素足(未来山脈2024年11月号より抜粋)
- 2024年10月30日
- 会員の作品
アラいけない明日の散歩では遅い 草刈り鎌の餌食になっているもち草の花
千曲 中村征子
地中海の満月は波間に漂い 魚がぴちぴち跳ねる光となり
さいたま 清水哲
ソックスが裏返しだと気づく午後みんみん蝉鳴く 今日は立秋
一関 貝沼正子
日本人第一号の金メダルは 女子柔道の角田選手だ
小浜 川嶋和雄
ハンドル握るカラマツ林を車で走る逞しい娘
原 桜井貴美代
大輪の向日葵のぞきこむ 幾何学的に並ぶ小さな種
原 太田則子
てっぺん大好きアキアカネ 稲穂にとまって澄まし顔
原 泉ののか
木の実ちゃんおはようごはん食べる犬に声がけの夫
原 森樹ひかる
はしゃぎ過ぎた後の鎮もり蒟蒻みたいにのっぺりした瞬間がくる
京都 毛利さち子
太陽系地球四十六億年前 球体は地核マグマ・マントル・プレート等
大阪 與島利彦
パキパキの青空は戻って来ないムシムシの猛暑日が 台風一過
愛知 川瀬すみ子
辛抱と我慢の違いを学ぶ説法 猛暑日に聞く忍耐と堪忍
松山 三好春冥
就活を兼ねた身辺整理のための断捨離なぜトレーナーを目指したか
諏訪 宮坂夏枝
俺が俺がと前に出て口を開けば嘘ばかり離れてわかる真実
仙台 狩野和紀
「中西さん、中西さん」と何度か呼ばれて はっ と目を開けた
下諏訪 中西まさこ
見守りましょう 大人が我慢するとき 越えられない壁はないという
流山 佐倉玲奈
窓から遠望できる針の木岳 緑の黒部ダムはその真下に光っていた
松本 金井宏素
「露の身ながら さりながら」永久にあれよと今を生きる
東京 木下海龍
成田空港から飛行時間十一時間四十五分のはずが十時間でアブダビ国際空港到着
松本 大野みのり
古い町の小さな寺 住宅街の中の涸れはてた庭
山梨 岩下善啓
年に五十回守屋山に通う父 ラクに登れるのは糖尿で痩せたからだと
諏訪 小坂泰夫
三年前に亡くなった夫の耕七と世界中旅した思い出に生きる
諏訪 宮坂きみゑ
敗戦時に生を得て七九年 米子の伯耆富士・大山から富士の見える街に住む
下諏訪 光本恵子