「桑原政昭作品集!」 を読み味わう

「桑原政昭作品集!」 を読み味わう

光本恵子

ポエトピア社刊 一九七五年発行

・ほろ酔いで帰ったアパートに 大学にいかなかった友からの手紙がまっていた

・真白なシナリオを小脇にかかえて灯の敷きつめられた街をでる

・フィットワークささえる祝日 積みあげた夢を人形の街にはなそう

・ピアノの愛撫をしたら待ちくたびれた週末のひとりぼっち

・耐えるよりないのか 凍り尽きつきそうな私 夜明けたぐる刻がつづく

・のしかかってくる断崖をも砕く果実をむさぼる少年の背中

・乾ききったトランペット港になりひびき わたしは青春のまんなかに降りる

・ジーンズを穿きかえどうにもならない暑さと連れだって街をゆく

・もえろ 燃えろ 故郷の夕焼け ガイド・ブックもたない僕を飾れ

 

桑原政昭「あとがき」によると

・・・この作品は短歌を核に編集し、大きくは2つにすなわち(時刻はいらない〉のタイトルのもとに抽象的傾向の短歌と自由詩、また最近の〈素描〉はスケッチもしくは写生的な短歌という具合に大別した(略)青年期は自ら自分を教育する時期であると考える。
ようやく私は〈生き方のレッスン〉をはじめた。 それはラセン階段を、一歩一歩降りていくような、一筋の道をめざすのではなく(求道者のような一筋の道を考えていたのは皮肉であるが)、むしろ豊な海への出向で、限りない大海を垣間見ているのである。

この歌集は桑原二十歳の作であり、浅野英治によるところ大である。 宮崎信義の「新短歌」叢書に入 っている。装丁を押本昌幸。一九七五年三月二十五日作成。
現在、鳥取県にお住いの押本昌幸氏に桑原につい 尋ねると、
桑原政昭(くわはらまさあき)は一九五一年生まれ。大分市出身。法政大学社会学部卒。月刊広報誌『原子力文化』の編集に携わるとともに、あちこち地域おこしを取材してルポする。 編集者としては、現在もなお活躍してるそうである。