光本恵子の選ぶ歌

光本恵子の選ぶ歌 光本恵子
二月号より

・迷惑行為だったんだポスターで知った背中のリック
木村浩

・サッカーW杯次回の8強を期待して ベッドに
増田ときえ

・「私たちの国籍は天にあり」刻まれた墓碑の周りはりはすでに満天星で真赤
南村かおり

・八十路坂 幼少期 故郷の砂浜で相撲や海水浴 今も記憶・鮮明だ
與島利彦

・末子ちゃんから電話あり 赤ペンで花丸つけて日記に書き記す
角田次代

・啄木短歌に魅せられて始めた短歌五十年私は今かの城跡の石垣の上
市川光男

・人生とは鉛筆一本によく似たり削られて小さくなり消えてゆく
鈴木那智

・コロナ 戦争 異常気象 不景気 地球が悲鳴を上げている
大内美智子

・秋はいい新米旨いよ果物もね でも夢でいい母の芋飯が
川嶋和雄

・どうだんつつじの紅葉よ 私の汚れた気持ちを洗い流しておくれ
辻倶歓

・夕映えが消え去った後にしまい忘れた記憶のかけらを拾う
西沢賢造

八月号より

・白い花が咲くドクダミは外傷の万能薬 傷に青汁を垂らした
金井宏素

・原爆慰霊碑に七国の首脳が揃って献花意義ぶかき
鈴木那智

・微妙だな気分が揺れる源の水槽さ水から生かされている
今井和裕

・夫のすきだった卵料理あれこれつくる夢を見る
宮坂きみゑ

・連休が終ると夏野菜の植付で畑が忙しくなり麦ワラ帽子の出番です
稲田寿子

・いったい誰が何が怪物なのか 子の 親の 教師の立場
佐倉玲奈

・父の形見の杖は茶色母のはゴールド私のは碧三つ並んだ玄関
鈴木和雄

・風に身じろぐ草の花に歌の種をもらう 日和雨を恵みに
三好春冥