太陽はいま(未来山脈2023年4月号より抜粋)

縦 確認、横 確認、斜めよし さあオセロの駒返す瞬間
諏訪 河西巳恵子

寂しいネ話の出来ない日もあると一人暮らしの要介護4の世界
藤井寺 近山紘

深夜の静寂を駆け上がる足音 夫は動揺隠さず母親の死を告げる
諏訪 大野良恵

おもくゆるく白鳥の影過ぎりゆく夕暮の橋渡る頭上を
一関 貝沼正子

せっかく浮かんだ短歌が思い出せない頭のどこかに有るはずだが
市川光男

「わっ爺さんだ」「わっ婆さんだ」視野の中には夫だけ
鳥取 角田次代

ライオンハートの王と呼ばれたリチャードを幽した城 今は廃墟に
下諏訪 中西まさこ

おいでなすったか猿 ハウスへ入ると椎茸を食べ散らした跡
福知山 東山えい子

〈まっとうに生きているだけ〉で生きている意味が有る それを信じて
つくば 辻倶歓

久し振りに娘一家が来宅夫の背を越した孫は顔にはニキビが出て
米子 安田和子

電飾を外した並木を撫でてゆく瀬戸の潮風師走の光
福山 杉原真理子

「今年は南天の実の付きいいね」と夫 私は枝を透かせる
岡谷 横内静子

茜色の雲を背に富士山ずっしりと 仰ぎ見る夕映え
岡谷 三澤隆子

山の端の雲が銀白色に輝きまわりを熱くして初日昇る
岡谷 片倉嘉子

四年に一度の洗礼を満開の桜は何を思ったか狂い咲く
群馬 剣持政幸

大雪がもたらした珍風景 コーヒーすすり眺めるだけの老ふたり
下諏訪 藤森静代

よろよろと歩道をわたる幼へび冬眠わすれたか師走の雨に
横浜 上平正一

きれいな生き方ってどんなだろう 寒風に視られて想う
富田林 木村安夜子

ひとり増え孫中心の正月は久し振りの我が家の“おめでとう”
北九州 大内美智子

下火になりつつあるコロナ 日常生活への期待がふくらむ
諏訪 増田ときえ

あの朝何を思って目覚めたか 何のための目覚めか 夜になり道を歩いてみた
岡谷 渡辺昌太

今年が最後という賀状が増えた 時代の流れ化疎遠になるな
大阪 山崎輝男

八十路になって一人きりの新年 孤独に負けるなと宙の声
奈良 木下忠彦

日陰に残るクリスマス寒波の根雪 しっとり降る小寒の雨にとける
岡谷 三枝弓子

「皆既月食」「天王星食」神秘的な赤銅色の月がぽっかりと秋の夜半
伊那 金丸恵美子

今朝は零下十度諏訪湖は全面結氷 郷人は御神渡りを期待する(一月二十日)
岡谷 花岡カヲル

もう二月か の後にまだ何もやってないと続き さあどうする私
愛知 川瀬すみ子

小屋暮らしをする人のユーチューブ 自分にも出来そうだな
山梨 岩下善敬

世界中を歩いた夫と私 紺碧のジブラルタル海岸でカンツョーネを唄う
諏訪 宮坂きみゑ

木立の中を汽車が少し見えてくる 旅立つ姉が窓から手を
木曽 吉田鏡三