太陽はいま(未来山脈2024年7月号より抜粋)

のど自慢大会でマイクに向かっておかあさんありがとうと全盲の人
奈良 木下忠彦

春が来た 空の色が弾んでる 楽しいことひとつでも見つけられそう
京都 岸本和子

小さな家が建ち大きな家が街から消える角の肉屋も売物件と
岡谷 三枝弓子

いい時もそうでない時も温かく人を迎えて咲く桜
諏訪 大野良恵

塩原温泉病院では再起のためリハビリに励んだ
大田原 鈴木和雄

嫌うからきらわれるのか嫌われるからきらうのか 春の曇天
甲賀 中村宜之

新婚さんが桜花を背にポーズ 五十年前初デートのときめき蘇る
大阪 山崎輝男

晩春のタリーズで飲むハニーラテ蜜入れるだけで苦みは生きる
埼玉 須藤ゆかり

人が滅べば紙も仏も消える 宇宙も在りつづけるのかな?
山梨 岩下善敬

桜満開 家族も安泰 孫の手を引き幸せ桜
北九州 大内美智子

予約してひたすら検査や診察を待つ大病院のフロア通院は体力勝負
京都 毛利さち子

閏年 得した気分も日記に特記するものもなく更けてゆく
米子 大塚典子

体調を崩している私には春は目映い 都忘れの花が咲き出した
伊那 金丸恵美子

何処から種とんで来しか菜の花のきいろ鮮やかに群れ満開に
静岡 鈴木那智

五月晴れに行き交う飛行機雲 絵画のような直線が三本さわやかに
下諏訪 藤森静代

田んぼの畔が通学路だった れんげ草の花束をもらったことも
松山 三好春冥

一枚のチケットのもぎり半分夢の続きの映像が見える
藤井寺 近山紘

前ばかり見ていられないとつぶやけば俺も同じと頷かれた夜
諏訪 藤森あゆ美

今年も母の日 結婚している娘たちからプレゼント届く妻感謝の電話
大阪 與島利彦

伝書鳩は数千キロを命かけて家目指す山鳩は自ら餌を探して生きる
下諏訪 長田恵子

降りやまぬ大粒の雨にうんざりするが春の雨は大事
岡谷 片倉嘉子

会う事も叶わなくなってきて兄姉の顔を見てホッとする春の墓参
岡谷 横内静子

庭すみに競り合う緑は浅葱 野萱草 浅き春をわが食卓に
岡谷 三澤隆子

広がる新緑の中に山桜が交じっている 大和魂という言葉があった
松本 金井宏素

新緑は眩しく 散り際も美しかった桜も別に散りたかったわけでは
横浜 街川二級

ホームの温もりの中にいる我に届く老人虐待の声辛し
四条畷 高木邑子

教えてと百姓見習い息子の頼りない婆さん 先生
福知山 東山えい子

満開の桜はカエルの卵が枝にひしめいているようだ
横浜 酒本国武

また一人増えた私の主治医今度は若い女医さんだ
箕輪 市川光男

もう八重の咲く時期なのに雨の日は昼まで蒲団をかぶっています
青森 木村美映