光本恵子の選ぶ歌
- 2025年2月27日
- エッセイ
光本恵子の選ぶ歌
・ねばならない」が窮屈です 昨日も今日もまばたき止まらない
木村安夜子
・乗り越えなければならぬ壁が次から次とよくもまー
大塚典子
・五年ぶりの金沢 金沢は金沢だった 変わったのは私
岸本和子
・足が届かぬ鎖場で見知らぬ男性が差し伸べてくれた大きな手のひら
大内美智子
・四歳のお兄ちゃんの世話を焼き面倒を見る生まれてまだ三年なのに
宮坂夏枝
・古都デルファイ神殿あとの風にきく「汝自身を知れ、イリアスよ」
中西まさこ
・またどっかでねと言うた人期待せんと続きのコーヒー
芦田文代
・郵便受けにきみのことばが満ちる 柚子が描かれた絵ハガキ
中村宣之
・モダンな気品さの装い初の蝶浅葱斑 まさかの現実に目をみはる
三澤隆子
・師走の声を聞けば思いを馳せる愛隣地区の路上に暮らす男らの事
高木邑子
・或る愛にめざめし時より幸が運河の木屑とながれてゆく
上平正一
・重苦しい大気が少しずつ抜けて空が高くなったええ風や
三好春冥
・皆生温泉で同僚に再会した父 研修所教官時代の父を初めて知る
杉原真理子
・色づいた葉をカサコソと木枯しが運ぶ「おはよう」と今日が始まる
金丸恵美子
・刺すような木枯らしの冷たさにカラマツは音立てて降ってくる
征矢雅子
私はななんでもポイポイ捨てる妻が羨ましい 私はなんでも残すが役に立たない
加藤邦昭
・寒いねと甘えられては嬉しくて優しい気持ちコートの中で
今井和裕
・白い翼を翻弄される鳥になりアイスバーグは木枯らしのなか
笠原真由美
・落葉松林が沸騰して 北風小僧が金針を吹きこぼしてゆく
金井宏素