴宮みさ子

凪いだ諏訪湖とふたつの雲がぽっかりトライアスロン大会が始まる
岡谷 片倉嘉子

フォッサマグナミュージアムには大きな翡翠がどっかりゴロゴロ
岡谷 横内静子

大きな絵を描いてみたい 水のなかで微笑む大カバと小カバ
神奈川 別府直之

それぞれソッポを向くあんなこと 骨皮スジコの思考回路はペチャンコ
千曲 中村征子

時の流れは早いもの雨を待って秋野菜の大根と白菜を撒く
岡谷 花岡カヲル

楽しみにしていた弓道の大会「出られなくなった」息子からのLINE
諏訪 大野良恵

死に絶えた砂礫の庭は灼け甲州の強い風で砂塵が舞いあがる
甲府 岩下善啓

暑い 今年も厳しい日々を送る 青空も白い雲もうらめしい
東京 上村茗

あの友この友 同級生の訃報が まぶたとじれば思い出あふれる
坂城 宮原志津子

痛いようー 夜中ふっと聞こえる黒豆畑から 鹿にかじられ
福知山 東山えい子

四つの弁当に朝ドラも詰めこんで出勤し今 再放送たのしむ
米子 大塚典子

令和四年八月十五日第七十七回終戦記念日 奇しくも小生の出生月日
大阪 與島利彦