光本恵子の選ぶ歌(八月号より )
- 2024年8月31日
- エッセイ
・トントンと胸の扉をノックする 愉しい言葉をさがして六月
木村安夜子
・この歳までを勝手に歩いた 行き先に道は無くとも山は聳える
古田鏡三
・お迎えのお母さんと風船もって公園に向かう子どもの後ろ姿に幸せ迫る
南村かおり
・あの席この席止まりゆき明るさ振りまき廻る私は車椅子の蝶
高木邑子
・梅のさっぱり漬けは我家の常備食 おにぎりに弁当に食欲をさそう
花岡カヲル
・外の香りが網戸を越えてあの店の香りだな今夜は外食
木村浩
・いやなことも苦しいこともいらっしゃい 逃げられないのが人生だから
木下忠彦
・ひとり居から三ヶ月 夫の特養老からの帰宅が迫り喜びと悲しみが
藤森静代
・文章講座の友この一年に三名が夫を亡くし全員未亡人になるとは
中田多勢子
・病を期に仕事半分とする自由人 全て脱会あとは新短歌のみ
小田みく
・パラ酵母の日本酒ローズマインド上品な花の香りの地酒が誕生
杉原真理子
・六月の夕暮れ捩花を君と愛でる 細やかに飲み乾すビールの美味さ
金丸恵美子
・一日の区切りの夕日が富士を真赤に燃やして沈んでゆく
上平正一
・いい香りリネンのシャツが干されてる白さをまして我をいざなう
木下海龍
・新婚四日目に遠洋航海へ 五ヶ月後の帰宅に妻はノイローゼ
山崎輝男
・令和六年 梅雨前線北上中 人類進化 公園に新種の紫陽花アート
與島利彦
・千曲の川辺 ニセアカシアの白い花びら舞いあそぶ初夏の訪れ
宮原志津子
・東西の名著が並ぶラウンジのみすず書房の書棚の脇にBARみすず(五月号から)
中西まさこ
・敗戦後 腹のふくれぬ雑誌を出す事で日本の文学を守り続けた人々
岩下善啓