人生の伴侶 ―自由律短歌―
- 2025年9月1日
- エッセイ
人生の伴侶 ―自由律短歌― 光本恵子
人生は一瞬一瞬という点を宇宙の空間にきざむ時間の連鎖である。短歌はその連鎖の断面を活字にして捉える。どこを切り選択するかが、その人の詩的な感性ということになるのだろうか。
八ヶ岳の稜線から顔をのぞかせ、朝日が昇るわずかの時間。
その宇宙の闇が割け紫の光が流れ、しだいにぼっかり口を開いた隙間から赤い血潮のような光がこぼれてくる。ステンドグラスに反射するように縦横に放射して、血潮は銀色から黄金色に変わり山から湖水まで広がった。水面はきらめいて、動く度にキラキラお喋りを始める。しばらく、その場にたたずんでいると、奮いたたせるような感動と喜びが交錯してあっという間に明るい朝がきた。闇から光に変わる瞬間に幾度遭遇するのだろう。出会うたび、人は豊かになっていくのだろうか。
太陽が山の稜線に隠れる夕日も、わたしの胸に刻み込まれ哀惜の念に立ちどまる。茜の空に向かい、永遠に去っていった人を思い、間の中にその人の星を見つける。亡くなった人は何も語ってくれない。しかし、星の輝きは永遠だ。過去、現在、未来と語りつづけて湖上の瞬きは饒舌でる。
口語短歌の音数は二十六音~三十六音程、現代語で誰にも判るやさしい表現で、自分の眼にした、感じたことを短歌として誌面に刻もう。
感動の断面を短歌に詠む。続けて「未来山脈」は三十六年を越えた。一人二人とやまなみの仲間は増え、手をつなぎ、励まし合い通算四三五号なった。これからが険しい山坂。あまり気負わずしっかり足を踏みしめて歩いていきたい。苦しみも哀しみも時を刻む生命そのものを、短歌にぶつけ表現していきたい。
口語短歌もまた人生の良き伴侶である。
・七台のくるま連ね未来山脈をゆく 口語歌の旗きらめかせ
(光本恵子歌集「おんなを染めていく」』