太陽はいま(未来山脈2025年7月号より抜粋)
- 2025年6月30日
- 会員の作品
千曲 中村征子
- 言いたい言えない「遊びにおいで」近くに若い親子が越してきた
- 散歩は土手の道 ピンクの残る山に鯉のぼりを数えようっと
小浜 川嶋和雄
- 遠くよりさくら公園めれば 天辺紅いか近づけば蕾が
- 俺の見る遠敷の里のさくら皆 山も野もです白で満開だ
一関 貝沼正子
- 相槌の様子でわかるこの話二度目と分かりさらりと流す
- 右側に傾く古稀の後ろ手に左、左と気合を入れる
藤井寺 近山紘
- スーパーの出口で知らない女が最近夫を亡してネと寂しさを語る
- 日常の生活リズムが突然崩れて行き場のない時が流れるという
米子 角田次代
- 暖かくて気持ちいい布団の中で背伸びする今日の予報は晴れ
- 花吹雪の中速度を落して走るこころの憂さも花びらとともに
埼玉 木村浩
- もつなのに高級もつ鍋分かるような分からないような
- 洋風もつ鍋おもしろそうだけど食わず嫌いをおしとおす
札幌 石井としえ
- 母親のみやげに手にしたエンゴサク春の遠足どの子もきまって
- 思い出はそこに行き着く春の日に野原で食べた子等とのおにぎり
青森 木村美映
- このところ禁酒がうまく続いていてドヤ顔しつつ定期採血
- 肩こりの薬を処方してもらうおそらく眼鏡があわないせいだ
原 桜井貴美代
- 出発だハンドル握る夫イキイキ春の訪れ心華やぐ
- みちのくの三春滝桜 生きて千年 紅の花びら滝の流れ
原 太田則子
- ほっ眩しい朝日をさけるか恥じらうかクリスマスローズの花ゆかし
- 杏の花 蕾も花びらも丸っこいそれを見る目もまるい
原 森樹ひかる
- またたく間に輝く緑の森に 感激の一瞬
- 柔らかな緑 優しい色つける小さな野の花に春の陽ざし
原 泉ののか
- 春休み雪がみたいとやってきた孫 大手ひろげて迎える
- 標高差四六六メートルを一気に上がるロープウェイ 鳥になる
大阪 加藤邦昭
- ゴールデンウィークの息子の帰省に合わせ関西万博を見学する
- 煩雑な予約手続きだけを息子に任せたが彼は入場料も負担する
茨城 南村かおり
- 十年ぶりに姪の家訪れる 子供たちの成長ぶりに目を見張る
- 訪れたマンションの高層階が姪の家 最高の景色と広い空間
山梨 岩下善啓
- 黄昏の伏魔殿 老師念願の障壁画が完成する
- 大画伯に色紙を所望すると障壁画の小下図を載く
岡谷 花岡カヲル
- 黄砂くる対岸の美しい景色ぼやけしだいに全て見えなくなった(三月二十五日)
- 洗濯物は室内干とする 近くの西山もうっすらと黄砂
埼玉 街川二級
- 躑躅枯れゆく 今こんなにも暇という現実もまた私にはやさしさか
- 読み終えて久しい本を処分する前にもう一度読む烈しさが欲しいが
福山 杉原真理子
- ICUで面会以来五年ぶりに兄に会う 積る話を次々に
- 施設に暮らし一年不自由な体で頑張る兄 手の温もりに涙 涙
東京 須藤ゆかり
- 腹のいたいひとが隣りで寝つづけて電車はいっそう各停になる
- ゆらゆらと水草めいて泣き出しそう 泣き出しそう 膝頭をあやす
坂城 宮原志津子
- 病棟スタッフの見送り受けピリオド打つ夫 入院生活一〇五日間
- 小雪舞う一月緊急手術そして桜舞う今 経過観察になり家路へ
富田林 木村安代子
- 各駅停車の窓の向こう 土を耕す人の背中が丸い
- まあるい地球のてっぺんに立つ気分 春の星天あおぐ
松山 三好春冥
- 後期高齢者になり不都合なことが増えた カフェインレスにしよう
- コーヒーも紅茶もカフェインレス 人生我慢できないことばかり
米子 大塚典子
- 幼より小さなよろこび見つけるを得意とし一寸先を生きる
- ブクリブクリと浮かんでくる過去をプクリプクリと春の川に流す