太陽はいま(未来山脈2025年1月号より抜粋)
- 2024年12月31日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
・リズムよく庭の敷石打つ音か軒の雨垂れ時の源
・顔のないデジタル時計青白くホテルの壁に時をおし出す
福知山 東山えい子
・政治の無策や知らんと思ったけど お米ない? 人に頼られ心が痛む
・朝日新聞の隅っこに 米作り時給十円とあり でも田捨てられず
岡谷 三枝弓子
・八ヶ岳に向かう車窓から蝉時雨が酷暑に疲れた心にとびこむ
・庭隅にふっくらと茗荷こんなに取れたと誇らしげに言うだろう亡夫は
奈良 木下忠彦
・退職して新しい生き方を求める 人間の多様さ命の重さに気づく
・人生の苦からは逃れられはしない 苦を背負ったまま答えを探す
坂城 宮原志津子
・三年連用日記帳十五冊ずらり並ぶ本棚 数々の思い出終活の第一歩
・何着ものスーツ下がるクローゼットの中 今は不要の品と思い切る
諏訪 大野良惠
・コロナに感染した夫を隔離 そうだ浴衣をリメイクしよう
・引きこもりの夫に提供するべく食事を扉の前に置く
札幌 石井としえ
・歩行器で散歩の道の枠花壇ひまわりの背伸び楽しみにして
・カラス見て過ごした病室冬の日よ今日雁見てる歩行器散歩
原 桜井貴美
・道端にふと目をやれば曼珠沙華 残暑の日々に秋の気配
・十月に名残の蝉の声を聞くツクツクボォシツクツクボォシ
原 泉ののか
・どんどん山容かえる八ケ岳 特急あずさは走る
・ばあば二人に囲まれ孫は得意気 天までのぼる
原 太田則子
・葉の落ちる音ほおをなでる風のにおい あの暑さを忘れさせる
・冷水をグイと飲み干した夏 今はふうふう茶碗を両手で囲む
森樹ひかる
・中学生の合唱 ホール全体にはち切れんばかりの歌声響く
・力強い歌声未来へ向かう若いエネルギーが満ちている
藤井寺 近山紘
・同級生何年も会っていないのに小さな町医者でひょっこりと出会う
・クラブの先生の話題当時どことなく気に障っていたと苦笑いする
大阪 花菜菜菜
・あっキンモクセイの花あたらしい今朝の発見金木犀のかほり
・散髪のバリカン使いも介護の一つとなりて今度の日曜約束する
岡谷 佐藤靜枝一
・十月十三日両親の法事をする清々しい朝 八ヶ岳をあおぐ
・姉夫婦が健康であればこその父母法要の席 身を正して臨む
静岡 鈴木那智
・騒がしき轡虫の声は立ち退きて涼しき声の松虫が鳴く
・コスモスの咲く畑道を歩きなば一匹の蝶まとわり放れず
岡谷 征矢雅子
・暮れゆく高ボッチ ペールピンクの満月のはかなげに沈む
・夜更けて浮かぶ二十日のおぼろ月 微かに花の香りする
岡谷 横内静子
・最後の作業療法はみそ汁作り 豆腐にわかめと千切り葱を浮かす
・スタッフの昼食時に合わせ煮過ぎず暖かくと感謝を込める
岡谷 三澤隆子
・白色ピンクの秋明菊にホトトギス いちいの大木囲み風に踊る
・姉から株分け藤袴 わが狭庭にアサギマダラの気づくを待つ
下諏訪 長田惠子
・緑の葉の上で緑のカマキリが動かない 葉になろうと擬態努力中
・小春日和のベランダで居眠りのツバサ まったりの犬時間を過ごす
岡谷 片倉嘉子
・永井さんの歌を聴いて清々しい帰り道 高い空に風が吹く
・物干しぎおに雨粒がならび今にも落ちそうにぷるぷる震える
青森 木村美映
・魂を揺るがす如くAdoの「唱」 ひるむ背中を駆り立ててくる
・まずベースラインに耳を傾けよ 音楽だけの話じゃないぞ
下諏訪 藤森静代
・晩秋にふたりの友が天空へ旅立つ 涙にくれつつ思い出に浸る
・よき事の少ないこの頃 今宵の上弦の月のほほえみに友を偲ぶ