太陽はいま(未来山脈2024年10月号より抜粋)

朝ドラ見つつ朝食終えMC女子アナの笑顔に手を振ってみる
札幌 西沢賢造

横たえる体 無理やり起こしては客人迎える彼女の意志
諏訪 藤森あゆ美

亡夫の実家の墓仕舞いあずさから上越新幹線で新潟へ行く
岡谷 佐藤静枝

ふれあい音楽会 いまの会社の新しい仲間と楽しむ
湯河原 別府直之

おれ敦賀へ若狭街道自動車で 氣比神宮にお参りするよ
小浜 川嶋和雄

河原の草花一つひとつ名前を持って健気に生きている
京都 岸本和子

死ぬ死ぬ死ぬって私はいつ死ぬんだ主治医の顔をじっと見る
箕輪 市川光男

風邪をこじらせ十日間もダウン 明日は起きるぞ気合を入れろ
鳥取 小田みく

若者のはやり言葉をつかってみるが八十路前にはムズイ
米子 大塚典子

会いたいと言う行くと「わし生きとって良いんかのお」九十八歳兄
東山えい子

父なる神様助けてと縋りつ いきる我が主我が神 私は赤子
四條畷 高木邑子

今日のことは今日にしかない割ればほら卵は白身と黄身って呼ばれる
埼玉 須藤ゆかり

漫画のヒーローのようです 二塁ベースから手を振る大谷翔平
富田林 木村安夜子

早朝に飲む梅醤番茶で塩分補給 猛暑日予報に気を引き締める
福山 杉原真理子

掃除キッチンの整理に時給二六〇〇円 塩の美味しいケインズの町
横浜 大野みのり

量産型少女歩けば六月の雨はデジタルなマトリックス
青森 木村美映

青蛙そっと手の平に乗せたれば畏まり平伏をした侍
静岡 鈴木那智

ワシントン州の土壌で実ったチェリー 海を渡って私の手の平に彩る
伊那 金丸恵美子

押し寄せてくる人 人 人オーバーツーリズム わが町も疲れてる
愛知 川瀬すみ子

朝の迎えKさんの温かい手 いつの間に私がKさん曳いていて うふふ
諏訪 河西巳恵子

暑さをしのいで散歩にでると朝日がすでに瞼にまぶしい
茨城 南村かおり

梅雨の空気が太陽と雲をおしあげている 空の先には夏があるというに
甲賀 中村宜之

食事の片付けをしながら頭では次の食事のことを考える 夏休みのルーティーン
流山 佐倉玲奈

若き日に庭の如く遊んだ山 老いて感謝で遠望する
北九州 大内美智子

きのうは蝉の声きょうはきりぎりす酷暑にも秋の訪れが
下諏訪 藤森静代

わが住居の道側垣根 百日紅並木 夏休み子供等の花見マンション
大阪 與島利彦

今日の昼食は 毎回違う店に入るのが僕たちのルールだ
東京 下沢統馬

悪口は風が吹き消す夕間暮れギザギザの葉を伸ばすノアザミ
一関 貝沼正子

窓のないスタジオで口だけが動く 論より証拠の傘を持って行こう
松山 三好春冥