素足(未来山脈2023年2月号より抜粋)
- 2023年2月1日
- 会員の作品
高層ビルの谷間に迷う 港への道を見つけて風が抜けた
松山 三好春冥
思い出の一コマとして一人食む新幹線に鮭のおにぎり
一関 貝沼正子
秋冷にひとりと思うとき秋明菊の白に心あたたまる
米子 大塚典子
諏訪の景勝地に建つ光本師の歌碑 さざ波きらきら夕陽が照らす
下諏訪 藤森静代
抱き上げてくれた記憶をひきずって手のひらと星 手のひらと星
北海道 吉田匡希
介護真最中の従姉妹は自分のためにごほうび旅行したいと沖縄へ
岡谷 佐藤静枝
霜降りぬ間に秋仕舞い 青いトマトはピクルスにしよう
岡谷 三澤隆子
何かを置いてきたようで馴染めない 色付き始めた街路樹の道
岡谷 片倉嘉子
絵地図で諏訪社寺宮寺の位置を確かめ当時に思いを馳せる
岡谷 横内静子
ほのかに柑橘の香る宿 今宵わたしをいやしてくれる
諏訪 宮坂夏枝
ありそうでなかった「上毛かるた」のあれこれ絵札で読み解く七十五年
群馬 剣持政幸
食べたいものがある舌を飼っているのよ私はね欲張りさんのお姉さん
岡谷 今井菜々美
貧しさと夢だけの夫との昔蘇る重く流れる神田川歌う南こうせつ
四條畷 高木邑子
蜂蜜療法はハート型のピカマチスとの相乗効果で効き目百倍
さいたま 清水哲
夢にまで顕ちくる母よ慈母観音あなたがいますあの天の川
明石 池たけし
干し大根の季節がやってきた手作りの大根を持ってくれる友がいる
米子 稲田寿子
コスモス畑に迷い出て 母の手をひき 幼子にもどる
鳥取 小田みく
大人になり全てを見返してやろうと思ったなれの果ての今日
仙台 狩野和紀
家の中はTVついてるままだし部屋のなかは散らかっているしもう耐え切れない
岡谷 小口昌太
夜が明けて鶏が啼くまでにわたくしをお前は三たび否むであろう
青森 木村美映
湯の中に千個の柚子を投げ入れて今年の凶を洗い流さん
神戸 粟島遥
雨の日は冬のキリン恋し雨粒舌先葉っぱ喰むキリンは喰む
大阪 花菜菜菜
気がつけば闇一点を見据えおり身のゆく末思う真夜中
京都 後藤多加子
富士から富士川沿いを富士宮へ こころ整う身延線の旅
神奈川 別府直之
薄紅の雪煙に包まれて常念の夜明け 春はまだ遠く
松本 金井宏素
子どもと訪れるアメ横へ 幼いころ祖父母に連れられてきたこと思い出す
流山 佐倉玲奈
ぺこぺこしたように見えてもいい 笑われたっていい
さいたま 赤坂友
その目はなにを写しているのでしょう 六等星を住まわせている
所沢 須藤ゆかり
玄関の靴が暴れている赤い靴碧い靴いっぱい花が咲いた
下諏訪 光本恵子