光本恵子が選ぶ歌
- 2023年5月30日
- エッセイ
・水たまりの氷の空をビリッパリン八歳のブーツそろそろとゆく
貝沼正子
・泣いたり笑ったり沈んだり浮かんだり生きるって楽しいよな
市川光男
・修学旅行のようなウナギの寝床 薄暗い中に八つの頭が並ぶ
角田次代
・親が差し入れてくれた(いかめし〉が食える幸せ 親の事はもう赦そう
辻 倶歓
・選挙が来れば血が騒ぐざわめくようなこの鼓動は止まらない
剣持政幸
・わが町が下駄スケート発祥地 二本刃・三本刃は今博物館に
藤森静代
・笹の葉を鳴らして日暮れの風が吹きあなたのくちびるも震えてる
上平正一
・ちゃんと生きているか 自分に問うてみる 人をうらんだりいじけてみたり 冬
木村安夜子
・悔いは無い精一杯生き働いた 山と短歌を親友として
大内美智子
・NATOの温度差がウクライナ支援の毛布を奪っていく
増田ときえ
・再三の病を得て幼子のような妻 なんとしても守らねばならぬ
木下忠彦
・小寒の雨は根雪をとかす庭先に身をとじたふきのとう五つ
三枝弓子
・今宵は娘とビザパーティー「マルゲリータ」と「ゴンゴンゾー」の食べ比べ
花岡カヲル
・若い頃の友もいいけど 老いての友もいいねロックを聴いて
川瀬すみ子
・通りすがりの人に庭のフキノトウをあげたらヨグルトになって返ってきた
岩下善啓
・世界中を歩いた夫と私 紺碧のジブラルタル海岸でカンツォーネを唄う
宮坂きみゑ
・木立の中を汽車がすこし見えてくる 旅立つ姉が窓から手を
古田鏡三
・父と母と夫がいたこの家に私は今ひとり生かされて
佐藤靜枝
・大洗 赤い橋が那珂川にかかる風景楽しむ海の入り口
南村かおり