素足(未来山脈2024年5月号より抜粋)

北国の闇夜は吹雪の乱舞…まるで狂える悪魔の狂詩曲
横浜 上平正一

葉を落とし素となるままのナツヅタの今年の伸びを張りつける壁
一関 貝沼正子

骨すでに脆く わずかな衝撃に胸椎圧迫骨折 噛みつく痛さ
諏訪 河西巳恵子

雛飾りのニュースを見ると思い出すひな祭りのうたの遠い日のこと
諏訪 増田ときえ

暗闇に静電気の炎立つ アクリル毛布との戦い
諏訪 大野良恵

明けの青い死の匂いうっすらと生に押し出すあかね空
岡谷 征矢雅子

パカパカッと両目外して水道水でジャージャーそれが一番 花粉症
名古屋 川瀬すみ子

陽ざしない玄関が華やぐ 米寿祝い息子夫婦から花束プレゼント
下諏訪 藤森静代

ちぐはぐな季節の巡りでとまどえばことばがとけて大地をぬらす
甲賀 中村宜之

暖かくなったと思えば突然雪が降ったりと不安定な春です
流山 佐倉玲奈

何年も勉強している囲碁の奥深さは麻雀と同等の位置づけ
仙台 狩野和紀

雪解けの音ちょろちょろ リズム奏でるひととき聞き惚れる
岡谷 花岡カヲル

二階にボールの音が聞こえてくる 夜明けの子犬の遊び
横浜 酒本国武

なんとなく春の匂いのするひとだ古木の咲かす桜を思う
埼玉 須藤ゆかり

春泥は春の前触れ 磨いた靴の踏み場思案しながら歩む
松本 金井宏素

木の芽時に散歩は楽しいと言う君にゆっくりうなずく
埼玉 木村浩

八十路を前にした仲間はみんな元気で集まることができてと笑顔
米子 稲田寿子

窓の外は灰色の空 冷たく吹く風 ひざかけでほっこりの母の幸せ
米子 三好瞳

春告鳥の産声混じりのさえずりを聞く 更地になった墓地多し
境港 永井悦子

突然の窓打つ雨に父想う 入院中のあわれな姿が目に浮かぶ
鳥取 小田みく

被災地は日に日に増える復興の終わった場所は聞かないけれど
青森 木村美映

オーストラリアへワーホリに行きます まずケアンズから
東京 大野みのり

指先が奏でる文字をデジタルに乗せた延長線上には闇
諏訪 藤森あゆ美

風をつかみパラグライダーに乗ってミュンヘンの山 ドイツ青年と君
下諏訪 光本恵子