素足(未来山脈2023年11月号より抜粋)

上座敷の窓を開ける 鴨居に吊るした風鈴がからころ
岡谷 花岡カヲル

俗世の冷たい水に当たったか 胃腸薬の使用期限を確かめる
松山 三好春冥

大林宜彦の「最期の講義」未来は君らと逝く
札幌 西沢賢造

数こなしても本命が現れない一か八かの本との出会い
諏訪 大野良恵

処暑過ぎても続く真夏日 危険な暑さにげんなりする
諏訪 増田ときえ

今 香港に居るよ おじいちゃんはどこに住んでいたのかな六年間も
横浜 大野みのり

人と人 自分の考え言えるのは心理的安全性があるからだ
神奈川 別府直之

同窓会は一級建築士の同級生が企画した東京建物ツアー
茨城 南村かおり

次々と季節外れの台風 花火大会に暗雲たちこめて(長女の家族と花火見学)
原 桜井貴美代

雷鳴れど雨降らず空天気 セロリ畑の散水キラキラ
原 太田則子

花を摘んだら先客あり蜂がプンプンブンブンブン
原 泉ののか

チュルチュルルちゅるちゅるる野鳥とおしゃべり
原 森樹ひかる

心の隅に貯金したが満期になるも利子はつかず膨らむ
仙台 狩野和紀

青紫の紙風船を膨らませた桔梗ばな秋の初に咲き来る花よ
静岡 鈴木那智

雨上がりの陽が道路へと差す七月の朝 鋭い反照に素早く瞼を閉じる
伊那 金丸恵美子

苦しめど 身内なればと いとおしく 胆石四個 小瓶に遺す
東京 木下海龍

まっすぐに背筋伸ばして歩く朝 遥かな富士わらう
下諏訪 光本恵子