太陽はいま(未来山脈2023年10月号より抜粋)

ペンギンがクジラを食らう夏空に一億人に「暑い!」と叫ぶ
神戸 粟島遥

実感のない通信費がかさむ スマホを持っているだけで
松山 三好春冥

咲き競う紫陽花の花いろいろ 重い梅雨空を押し上げて咲く
岡谷 三枝弓子

クレマチス カンパネラ 紫陽花 燕子花 ラベンダー雨の頃の花青い
諏訪 河西巳恵子

一九四五年から七十八年後の八月六日 今年も原爆死没者慰霊式が開催される
大阪 加藤邦昭

何気にめくった新聞「おくやみ欄」に友の名前…「エッ」思わず絶句
坂城 宮原志津子

白髪のショートヘアに紅いイヤリングがよく似合う 真夏の駅ホーム
富田林 木村安夜子

難攻不落の名城を隠すように要害の山から真下の集落に陽があたる
群馬 剣持政幸

こないこないよこない 金曜が過ぎる待とう月曜日
千曲 中村征子

グランドカバーのハーブ達爽やかに香る 今日から文月
福山 杉原真理子

気温五十度を超す新疆ウイグル 強制労働今もあるのか
大阪 山崎輝男

つゆ時期も雨なし霧なく自動車で 敦賀へ行きます昆布を買いに
小浜 川嶋和雄

訳の判らない電話ばかり掛けてきた若い君 私を故郷に案内してくれるという
甲府 岩下善啓

年を追うごとに強まる暑さ 猛暑酷暑炎暑 あえぎつつ生きる
奈良 木下忠彦

これ以上は老害と見定め 退社してから三度目の夏
京都 岸本和子

ひとつひとつと流れてゆくとき万灯会は都会の夜景みたいに奇麗
京都 毛利さち子

閉山の町に工場やってくる木造校舎はそのまっ先に
札幌 石井としえ

三角頭のオクラ納豆に負けないネバネバで夏の暑さを乗りきろう
米子 稲田寿子

大きさを東京ドームで言われてもよくわからない みたいな日々へ
北海道 吉田匡希

第一一八回尚徳地区敬老祝賀会三一八名に仲間入り
米子 大塚典子

つらい検査も一通り終了した 原因解かり一喜一憂
鳥取 小田みく

四月年を重ねれば月日が早い何かしようと思うだけで一日が終わる
箕輪 市川光男

iPadの暗き画面が連れてくる長方形の夜のみずうみ
埼玉 須藤ゆかり

すでに負けこして来た御嶽海が千秋楽の日は勝ててほっとした
諏訪 宮坂きみゑ

渚に出て波の音を聞く 風に吹かれながら一人で笑う
横浜 酒本国武

白雲のベールを被った蓼科山 昇る人を包んでいる
原 太田則子

カラマツの並木が続く一本道 娘と車で高原音楽堂へ
原 桜井貴美代

梅雨前線おいこしてはやぶさ号で北上する 孫の顔も雨のち晴れ
原 泉ののか

検査結果よし 気分軽やかに病院の駐車場へ
原 森樹ひかる

レクもコロナで制限だったのが戻り諺かるたをテーブル一杯に広げ
飯田 中田多勢子

コンサート曲を決める筝曲「水の変態」宮城道雄の代表作
諏訪 宮坂夏枝