いのち(未来山脈2025年9月号より抜粋)
- 2025年9月1日
- 会員の作品
京都 岸本和子
- ブラタモリ宮古島 魅惑のブルーに囲まれた遠い遠い夢の島
- 「ちょっとみやこじままで」先生の余裕のひとこと 私も言ってみたいです
一関 貝沼正子
- 首あおく鳩歩み来る駅前に人を待つ間の思いあれこれ
- こんなにも今満開の山桜訪う人もなく楸邨の句碑
大阪 花菜菜菜
- 夜ふけてドアノブの音 夫かと驚く お隣さんご帰宅の音
- 徘徊も困ったものよ 知らせをくれた「梅田曽根崎警察署」
茨城 南村かおり
- 北海道富良野 何年も憧れ写真集で見た地に立っている
- 家族で行けるこの恵み 最終プランは夫が決めた
岡谷 花岡カヲル
- 四季咲きのピンクの大輪のバラ卒寿を祝ってくれるか庭に咲きこぼれる
- 地元の大きな梅とやっと出会い我家の常備食さっぱり漬けを作る
平塚 今井和裕
- 雪道に一歩ずつ進め雪止んでそのくり返しに時間感じる
- そんなにも固執するのか止めてみな気分転換風に吹かれて
岡谷 佐藤靜枝
- 早朝に尾瀬へ向かう六月十日空模様気になるツアー旅
- 亡夫の写真に手を振り久々の旅に出る歩く不安を封じ込め
彦根 久保仁
- 赤と青交じれば高貴な色 古代から続くチリアンパープル
- 乳首紙める赤子のようにキスする君はパープルの葡萄咥え
岡谷 征矢雅子
- 黒くたたずむホテル群のまばらな灯り和倉温泉に雨けむる
- しょっぱい和倉の温泉なめてみる貸し切りの湯のようわれ一人
小浜 川嶋和雄
- わが里は福井県小浜市池河内 仕事は炭焼きおれ山奥育ち
- 我家は茅葺屋根だ三角の 七十坪ほど二階は焚き木が
下諏訪 笠原真由美
- ソープ皿きれいに洗ってシトラスの香の石鹸をのせれば夏来ぬ
- 南口を出て下連雀の道を歩くリアルな夢に笑ってしまう
岡谷 三澤隆子
- 小さきわが畑の予定巡らせて今年も実家の苗場へ向かう
- 兄のくれた助言を今は甥から教えられ植える苗の品定め
岡谷 片倉嘉子
- 帰りぎわ師から手渡された自慢焼き手のひらにぬくもりいつまでも
- バスのなかではテンション高めの会話とびかう 仲間とのバスハイク
岡谷 長田惠子
- 早苗の田と麦秋の畑がパッチワーク模様に広がる松本平 夏はもうすぐ
- 生きているのではなく生かされている 人生を全うするとは
岡谷 横内静子
- 道すがら知らない者同士の他愛もない会話 互いの帽子を褒め合う
- 『ホケキヨ」と鳴く鴬が電線に止まって 何度聞いても。ホーホケキヨ。
湯河原 別府直之
- お店に入ると店員の皆さんの笑顔 なめろうの前でこちらも笑顔
- きょうのオススメがインスタで届いた! 刺身もフライもどれもうまそう
近江八幡 岸田文代
- 問うたら良いけど東京は小走りで目印さえ探せない
- アナログの旅はもっぱらしゃべり 人間ですやん
埼玉 木村浩
- 春日差しが誘うか散歩しても誰とも手も握れず一人行く
- 春日差し帽子をかぶりなおす影は日差しを止めているんだ
諏訪 藤森あゆ美
- 何人も重なるようにたむろしてその集団は私だけを待つ
- 傘連判状に並ばれて私は円の中心となる
静岡 鈴木那智
- 描きたる絵の中のキャラクターや動物が飛び動く3Dの世界
- 人工の知能を使い下水道管の水漏れを探すAIロボットに熱い視線
東京 桃谷具久夫
- フランシスコ教皇悼む世界善導を発する宗教家どれだけありや
- 死んだ人のCDもらう同じ歌を歌った世代その人紹介されたよう
米子 大塚典子
- わたしたちどうだったろう 燕の子育て本気度に若き日想う
- 夜明けから巣づくりに余念ない燕 パートナーみつかって良かったね
諏訪 河西巳恵子
- 猫の額ほどの公園 桜蕊積もり古いカセットから力なくラジオ体操第一
- 唐突に俳句好き短歌嫌いはどっちでも 町内針槐の花粉まみれ